KAYO NEWS
華陽ニュース
【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話75 屋根裏で働く紙
「おはよう、コマキさん。・・・多分、そのまま会社に行ったらブック常務に怒られると思うよ。」
「おはようございます、シート先輩。すみません、会社に着いたら外します。最近の陽光はまぶしすぎて、目が痛くて。」
「分かる。反射光が目に入ったりすると、一瞬前が見えなくて怖いときがあるよね。」
「照り返し、怖いですね。この時期は窓辺に置くものも注意しないと。」
「収れん火災?でも、実は収れん火災って、冬場の方が多いらしいよ。太陽の高度が低くて部屋の奥まで光が届くからだって。まあ、理屈で言えば、光が一点に集中してそこに燃えるものがあれば起こるわけだから、1年中いつ起きてもおかしくないんだろうけど。」
「夏場は日差しが強い分みんな注意するから発生が少ないのかもしれませんね。」
「火災と言えば、明治時代に屋根に使って良い資材を制限する法令が出たのは知ってる?」
![]()
「日本の屋根って、元は草葺き、茅葺きでしょ?それじゃあ何度も大火事が起きても当然だっていうんで、江戸時代に『屋根は板葺きにしなさい』とか『瓦葺きを推奨します』とかっていうお触れが出たんだけど、なかなか庶民には浸透しなかったんだって。でも明治になっても何度も大火が起きたんで、1881年に当時の東京府知事さんが『東京防火令』っていう通称の法令を出した。東京の中心部の特定区域では建築は蔵造、煉瓦造、石造しか認めません、その他の地域でも屋根は瓦葺きにしなさいっていう法令で、期限内に改修しないならこっちで取り壊して費用を請求しますよ、っていう厳しいものだったんだって。」
「そう言えば、銀座の煉瓦街は明治5年の大火をきっかけにできた街並みでしたね。」
「その後、関東大震災があって、煉瓦は日本の構造材としては向かないんじゃないかって話になったんだけどね。それはさておき、この東京防火令の屋上制限って呼ばれる部分に似た法律が大正元年に出ることになるんだけど、それは何故かわかる?このころ全国に普及し始めたものが関係あるんだけど。」
「明治・大正期に全国に普及したもの・・・鉄道ですか?」
「正解!鉄道が普及して全国を蒸気機関車が走るようになった。蒸気機関車から出た火の粉で沿線の住宅が火事になるっていう事例も増えたんで、屋上制限令っていう法律が出されて『線路から200メートル以内の建物の屋根は瓦や金属などの不燃材料で葺きなさい』って決まったんだって。ちなみにこの法律をきっかけに、亜鉛めっき鋼板の屋根、いわゆる『トタン屋根』が全国に広がることになったそうだよ。」
![]()
「現代だと、耐火基準は建築基準法で定められているのですよね。」
「建築基準法だと防火地域と準防火地域、それから行政が定める『屋根不燃区域』にある建物の屋根は不燃材料でつくったり葺かないといけないって定められている。防火性のある材料には不燃材料、準不燃材料、難燃材料の3種類があって、それぞれ加熱してから何分間は燃焼しないし変形もしない、有毒ガスも出さないものであることって基準が決められている。例えばこの前話した石膏ボードの場合、12mm以上なら『不燃材料』だけど9~11mmは『準不燃材料』、7~9mm未満だと『難燃材料』っていう風に格下げされちゃったりするんだよ。」
「10mmの石膏ボードは準不燃材料や難燃材料としては使えるけど不燃が義務付けられている部分には使えないということなのですね。ほかにはどんなものが不燃材料なのですか?」
「さっき話に出た瓦、石、煉瓦は全部不燃材料だよ。あと、コンクリート、鉄鋼、アルミ、金属板・・・そう言えば、不燃じゃなくて準不燃材料だし厚さ制限もあるけど、『パルプセメント板』っていうものもあるよ。」
「パルプでできているのですか?」
「名前の通りセメントと古紙パルプを混ぜた板。不燃性があって軽い、遮音性もあるっていうんで、内装材に使われるんだって。」
![]()
「屋根の場合、耐火だけではなく耐水も重要ですよね。」
「耐水の方でも紙が仕事をしている資材があるよ。原紙にアスファルトを含侵させたものを『アスファルトフェルト』って言うんだけど、これの両面にさらにアスファルトで膜をつくって鉱物の粉を付着させたのが『アスファルトルーフィング』。屋根の下地材の上にアスファルトを接着剤にして張って、防水シートとして使われるんだ。」
「石膏ボードにアスファルトルーフィング。防火でも防水でも紙が他の素材と一緒に頑張っているのですね。」
![]()
「改めて考えると、日本って意外と住居にとっては酷な環境なのですね。四季があるから暑さにも寒さにも耐える必要があるし地震が多いから耐震・制震も考えなくてはいけない。」
「雨が降るから防水、防虫、防錆も考えなきゃいけないし、集合住宅なら防音・吸音も大切な機能だよね。」
「その酷な環境に適した家をつくるために紙の特性が役に立つ部分もある、と考えると、紙の未来も明るいような気がします。」
「どんな素材にも長所も短所もあるから、それをうまく組み合わせて調和させて、って、社会の組織にも通じるものがあるような。」
「シート先輩も私も、みんなが力を合わせて紙業界を盛り立てていきましょう、ということですね。」
「うん・・・うん?・・・間違ってはいないけど、どうしてそこまでグローバルな話に・・・・・・」