KAYO NEWS
華陽ニュース
【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話74 床下で働く紙
「おはようございます、シート先輩。・・・大丈夫ですか?」
「おはよう、コマキさん。大丈夫、暑くてだるいだけだから。」
「確かに暑いですね。年々暑くなる・・・というのが、もう毎年の決まり文句になってきたような。」
「そうだね。まあ、日本の夏は昔から暑かったみたいだけどね。」
「そうですか?」
「『家のつくりやうは、夏をむねとすべし。』」
「?」
「『徒然草』だよ。『家は夏を基本としてつくりなさい。冬はどうにでも住めるけど、暑い季節に住みにくい家は耐え難い。』って意味の文章があるんだ。」
「鎌倉時代の京都も暑かったということですね。考えてみれば、平安時代の寝殿造りにしても、江戸時代の庶民の家にしても、風通しはとても良さそうです。」
「現代の家のつくり方とは正反対だね。」
![]()
「正反対、ですか?」
「現代の家は『高気密高断熱』を目指す傾向にあるからね。」
「高断熱・・・ひょっとして『ZEH』のことですか?」
「そうそう。再生可能エネルギーで電気をつくる家、かつ、省エネな家に住むことで、エネルギー収支をゼロにしましょう、っていうのが『ZEH』の考え方だから。高断熱化すれば外気温に左右されにくくなって冷暖房に使うエネルギーを減らせる、っていうことで、高断熱であることはZEHの重要な基準のひとつなんだよ。」
「2030年以降に建てる新築住宅はZEH水準を満たしていることが標準になると、ニュースで見た覚えがあります。」
「厳密に言うとZEH水準で求められているのは断熱等級5を満たしてることで、気密性については定められていないんだけど、断熱性能を高めようと思うと高気密な家である必要があるからね。」
「隙間風が入るようでは断熱性能が高いとは言えませんよね。」
![]()
「断熱性能を高めるためには断熱材を使うのですよね。」
「もともとの工法とか材料にも断熱性能の高い低いはあるみたいだよ。それに、プラス、断熱材で断熱機能を付与したり向上させたりするんだって。構造部材の隙間に断熱材を充填したり、断熱材で構造全体を覆ったり。そう言えば、その断熱材に『セルロースファイバー』があるって知ってた?」
「?CNF・・・のことではなくて、ですよね?」
「新聞古紙などの原料を薬品処理して難燃性とか撥水性とかを持たせて綿状にしたのが、断熱材としての『セルロースファイバー』。専用の吹き付け機で天井裏とか壁、床下に吹き込んだり接着剤を混ぜて吹き付けたりして断熱材として使うんだって。天然木質繊維だから、紙と一緒で吸放湿性が優れていて、断熱性能以外にも期待できる機能がいろいろあるんだけど、『セルロースファイバー』自体は気密性が高いわけじゃないから、別の方法で気密性を高める必要があるとか、注意点もあるっていう話だよ。」
![]()
「そう言えば、『雑板紙』の分類のなかに、建材原紙として『石膏ボード原紙』という分類がありますよね。あれも断熱材なのですか?」
「石膏ボードは耐熱材じゃなくて下地材。壁や天井、床に張られて、壁だったらその上に壁紙を張ったりして仕上げられるための芯になる部材だね。石膏を厚紙で挟んだ板が石膏ボードで、その挟む厚紙が『石膏ボード原紙』。吸水性、寸法安定性などが必要とされる。石膏ボードにも断熱性はあるけど、どちらかというと耐火性の方が特長として挙げられてるね。」
「厚紙なのに耐火性ですか?」
「石膏ボード原紙じゃなくて、石膏の方にね。石膏って硫酸カルシウムを主成分とする鉱物なんだけど、石膏ボードに使われる石膏は二水石膏というもので、結晶水を持っている。」
「結晶水?」
「結晶のなかに結晶自体の分子やイオンとは結び付かずに残っている水分子のこと。で、この二水石膏を加熱すると水の分子をある程度失って焼石膏っていうものになる。この焼石膏を厚紙の間に流し込んで水を加えると、焼石膏は固まって二水石膏に戻る。この二水石膏の針状結晶が原紙の繊維に食い込んで一体化することで石膏ボードが出来上がるんだ。」
「石膏ボードの芯の石膏は二水石膏だから、水分子を内部に持っているということですね。」
「そう。で、この石膏ボードが火の熱に触れると、なかの水分子、結晶水が水蒸気になって放出され、温度が上昇するのを抑制する。結晶水が全部放出されてしまうまで石膏の温度は一定以上には上がらないから、耐火性が発揮される、というわけ。」
![]()
「建築に使われている紙というと、障子用紙や壁紙みたいな目に触れるものがすぐに思い浮かびますけど、下地とか断熱材とか、裏方にも紙は使われているのですね。」
「存在を声高に主張したりはしないけど頑張ってる紙って、カッコいいよね。」
「先輩にも少し似ているところがあるように思います。」
「え、どんなところ?」
「意外といろいろなことをご存じなところとか」
「意外・・・」
「頑張っている成果があまり人に知られていないところとか」
「・・・・・・」