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ニューノーマルにこの一品52 製紙各社とカーボンクレジット①王子HD

【ニューノーマルにこの一品】

 「ニューノーマル」という言葉は新型コロナウイルス下での生活や仕事の新しい様式を表す言葉として使われていますが、近年、私たちの生活や考え方に影響を与え、変えてきたものには、海洋汚染の深刻化による脱プラの動きや、SDGs、ESG、ダイバーシティ等、さまざまなものがあります。
 その、様々なもので形作られる「ニューノーマル」に、紙で貢献できる製品とは、の観点からの取組みをご紹介いたします。

52 製紙各社とカーボンクレジット①王子HD

 2025年2月にGX推進法の改正案が閣議決定され、対象となる企業の温暖化ガス排出量取引への参加の義務化が迫りつつあるなか、製紙各社が持つ「森林資源」「水資源」「生物多様性」の価値が改めて注目されています。
 製紙各社が自社の持つ「森林資源」等をどう評価し、経済価値化に向け取り組んでいるかをご紹介致します。

GX推進法改正案  2050年カーボンニュートラルを実現するため、2023年度成立の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)を改正する案が閣議決定、今国会での成立を目指している。
 改正案に盛り込まれた排出量取引制度の義務化に関する部分は、

・2026年度から、二酸化炭素の直接排出量が一定規模以上の事業者に対し、排出量取引制度への参加を義務付け
・2026年度に対象企業に排出枠を無償で割り当て。
・2027年度に排出量実績の報告、実績と等量の排出枠の保有を義務化。
・排出枠と排出実績の過不足分を事業者間で取引できる市場を整備し、排出枠の上下限価格を設定することで取引価格の安定化のために必要な措置を講じる。

 実績が割り当てられた排出枠を超えた企業は、排出枠と実績を等量にするため、

・排出枠を余った企業から購入する(排出量取引)
・そもそもの排出量を削減するため、他社が創出した温室効果ガス吸収・削減量を購入する(カーボンクレジット)

といった対策を取る必要がある。
 最終的に排出実績が排出枠を超えた状態となってしまった企業は、排出量の取引価格の上限から1割増しの価格で負担金を支払う案となっている。

王子HDの取り組み 持続的な成長に向け
・環境配慮型パッケージ
・木質バイオビジネス
を推進すると同時に、同社が持つ森林資源の公益的機能の経済価値化を目指す。
 2025年9月、国内の「王子の森(約18.8万ha)」の経済価値総額が、年間約5,500億円であると発表。(林野庁「森林の公益的機能の評価額について」(2000年)をもとに算出。一部更新が可能な機能については見直し。)
森林価値  同社は国内に約18.8万ha、海外に約44.7万ha、合わせて約63.5万haの「王子の森」を保有。
 森林の持つ多面的な機能と照らし合わせて、国内保有分の経済価値を

・水源涵養機能(森林の土壌が降水を貯留することによる洪水・渇水防止、水質浄化の機能)=2,040億円/年
・土砂流出・崩壊防止機能(森林の根や落ち葉、森林の下に生える植物などにより、土砂の流出や崩壊を防止する機能)=2,750億円/年
・生物多様性保全(野生鳥獣の生息の場としての機能)=430億円/年
・大気保全(森林の成長過程で二酸化炭素を吸収し酸素を供給する機能)と保健休養(森林が人に与える安らぎ等の機能)=280億円/年

合わせて約5,500億円/年と算定。

価値の定量評価手法 森の価値を棚卸し、定量評価手法(王子モデル)を確立。

国内の王子の森の水源涵養量を、国土情報プラットフォームの活用で、地表水、地下水のデータから解析。

生物ビッグデータと地形・気候・植生データ等から構築したモデルで各社有林の生息生物種を予測、生物多様性重要地域との重なりも加味し、約650か所の国内の王子の森のそれぞれの生物多様性の観点からの重要度をスコアにして、見える化を実現。

により、
・1日当たり1,690万人分の生活用水を蓄え、つくり出す能力に相当する水源涵養量(1人1日当たり300リットル使用の前提)
・国内の王子の森に3,000種以上の生物が生息し、うち約1,400種が希少種
と推定。

猿払におけるプロジェクト  生物多様性の観点からの重要度分析により、国内で最もスコアが高かった猿払の王子の森において、北海道大学の研究者やスタートアップと協働し、「猿払における王子の森の価値見える化プロジェクト」を始動。
 二酸化炭素、生物多様性、土壌、栄養、水の重要5要素の価値の可視化と自然再生プロジェクトを実施中。

 脱炭素に加え、生物多様性や水などの観点からも「王子の森」は大きな価値を持っており、自然資本が経済価値を生む時代を見据え、同社はこれからもネイチャーポジティブ経営を進化させていくとしています。
 
※上記は2025年4月時点の王子ホールディングスや経済産業省などの資料を基に華陽紙業株式会社にて編集したもので、最新の動向を含まない場合があります。
※文章中、敬称略