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紙の市況(2025.2)詳細 2月20日更新分

【洋紙 国内の紙の市況/状況】

1.製紙8社 2025年3月期第3四半期連結業績

 製紙8社は2月7~14日、2025年3月期第3四半期(2024年4月1日~2024年12月31日)の連結業績を発表しました。

 業績について各社は

王子HD +欧州で包材のリサイクル・脱プラスチック分野で最先端の原材料加工技術を保有するWalki社を子会社化
+ニュージーランドのPan Pac社のサイクロン被害からの復旧
+海外でのパルプ市況の良化、販売数量の増加
+投資有価証券売却益、退職給付信託返還益を計上
-物流費、人件費等のコスト上昇
-2024年9月に子供用紙おむつの国内事業からの撤退
-外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の減少
日本製紙 +輸出の拡販
+各種製品の価格修正
+原価改善の推進
+円安影響
-紙・板紙事業の需要減少
-エネルギー事業の減収
-人件費・物流費の上昇
-日本ダイナウェーブパッケージング社の例年より大規模なメンテナンス休転
-白老工場・八代工場の一部生産設備停機を減損損失に計上
-Opal社の特別退職金
レンゴー +連結子会社の増加
+製品価格の改定
+重包装で工業樹脂製品が好調
-原燃料価格の上昇
-固定費の増加
-重包装で石油化学関連の需要が減少
-欧州の重量物包装事業の採算悪化
大王製紙 +洋紙、包装用紙の輸出拡販
+包装用紙で産業分野の回復、脱プラ・機能材分野の販売拡大
+衛生用紙で価格改定の浸透、高付加価値品・新製品の販売伸長
+ペットケア製品の導入店舗拡大
-紙・板紙事業における国内需要の減退
-原燃料価格の高止まり
-ホーム&パーソナル事業の海外事業で構造改革推進中
北越コーポ +海外子会社におけるパルプの販売価格上昇
+紙容器・包材事業の受注拡大
-運送費の高騰
-円安影響
三菱製紙 +グループ組織再編による労務費削減等のコストダウン効果
-紙素材の国内向け、機能商品の輸出向け、ドイツ事業、で数量減
中越パルプ +国内スポット案件の受注
+輸出拡販
+衛生用紙の販売
+包装用紙におけるファストフード需要、通販における段ボールからの代替需要
-グラフィック用紙の需要減少継続
-コスト削減による商業印刷物の減少
-原燃料価格や物流費の上昇
-修繕費などの固定費高
特種東海製紙 +アラミドペーパー等成長分野の拡販
+リサイクルビジネスのさらなる拡大
+特殊印刷用紙、トイレットペーパーの価格改定
+環境関連事業で子会社の増加
-国内物価高による買い控えで包装材の需要が低調
-パルプ市況、円安などの影響で原材料コストは上昇傾向

(+は増収・増益要因、-は減収・減益要因)

と分析しています。
 大王製紙は中国事業で現地景況感悪化等の影響により事業用資産の減損損失約20億円を計上、及び同事業に関連する繰延税金資産を取り崩す影響で2025年3月期通期の純利益は70億円の赤字見通しに下方修正、三菱製紙は想定よりも欧州経済の低迷が長期化、印刷・情報用紙の価格改定遅れと販売数量減等の理由から売上高・営業利益・経常利益・当期純利益全てを下方修正する2025年3月期通期見通しの修正を発表しています。
 

2.三菱製紙 写真用原紙等製造の抄紙機停機を発表

 三菱製紙は2月14日、同日の取締役会にて北上工場のN1抄紙機の停機を決議したと発表しました。写真用原紙等を生産してきたN1抄紙機ですが、昨今の写真プリント需要の低下で稼働率が落ち込んだためとのこと。停機は2025年7月を予定しており、生産品種の高効率マシンへの生産集約により年約10億円の収益改善効果を見込んでいるとしています。
 

