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華陽ニュース

紙の市況(2022.8)詳細 8月31日更新分

【紙に関する市況/状況】

1.大王製紙 サントリーと製品混載の取り組みを開始

 大王製紙は8月18日、サントリーグループと共同で長距離輸送効率化に向けた新たな取り組みを8月から順次開始すると発表しました。同社公式サイトの発表によると、

内容 両グループの物流機能会社であるダイオーロジスティクス株式会社、サントリーロジスティクス株式会社が、関東・関西間の長距離輸送において、両グループ製品を混載して輸送する取り組みを8月より順次開始。積載率向上と輸送効率化を進め、
・持続可能な安定輸送体制の構築
・二酸化炭素排出量削減
などにつなげることを目指す。
トレーラー輸送 サントリーの飲料製品は重いため、積載重量制限により100%の積載はできないが、その空きスペースに大王製紙のノーカーボン紙などを載せることで、積載率を向上させる。(同社の計算では、ノーカーボンを24パレット、サントリー「オールフリー」を28パレット混載することで、重量制限を守りながらも99.8%の積載率を達成できる)
また、輸送エリアを3分割してリレー形式での輸送を行うことで、トラックドライバーの運転距離の短縮を図り、労働環境の改善に寄与することが期待される。
両グループ合計で
・年間176台のトラック台数
・年間115トンの二酸化炭素排出量
・年間2,062時間のドライバー労働時間
を削減できるとしている。
鉄道コンテナ輸送 関西から関東への輸送が多い大王と、関東から関西への輸送が多いサントリーで鉄道コンテナを共有して往復輸送を行うことで、輸送効率の向上を図る。
両グループ合計で
・年間288台のトラック台数
・年間101トンの二酸化炭素排出量
・年間1,771時間のドライバー労働時間
を削減できるとしている。

 大王製紙はこれまでも

・トラックから船舶への輸送手段切り替えで環境負荷低減
・車体と荷台が脱着できるトラックを用いた中継輸送で、輸送効率化やドライバーの負荷軽減を検証

などの自社での取り組みを進めていましたが、さらなる課題解決のため他社との協業を検討するなかで今回のサントリーとの協業に至ったと、背景について説明しています。


2.使用済み紙コップリサイクルの取り組み

 日本製紙と国際紙パルプ商事が、使用済み紙コップリサイクルの取り組みに関してそれぞれ発表しています。

日本製紙 「ガーデンフェスタ北海道2022」(北海道恵庭市、6月25日~7月24日開催)にて、サッポロビール・東罐興業と共同で来場者参加型の使用済み紙コップ分別回収実証実験を実施。
日本製紙は回収済み紙コップを段ボール原紙にリサイクルする再資源化工程を担当。
紙コップの回収率は約7割となった。
「北海道マラソン2022」(北海道札幌市、8月28日)で使用され、回収された使用済み給水用紙コップを引き受け、段ボール原紙などの原料に活用することで、リサイクルの取り組みに参画。(
国際紙パルプ商事 Jリーグ「ザスパクサツ群馬」と共同で、同クラブがホームで行う4試合(8月20日、8月28日、9月14日、9月24日)に東罐興業提供の紙コップ専用回収機を設置。回収された使用済み紙コップをトイレットペーパーの原料として再利用する取り組みを実施。

 使用済み紙コップは一般的には古紙リサイクル禁忌品として焼却処理されていますが、紙容器リサイクルの市場ニーズは高まっているとして、両社は使用済み紙容器の再資源化、リサイクルの定着を目指していくとしています。


【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.日本・中パもパッケージ関連の値上げを発表

 8月22日に日本東海インダストリアルペーパーサプライ(以下、NTI)が包装用紙について、8月23日には中越パルプ工業が高板・特板・包装用紙などについて、8月26日には日本製紙が白板紙について、それぞれ価格改定を発表しました。8月28日までに表明されたパッケージ関連の値上げ発表を再度まとめると、

