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華陽ニュース
不定期配信 マウスちゃんとメモリ主任のIT1年生46
情報の重要性が増す昨今、弊社では情報セキュリティについて、その意義や情報を共有する取り組みを続けています。
担当チームが社内向けにまとめた資料などを基に、軽い読み物を不定期でお届けできればと思いますので、ご笑覧頂ければ幸いでございます。
「・・・この資料をつくって、請求書の発送処理をして、仕入れに相談に行って、見積もりを出して・・・ああ、そうか、総務に書類も提出しないと・・・・・・」
ある日の昼下がり。パソコンを前にぶつぶつ呟くイーさんを見かねて、マウスちゃんが声を掛けます。
「大丈夫ですか?忙しそうですね。」
「出張から帰ってきたらいろいろ積み上がっていて・・・今日は夕方にお客様との会合もあるから、時間制限もあって・・・・・・」
穏やかに答えるイーさんですが、その目は今にも泣きだしそうです。
「と、とにかく落ち着いて。ひとつひとつ整理して片付けていきましょう。お手伝いしますから!」
「なるほど、そういうことだったのですね。承りました。」
マウスちゃんがイーさんの代わりに持ってきた書類を、メモリ主任が受け取ってくれます。
「すみません、メモリ主任。とにかく一気に仕事が押し寄せてきて容量オーバーになっちゃったみたいで。ひとつひとつはイーさんならすぐに処理できるものだと思うんですけど、人間はコンピューターと違って、処理量に限りがありますもんね。」
「いえいえ。処理量に限りがあるというのは、コンピューターの方にこそ当てはまる言葉ですよ。マウスさんは『クロック』という言葉をご存じですか?」
「・・・時計?」
「確かに時計もクロックですね。ですが、コンピューターの世界で『クロック』というのは、周期的な信号のことを指します。そしてこのクロックによって、コンピューターにはできる仕事の量が最初から決まっているのですよ。」
「コンピューターにはいろいろな装置が入っているので、それらが連携して仕事ができるように調子を合わせる信号が必要になります。それが『クロック』です。」
「オーケストラがひとつの楽曲を奏でるのにメトロノームで調子を合わせるようなものですね。」
「その通りです。そして、1秒間に発生するクロックの回数のことを『クロック周波数』といいます。クロック周波数の単位を表す言葉はHz(ヘルツ)というのですが、例えばクロック周波数が1GHzなら1秒間に10億回、2GHzなら同じ1秒間に20億回のクロックが発生することになります。・・・では、マウスさん、1GHzのコンピューターと2GHzのコンピューターなら、どちらがたくさん仕事ができると思いますか?」
「えっと、メトロノームで考えると、カチカチするのが速い方が速く曲を弾けて、その分たくさんの曲を弾けることになりますから、同じだと考えるのなら、2GHzは1GHzの倍の量の仕事ができることになると思います。」
「そうですね。かなり単純化して、コンピューターが1クロックで1つの命令を実行できるようになっていると考えるとすると、1GHzのコンピューターは1秒間に10億個、2GHzのコンピューターは1秒間に20億個の命令を実行できることになるので、マウスさんが仰ったとおり、2GHZのコンピューターは1GHzのコンピューターの倍の量の仕事ができる計算になります。」
「そして、このクロック周波数はコンピューターによって最初から決まっています。コンピューターというか、正しくはCPUですね。CPUは以前にもお話ししましたが」
「『中央処理装置』ですね。コンピューターの脳にあたる部分です。」
「そう。そのCPUの能力を数値化したもののひとつが『クロック周波数』です。マウスさんのパソコンでも、設定のシステムのところから確認することができますよ。例えば私のパソコンだと・・・」
「本当だ。『GHz』って書いてありますね。これは増えたり変わったりしないんですか?」
「交換とか増設といった話はおいておくとして、1GHzのCPUが2GHzになったりはしませんね。」
「なるほど。コンピューターの処理量に限りがあるというのはそういう意味なんですね。」
「もちろんコンピューターの能力はクロック周波数だけで決まるわけではありません。CPUにもコアやスレッドなどその他の能力もありますし、メモリなど他の部品も関わってきます。ただ、そういった部品個々の限界能力が決まっているという点では、人間よりコンピューターの方が製造当初から処理量の限界が決まっていると言えるのではないかと思います。」
「人間は、昨日は1時間かかっていた仕事が今日には55分でできる、っていうことがありますもんね。」
「そうですね。ただ、お昼からの時間でイーさんの処理能力が急激に伸びるかどうかは私には分かりかねますが。」
「あ、イーさん!戻って手伝ってあげないと!」
律儀に礼をして急いで自席に帰っていくマウスちゃんの後姿を見ながら、人間の場合はCPUの増設も外付けも容易なようですね、と失礼なことを呟くメモリ主任なのでした。