【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.中パ カップ原紙を値上げ

 中越パルプ工業は2月12日、カップ原紙の値上げを発表しました。

対象品種 カップ原紙全般
実施時期 2025年4月1日出荷分より
改定幅 現行価格より+15%以上

 カップ原紙では日本製紙が2月4日に同様の値上げを発表しており、最終製品の価格にも影響を与えるのか注目されます。

 

2.王子HD 3製品が「ワールドスター賞」受賞

 王子ホールディングスは2月13日、同社グループ会社が開発した3製品が「ワールドスターコンテスト2025」で「ワールドスター賞」を受賞したと発表しました。3製品は

『Beeスター1000』 ミツバチ約1,000匹とエサを封入して輸送、開封後は養蜂箱として使用できる耐水ダンボール製養蜂箱。輸送コストを抑え、使用後の廃棄も容易、ミツバチの習性を考慮した設計。アピ、王子産業資材マネジメント、王子パッケージングの共同開発品。
『天井吊形エアコンの梱包材接着レス化』 重量物である海外輸出向けエアコン室内機の梱包材の工夫で、木材合板と段ボールの貼り付け箇所を無くし木材使用量も削減、梱包重量、二酸化炭素排出量、包装容積の削減に成功。ダイキン工業、王子コンテナーの共同開発品。
『重量危険物輸送用段ボール箱の開発』 メルセデス・ベンツのドイツ工場向けリチウムバッテリー梱包をスチール箱から耐水ライナー使用の段ボール箱『HiPLE‐ACE』に変更。段ボール内装の工夫で危険物輸送の規格をクリア。リードタイムの短縮、保管スペースと調達コストの削減で、効率向上と環境配慮の両立を実現。Thonburi Energy Storage Manufacturing Co., Ltdとユニオンアンド王子インターパックの共同開発品。

 王子グループは包材について素材・加工一貫の生産・販売体制を整えているとし、環境負荷を減らす商品、包装へのニーズが高まるなか、今後もお客様のニーズにタイムリーに対応し、環境配慮型素材・製品の開発を推進して持続可能な社会の実現に取り組んでいくとしています。
 
 
【その他の市況/状況】

1.メーカー各社、家庭紙を値上げ

 2月5日の大王製紙の発表を始めとして、家庭紙各社が値上げを発表しています。2月17日までに発表・報道された値上げでは、

社名 対象品目 値上げ幅 実施時期
大王製紙 ティシュー、トイレットペーパー、
キッチンタオル、ペーパータオル他
家庭用・業務用紙製品全品
現行価格より10%以上 2025年4月1日納品分より
丸富製紙 トイレットロール、ティシュペーパー、
キッチンペーパー、タオルペーパー
(家庭用、及び業務用全商品)
15%以上 2025年4月1日同社出荷分より
王子ネピア ティシュ、トイレットロールなど
家庭紙製品 全品
現行価格より10%以上 2025年4月21日出荷分より
カミ商事 ティシュー、トイレットロール、
キッチンタオル 他、家庭紙製品全品
現行価格より+10%以上 2025年4月21日出荷分より
日本製紙クレシア 日本製紙クレシア製品全般 現行価格より+10%以上 2025年5月1日同社出荷分より順次

 各社、原燃料価格の高止まり、物流費の上昇、人件費の上昇、環境問題への対応費用等を理由として挙げており、価格改定に理解を求めています。

2.日本製紙 SAF原料の共同出資会社を設立

 日本製紙は2月17日、住友商事、Green Earth Institute(GEI)とともに持続可能な航空燃料(SAF)の原料を生産・販売する合弁会社を設立すると発表しました。設立は2025年3月の予定で、日本製紙・岩沼工場内に生産設備を導入、2027年に稼働させ、GEIが開発した低コストの生産方法を採用してSAFの原料となるバイオエタノールなどを年産1,000キロリットル以上生産する計画とのこと。原料となる木材には日本製紙の製紙事業での調達網を生かして東北地方の木質チップを使うとのことで、原料チップを近くで調達することで輸送時に発生する二酸化炭素排出量を減らすことができるとしています。
 