メーカー 対象 改定幅 改定時期
大王製紙 段ボール原紙、包装用紙、機能材 段ボール原紙 現行価格+15円/kg以上
包装用紙・機能材 現行価格+15%以上
2022年9月1日納入分より
NTI 段ボール原紙全般
特殊板紙(チップ・色板紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、シクラ原紙)
クラフト紙(重袋用両更クラフト紙、一般両更クラフト紙)
段ボール原紙全般 現行価格+15円/kg
特殊板紙、クラフト紙 現行価格+15%以上
段ボール原紙、特殊板紙は2022年9月1日出荷分より
クラフト紙は2022年10月1日出荷分より
レンゴー 段ボール原紙
その他原紙(白板紙、紙管原紙、チップボール)
段ボール製品
段ボール原紙 現行価格+15円/kg以上
その他原紙 現行価格+15円/kg以上
段ボール製品は個別打ち合わせ
2022年9月1日納入分より
段ボール製品は個別打ち合わせ
王子マテリア 段ボール原紙(ライナー、中芯)
特殊板紙(紙管原紙、
石膏ボード原紙、雑種紙)
白板紙全品種、色板紙、
チップボール
包装用紙全品種
段ボール原紙・特殊板紙 現行価格+15円/kg以上
白板紙・色板紙・チップボール・包装用紙 現行価格+20%以上
2022年10月1日出荷分より
北越コーポ
レーション
段ボール原紙
白板紙(コート白ボール、
特殊白板紙、高級白板紙)
包装用紙全品種
段ボール原紙 現行価格+15円/kg以上
白板紙・包装用紙 現行価格+20%以上
段ボール原紙 2022年10月1日納入分より
白板紙・包装用紙 2022年10月1日出荷分より
中越パルプ
工業
高級板紙・特殊板紙、
食品容器原紙、
未晒クラフト紙(重包装、軽包装、半晒クラフト)
晒クラフト紙(両更、片艶)
純白ロール紙
現行価格+15%以上 2022年10月1日出荷分より
日本製紙 コート白ボール、
特殊板紙
現行価格+20%以上 2022年10月1日出荷分より

 製紙各社の収益を取り巻く環境に改善の気配はなく、他の品種に関しても注視が必要です。


2.レンゴー 米・英で事業・株式取得

 レンゴーは8月23日、子会社であるトライウォール社の米・英国での事業・株式取得について発表しました。公式サイトの発表によると、

トライウォール社 レンゴーグループで段ボールを主とする重量物包装資材の製造・販売事業を担う連結子会社。
米国で事業取得 トライウォール社が100%子会社のアクション・ウッド・ソリューションズ社を設立し、アクション・ウッド・テクノロジーズ社と事業譲渡契約を締結。アクション・ウッド・テクノロジーズ社も重量物包装資材の製造・販売を営む会社だが、折り畳み式の木箱といった木材包装や木材パレットなどが主で、トライウォール社は木材包装事業を取得することにより顧客や事業の幅を広げることを狙う。
英国で株式取得 トライウォール社の100%出資子会社を通じて、コルゲーティッド・ケース・ホールディングス社の株式100%を取得。同社は英国で付加価値の高い段ボールケースの製造・販売を行う事業会社を傘下に置く会社で、同社をグループ化することで英国におけるさらなる供給体制の充実を図る。

 レンゴーはこれら事業・株式取得によって、より幅広い包装ニーズに応え、事業の一層の拡充を推進していくと表明しています。


3.日本製紙 鳩サブレーの紙パッケージが日本商工会議所会頭賞、贈答品包装部門賞を受賞

 日本製紙は8月25日、同社が株式会社豊島屋と共同開発した鳩サブレーのパッケージが、「2022日本パッケージングコンテスト」において日本商工会議所会頭賞、贈答品包装部門賞を受賞したと発表しました。公式サイトの発表によると、

紙ピロー包装 外装を紙化して使い捨てプラスチック使用量を削減し、横ピロータイプの自動包装システムで使えるようにした、鳩サブレー本体を包む紙パッケージが、ジャパンスター賞の日本商工会議所会頭賞を受賞。原紙は日本製紙の「白銀F」。
仕切りトレー・緩衝材 紙箱・缶容器の仕切りトレーはバガス素材のパルプモールドで、底部の構造や深さ等を工夫、底部に「鳩」の形のデコレーションを施すなど、保存機能と美粧性向上させている。緩衝材は日本製紙「白銀F」を使用して紙化。「紙製の大型仕切りトレー・緩衝材」として贈答品包装部門賞を受賞。

