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華陽ニュース
不定期配信 江戸ネタ 35
今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。
35 「紙漉免許黒印状」
江戸時代に発行された公文書と言えば、朱肉で印を押した「朱印状」や、その朱印状で許可を得て行われた「朱印船貿易」の方が有名かと思われますが、それとは別に、墨を使って押印した「黒印状」も戦国~江戸時代に発行された公文書として現在まで様々な資料が残されています。「朱印状」と「黒印状」の使い分けについては人や藩などによって違っていたようで、例えば徳川家康は、朱印状のなかでも、朱印船貿易認可などに押す四角い朱印と、他の文書で押す楕円形の朱印を使い分けていたそうです。
その徳川家康が修善寺紙の職人・三須文左衛門に与えた黒印状が「紙漉免許黒印状」です。文左衛門に伊豆国内の製紙原料植物の採取を許可し、将軍公用の紙を漉くときは立野・修善寺の紙漉きが手伝うように定めたもので、修善寺紙は家康に気に入られた紙として一時、江戸幕府の公用紙としても用いられたと伝えられています。
ちなみにこの黒印状では製紙の原料として三椏の名前が挙がっており、三椏が紙の原料に使われたことが明らかになっている最初の文献とされています。