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紙の市況(2023.11)詳細 11月20日更新分

【洋紙 国内の紙の市況/状況】

1.製紙8社 2024年3月期第2四半期決算発表

 製紙8社は11月14日までに、2024年3月期第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の連結業績を発表しました。各社のサイトに掲載された決算短信によると、

と、前年同四半期比の売上・営業利益では、5社が増収増益(あるいは黒字転換)、1社が減収も黒字転換、2社が増収減益の結果となっています。

 業績に関して各社は短信などで

王子HD 国内事業の価格改定が奏功。海外事業の需要低迷、パルプ市況悪化、ニュージーランド子会社のサイクロン被害などが影響。通期予想は売上高・営業利益・経常利益・純利益で従来予想を下方修正。
日本製紙 洋紙・板紙ともに販売数量は前年同期を下回るものの、製品全般の価格修正、コストダウン効果が寄与。豪州子会社のグラフィック事業撤退に伴う特別退職金などを特別損失に計上したことで当累計期間の四半期純損失。
レンゴー 板紙・段ボール・重包装などで需要減少も、製品全般の価格改定や海外子会社の増加などが寄与。運送事業の採算が悪化。
大王製紙 紙・板紙・段ボールで販売数量は減少も、衛生用紙などを含めた製品価格改定が浸透。衛生用紙は高付加価値品の販売やブラジル・トルコ市場が好調も、中国市場の大幅ダウンが影響。中国市場の低調などを反映し、通期予想は従来発表を下方修正。
北越 価格改定などが奏功。通期予想は営業利益を上方修正。
三菱製紙 価格改定、新製品の拡販、生産性向上や工場の安定操業に取り組み、最終損益が黒字転換。通期予想は売上高を前回発表予想より下方修正、経常利益を同上方修正。
中越パルプ 紙製品の販売数量は減少も外販パルプの販売増と価格改定が寄与。原料調達コストやエネルギーコストの低減を推進。通期予想は前回発表を売上高は下方修正、各利益は上方修正。11月10日付の日本経済新聞によれば連結純利益は過去最高を更新の予想。
特種東海 段ボール、クラフト、特殊紙、生活商品などで販売量が前年同期比減少。価格改定の浸透や海外向けファンシーペーパーの販売増が寄与も、円安基調などが利益下押し要因として影響。

 需要低迷が続くグラフィック用紙に加え、これまで堅調だったパッケージング用紙も足元の需要減少が伝えられており、円安基調などから今後の事業環境も先行き不透明との記述もみられます。


【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.日本製紙 液体用紙容器の値上げ発表

 日本製紙は11月14日、牛乳・清涼飲料向け液体用紙容器の価格修正を発表しました。

対象品種 液体用紙容器全品
値上げ幅 10%以上
実施時期 2024年4月1日納入分より

 同社は液体用紙容器を2023年4月に値上げしていますが、その後も人件費やエネルギーコストなど生産コストの大幅な上昇、物流費の高騰、急激な円安進行による輸入資材の高騰などが続き、自助努力のみでのコスト吸収は困難として、再度の値上げに理解を求めています。
 


2.レンゴー 「Pentawards 2023」で金賞を受賞

 レンゴーは11月13日、パッケージでサインの世界的なコンペティションである「Pentawards 2023」の食品部門で、同社関連の1作品が金賞を受賞、1作品が入選したと発表しました。
 金賞を受賞したのは同社が他3社と共同開発した日本産さつまいもの輸出用段ボール箱で、二次元コードのデジタル印刷によるトレーサビリティと、漫画をモチーフにしたデザインによる「日本産」の強いアピールの、2つの機能を実現しているとのこと。
 同社は今後もクリエイティブなデザインやパッケージの総合的な提案により、お客様の商品開発、販売促進、イメージアップに貢献していくと表明しています。


【その他の市況/状況】

1.古紙・パルプの価格がアジアで反発の報道

 11月10日付の日本経済新聞紙上にて、古紙やパルプの価格がアジアで上昇に転じていると報じられています。日本産段ボール古紙の東南アジアへの輸出価格は足元で8月比3~7%上昇。パルプも南米産L‐BKPの9月積み対日価格が直近安値の5月積み比13%上昇、北米産N‐BKPの10月積みの提示価格も前月比5%上昇で、N‐BKPの値上がりは半年ぶりになるとのこと。
 古紙・パルプいずれも中国の需要が活発化していることが背景にあると指摘されていますが、中国経済の先行きには懸念材料もあり、段ボールなどでは設備過剰との声もあることから、需要の先行きを慎重に見極めるとの意見も記事では紹介されています。


【印刷、製品、その他関連】

1.新紙幣、製造費が上昇との報道

 11月9日付の日本経済新聞紙上にて、2024年7月をめどに刷新される新紙幣の製造原価が現在の紙幣よりも13%上がる見通しだと報じられています。記事によれば、

内容 現行の紙幣は22年夏ごろに製造を終了。日銀発表の23年度の「銀行券製造費」と紙幣製造予定枚数から原価を計算すると、現行のデザインのみを製造していた21年度と比べ、新デザインの方が原価が13%高くなる。
日銀発券局 エネルギー価格の上昇、円安、新しい偽造防止技術の導入などが影響と説明
記事の、ミツマタに関する指摘 紙幣の紙の主原料のミツマタは、国産が1割弱で9割は海外から輸入。22年度の調達価格によれば輸入品の価格は国産品の価格比で48%安いが、円安や主な輸入先であるネパールの物価高、現地からの輸入コストなどで海外産ミツマタの価格も上昇傾向で、23年度の契約価格は22年度平均調達価格に比べ32%上昇。

 国産のミツマタの栽培面積は21年度で01年度比9割減少しているとのことで、価格さや必要量の確保から海外産に頼らざるを得ないのが実情と記事では指摘されています。


※文中敬称略
※文章は2023年11月16日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。