 鎌倉銘菓として親しまれる「鳩サブレー」を製造・販売する豊島屋の、「使い捨てプラスチック削減のため大型プラトレーとエアパッキンを紙化したい」という要請に、外装ピロー包装の紙化も加えて開発が始まったと、日本製紙は経緯を説明しており、この取り組みで豊島屋は、年間100トンの使い捨てプラスチック使用量を削減できると見込んでいるとしています。


【その他の市況/状況】

1.発電用石炭、指標価格が1年前比約3倍

 8月19日付の日本経済新聞紙上にて、スイスの資源大手グレンコアと日本製鉄のオーストラリア産発電用石炭の2022年4月~2023年3月分の年間契約価格が、前年度比約3倍の過去最高値で決着したと報じされています。従来、日本の発電用石炭の大口取引価格は、グレンコアと東北電力の合意価格を参考指標として決められてきたとのことですが、今年は地震の影響などで合意に至らず、日本製鉄の合意価格が他の需要家の契約価格の指標となる可能性があると記事では伝えられています。
 脱炭素の流れやウクライナ危機などを背景に、発電用石炭は世界的に需給が逼迫しており、調達価格の高騰の影響は発電コストに直結すると記事では指摘されています。


2.段ボール古紙輸出価格が下落

 8月20日付の日本経済新聞紙上にて、段ボール古紙の輸出価格が急落していると報じられています。8月現在の価格は直近高値の6月比で3割程度下落しており、昨年春と同水準になっているとのこと。

・「ゼロコロナ」政策の影響で中国の経済が停滞。部品不足で自動車や家電の生産が滞り、工業製品向け段ボールの需要が低迷。
・欧州では急激な物価上昇で段ボールの需要が落ち込み。余った古紙が東南アジアに流入。

等を背景に、中国向けに段ボール原紙を製造する東南アジアで、古紙の需要が鈍っていると記事では伝えられています。
 輸出価格の下落は国内製紙会社の古紙の買値にも波及しそうだとの声も報じられていますが、国内の古紙供給は低水準で古紙問屋の買値は下がりにくい状況にあり、輸出価格の低迷は古紙問屋の採算を圧迫すると記事では指摘しています。


3.住友化学がカセイソーダを値上げ

 8月24日付の日本経済新聞紙上にて、住友化学がカセイソーダの値上げを発表したと報じられています。8月25日出荷分から1キログラムあたり35円引き上げるとのこと。既に東ソーやトクヤマ、信越化学工業などが値上げを打ち出しており、生産に大量の電力を必要とすることからカセイソーダ製造各社は発電コスト転嫁を急いでいると記事では伝えられています。


4.50~55メートルパルプ製トイレロール価格が上昇

 8月25日付の日本経済新聞紙上にて、50~55メートルのパルプ製トイレットペーパーの7月の店頭価格が上昇したと報じられています。東京紙商家庭紙同業会のまとめによるもので、4月に先行して値上がりしていた主力の60メートル品に続き、50~55メートルでも大手メーカー品では値上げが浸透しつつあると記事では伝えられています。


【印刷・製品関連】

1.コニカミノルタ 脳科学で「最適なデザイン」を提案

 コニカミノルタは8月26日、最先端の感性脳工学を利用して最適なデザインを追求できるオンラインサービス「EX感性ソリューション」を今秋発売する予定であると発表しました。公式サイトのニュースリリースによると、

EX感性ソリューション 人がものを見たときの注目の仕方(どんな色、どんな明るさ、どんな形状のものにどの程度注目するか、等)をモデル化して画像解析に実装し、見える化。色の印象のデータベースなどと組み合わせて、
・訴求ポイントを目立たせる色、明るさ、形状
・商品コンセプト、与えたい印象に合った配色
等を提案するサービス。
活用事例 ・ある焼き肉店で、Webサイトとメニューの配色の刷新で来店予約が増加
・商品タグの形状・色・明るさが与える印象の違いを分析し、効果を顧客に科学的に説明
・ポスターの文字の注目性を分析し、色や大きさ、表示位置などを変更することで注目性が向上
といった事例があったと同社は説明。

 同社は本サービスを紹介する特設のウェブサイトを公開しており、今後も見えないものを見える化し、お客様の「みたい」というニーズに応えるソリューションを提供していくとしています。


※文中敬称略
※文章は2022年8月29日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。