【ESG、SDGs等関連】

1.大王製紙 「スポーツエールカンパニー2025」に認定

 大王製紙は2月10日、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2025」に認定されたと発表しました。公式サイトの発表によると、

「スポーツエールカンパニー」
制度
スポーツ庁が「働き盛り世代」のスポーツ実施を促進し、スポーツに対する社会的機運の醸成を図ることを目的として2017年に創設した制度。
社員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業を認定する。
同社の主な取り組み ・同社が運営、あるいは提携するスポーツクラブを社員及び家族が安価で活用できるような制度を導入し、活用を推進している
・ストレッチ動画をインフラネットに配信、業務の合間や休憩時間などに簡単なストレッチを取り入れるよう推奨
・指定の期間に社員が平均歩数を競い合うウォーキングイベントを開催
・拠点ごとにソフトボールなど社員参加型の定期的なスポーツイベントを開催し、スポーツを楽しむと同時に社員のコミュニケーションを促進

 同社は健康経営を推進しており、引き続き、心身健康増進の取り組みを通じて社員が健康に働ける環境を整備することで、SDGsの目標の「3.すべての人に健康と福祉を」の達成に貢献することを目指すとしています。

【印刷、製品、その他関連】

1.日経広告研 2025年度広告費予想発表

 2月13日付の日本経済新聞紙上にて、日経広告研究所が2025年度広告費の予測をまとめたと報じられています。賃上げで消費が上向くとの観測から全体の広告費は2024年度比2.9%増えるとの予測していますが、新聞広告費は同3.5%減、雑誌広告は同2.2%減、折り込み・ダイレクトメールは同1.8%減と、紙メディアの広告については減少を予測しています。デジタル化、雑誌の部数減少、郵便料金値上げが響くとの見方ですが、新聞広告については新聞の信頼性という媒体特性が見直されているとの分析も伝えています。

 

2.沖電気工業 複合機等開発・生産合弁会社に参画

 沖電気工業(OKI)は2月13日、リコーと東芝テックが昨年7月に組成した合弁会社エトリア株式会社への参画を発表しました。エトリアが新たに発行する株式をOKIに割り当て、2025年10月1日予定で会社分割によりOKIの複合機等の開発・生産に関する事業をエトリアに統合する計画とのこと。OKIの強みであるLEDプリントヘッド技術やタイの生産拠点がエトリアに加わることで、さらなる開発力の強化、新たな事業創出のための技術・商材の獲得、共通化によるコストダウン、柔軟な生産体制の構築が図れると、OKI・リコー・東芝テック・エトリアは共同発表にてOKI参画の意義を説明しており、様々なソフトウエアやサービスを組み合わせることでお客様の業務ごとのニーズに寄り添ったデジタル化やワークフロー改善による生産性向上に貢献するとしています。
 

3.デジタル教科書を正式な教科書とする中間案

 2月15日付の日本経済新聞紙上にて、中央教育審議会の作業部会が14日、デジタル教科書を正式な教科書として位置づけ、活用を広げていくとした中間まとめ案を大筋で了承したと報じられています。現在の学校教育法では紙の教科書のみが正式な教科書で、デジタル教科書は紙の「代替教材」と位置付けられていますが、文部科学省は2030年度からの導入を想定して制度改正を進めるとのこと。教科書は「紙」「デジタル」「紙とデジタルのハイブリッド」の3形態となり、各自治体が選択できるようにする運用が想定されています。
 デジタル教科書には英語の単語の音声を聞いたり理科の実験動画を視聴できたりといったメリットがある一方、認知処理能力が発達途上の小学校低学年では情報量が多いデジタル教科書より紙の教科書の方が適しているとの指摘もあるとのことで、今後作業部会ではデジタル教科書のメリット・デメリットを踏まえて正式な教科書とする教科や学年の範囲を検討すると記事では伝えられています。
  

※文中敬称略
※文章は2025年2月18日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。