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華陽ニュース

不定期配信 江戸ネタ 31

今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。

31 「町触」

 江戸時代の三大改革といえば、「享保の改革」「寛政の改革」「天保の改革」が挙げられるかと思います。飢饉による食糧難への対応や幕府の財政再建を目的とし、奢侈を取り締まり質素倹約を励行することでそれを成し遂げようとした改革ですが、出版・印刷に興味がある人であれば、「改革の度に出版統制が行われた」ことの方に目が向くかもしれません。
 「町触」は江戸時代に幕府や大名から町人に対して出された法令、御触書ですが、寛政2年(1790年)5月にも、書物や印刷物の制作、流通に関する町触が出されました。「にも」というのは、享保7年(1722年)に既に出版を規制する町触が出ているためで(『江戸ネタ 5 奥付』もご覧下さい)、寛政の町触は享保の町触の規制が緩んできていることを咎め、それをベースに規制を拡大したものとなっています。華美な書物・印刷物や、内容に問題があるとお上が考える書物・出版物の制作・流通を禁止する、版元や戯作者に厳しい内容となっていますが、そのなかに、「書物類は昔からあるもので十分で、同じような内容なら新しいものを出す必要はないでしょ」という意味の一文が記されていて、こちらには作者側だけではなく読者側もカチンときたのではないかな、と想像してしまいます。