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華陽ニュース
不定期配信 マウスちゃんとメモリ主任のIT1年生47
情報の重要性が増す昨今、弊社では情報セキュリティについて、その意義や情報を共有する取り組みを続けています。
担当チームが社内向けにまとめた資料などを基に、軽い読み物を不定期でお届けできればと思いますので、ご笑覧頂ければ幸いでございます。
ある日の夕刻。机の上にたくさん貼った付箋を前に、イーさんがパソコンに向かっています。
「何をされてるんですか、イーさん。」
マウスちゃんがのぞき込みます。
「春から仕入のダブルさんが営業に異動になるでしょ?営業のマニュアルをまとめといてって、ブック常務に言われて。」
「付箋には何が書かれているんですか?」
「要点とか注意事項とか。これをパイプラインに合わせて並べ替えて入力して、マニュアルにしようと思って。」
「パイプライン?」
「パイプラインって石油とかガスの配管のことじゃなかったでしたっけ。」
「営業でパイプラインって言うと、受注プロセスの可視化のことになるんだよ。多分、お客様に会って、提案して、見積もりを出して、受注できて、っていう一連の流れがパイプみたいだからじゃないかな。営業だけじゃなくて、マーケティングや他のことでも、業務を流れに沿って可視化して、プロセスごとに分析したり改善したりすることを『パイプライン管理』って言うんだって。・・・そう言えば」
「?」
「この言葉、実はメモリ主任に教えてもらったんだけど、その時に言われたんだ。『IT関連だと、パイプライン管理とパイプライン処理では違う領域の言葉になるので気をつけて下さいね』って」
「プロセスごとに可視化して分析・改善するのが『パイプライン管理』で、可視化した一連の流れ通りに実行するのが『パイプライン処理』なのでは?」
「違うみたいだよ。『パイプライン管理』は、まあ、そんな感じかな。プログラムをつくって、テストして、実際に使うシステムに組み込んで、実行してみて、誰でも使えるように公開して、っていう一連の流れのことを『ソフトウエアを開発するときのパイプライン管理』って言うって教えてもらった。これが、『パイプライン処理』になると、コンピューターが命令を少しでも早く実行するための方式のことになるんだって。メモリ主任は『高速化』って言ってらしたかな。」
「言葉がもう難しそうですね・・・」
「本当の技術は難しいことなんだろうけど、メモリ主任の説明は簡単だったよ。要は流れ作業をいかに効率よくするか、なんだって。」
「例えば、4人で3品の料理・・・コロッケとサラダとお味噌汁をつくるとしようか。Aさんが食材を洗う人、Bさんが切る人、Cさんが調理する人、Dさんが盛り付ける人、とする。まずコロッケからつくるとして、Aさんが食材を洗い終わるまでB・C・Dさんは待っていて、洗い終わったら、Bさんが切るのをA・C・Dさんは待っていて、Cさんが調理するのをA・B・Dさんは待っていて、Dさんが盛り付け終わるまでA・B・Cさんは待っていて、盛り付け終わったらAさんがサラダ用の野菜を取り出して洗うのをB・C・Dさんは待っていて・・・っていうのが、一番単純なコンピューターの命令の実行手順。でも非効率だし、実際に手分けして料理するとき、こんな風にはしないよね。」
「待ち時間がものすごいことになりそうですね。私がAさんなら、Bさんにコロッケ用の材料を渡したら、待たずにサラダ用の食材を取り出して洗い始めます。」
「そしてBさんはコロッケ用の食材を切り終わったらCさんに渡して、Cさんが調理している間にサラダ用の食材を受け取って切り始める。そんな風に、手待ちが起きないようにちょっとずつずらして複数の命令を順番通りに処理していくことを、コンピューターの世界では『パイプライン処理』って言うんだって。」
「ちなみに、前の手順の担当が、いくつかある次の手順への選択肢のなかから多分こっちだろうなって予測するのを『分岐予測』、その予測に基づいて用意するのを『投機実行』、先読みが外れて作業の流れに乱れが生じるのを『ハザード』って言うんだって。」
「えっと、サラダなら必要なのはトマトとレタスときゅうりだろうなって予想するのが『分岐予測』、トマトとレタスときゅうりを用意するのが『投機実行』、次に必要なのはジャガイモとニンジンとコーンだよっていうことになって慌てるのが『ハザード』ってことですね。」
「そうだね。いろいろな業務で普通にやってることだけど、『分岐予測』とか『投機実行』とか言われると身構えちゃうよね。」
「『パイプライン』もですよ。要は営業の手順書をつくってるってことですよね。そう言ってくれれば引っかからなかったのに。」
「ごめん。メモリ主任に教えてもらって、一度使ってみたかったんだよね。マウスさんなら許してくれるかなって。」
「許してあげますけど、お詫びとして私も手伝いますね。」
「え、逆じゃない?」
「だって、私も言ってみたいんですよ。何をしてるのって聞かれたら、『パイプラインをつくっています』って。」
その言い方は違うと思うよ、と苦笑するイーさんから仕事を一部奪い取りながら、私がこうして手伝うことも常務のパイプラインでは予測済みなんじゃないかな、と秘かに思うマウスちゃんなのでした。