華陽紙業株式会社 華陽ニュース



北 越 収益力への自負強く


なぜ「独自」にこだわり

 「今後も自主独立で成長をめざす方針に揺るぎはない」。
 現在の北越の原点とも語る1964年の新潟大地震。壊滅的な打撃を受け、倒産寸前に陥って以来、地道なコスト削減を忍耐強く続け業界トップクラスの利益率を誇る経営基盤を築き上げてきた。
 社員の自社への愛着も強く、再編の動きと一線を画し独自路線へのこだわりが強い。
 王子も北越に配慮して当初は持ち株会社による統合を打診。さらに王子は今月3日に北越株式の100%取得による統合を北越に申し入れた。王子との統合を避けたい北越は19日に買収防衛策導入を決定。21日には三菱商事と資本・業務提携することで合意した。同業ではない三菱商事なら傘下に入っても主導権を維持できるとの考えがあったからだ。


三菱商事 王子の動き把握不足


なぜ増資引き受け

 商社首位を独走する三菱商事だが、紙パルプ分野では他社の後じんを拝している。グループ内には再編に乗り遅れた三菱製紙も抱える。北越の増資引受けには「三菱製紙との連携も視野に日本製紙や王子に次ぐ第三勢力を目指す」との意気込みがあった。
 交渉は時間に追われており、二週間ぐらいでばたばたと決まった。王子が北越に経営統合案を提示したタイミングと重なりあう。
 交渉を急いだあまり、調整不足ととられかねない事態も表面化した。トップ会談で小島社長は「王子が北越に経営統合を提案しているとは知らなかった」と語ったとされる。三菱商事にとってカナダでのパルプ製造事業などでパートナーの関係にあり、王子との衝突は得策ではない。北越にこだわる王子の意図をどこまで把握していたのか決断の経緯には不透明感が残る。


王 子 競争力と市況 二兎を追う


なぜ異例のTOB

 王子の篠田和久社長は「あくまでも北越との経営統合を進めていきたい」と強調した。執拗に追うように王子がTOB実施に動く背景には、国際競争力強化と市況の安定化という二兎を追う戦略がある。
 北越の新潟工場は紙の主力製品である印刷・情報用紙の国内最大工場。効率の良い最新鋭設備を少人数で操作する同工場はコスト競争力でも国内トップ。しかも、最大需要地の首都圏から近く物流面でも優位性がある。新潟工場を中心にして生産設備の再構築を図れば、経営効率を高め割安な輸入紙に対する競争力を強化できると考えている。
 国内紙市場は現在でも約一割は供給過剰とされ、需要が頭打ちの中でどこかが増産すれば需給が緩む。2005年の国内紙の生産量は王子が全体の21.7%に対して、北越は5.1%。だが北越は増産志向が強いとされ、この規模でも増産を実施すれば市況の波乱要因となる。年間約410万トンの紙を生産する王子にとって1キロ当たり10円の値下がりで年410億円の減収となるため、供給調整には一段の再編は避けて通れないとの思いが王子には強い。


王子、TOB強行
TOB開始後に想定される主な動き(8月2日現在)


王子、戦略見直しか?
日本製紙 北越株を取得(8月5日現在)

製紙業界中堅の北越製紙の株式争奪戦に業界二位の日本製紙グループ本社が加わったことで、首位の王子製紙は敵対的株式公開買い付け(TOB)成立へのハードルが高くなったとして危機感を強め、戦略見直しを迫られている。現在一株当たり800円の買い付け価格の引き上げなどTOBの条件変更に踏み切る可能性もある。 今後の展開を探った。

■過半数は微妙
王子による北越の経営総合案は、TOBで北越株の過半数を握った後、株式交換で完全子会社化を目指すものだ。
しかし、三菱商事が七日、北越から第三者割当増資を引き受ければ保有比率が約24%となる。さらに、日本製紙が10%未満まで取得すれば、三菱商事と日本製紙の合計は約34%。北越の取引先など安定株主がいるところを考慮すると、王子が過半数を取得できるかどうかは微妙な情勢だ。TOBが成立したとしても三菱商事と日本製紙が手を組んで、株主総会の特別決議で拒否権を行使し、経営統合が阻止される可能性もある。ある証券アナリストは「王子は今回のTOBの成立はあきらめて、市場で北越株を買い進め、次の大量保有の機会をうかがうのも手だ」と仕切り直しの展開を予想する。






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