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華陽ニュース
不定期配信 江戸ネタ 9
今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。
9 「原稿料」
原稿料をもらっていたことが記録として残っている最初の作家は山東京伝だとされています。蔦屋重三郎が京伝の洒落本に対し契約料を支払っていたことが公文書に記録されているのですが、これはあくまで一時金で、本がヒットして何度も再版されたとしても作家の手元に原稿料が入ることはなかったとのこと(謝礼や吉原での接待といった見返りはあったようですが)。京伝自身も本業は煙管や紙製煙草入れなどの販売店で、彼がデザインした煙草入れが「京伝好み」というブランド品として人気となったこともあったようです。
京伝に弟子入りしていた時期もある曲亭馬琴も原稿料をもらっていましたが、原稿料だけで生活できた最初の作家は馬琴と同時期に「東海道中膝栗毛」で人気作家となった十返舎一九だと言われています。ただ一九がもらっていたのもあくまで「原稿料」。発行部数によって作家に報酬が支払われる「印税」の仕組みが表れるのは明治期になってからのことでした。
ちなみに当時、宴会などの代金は代表者が一人で払うのが普通でしたが、参加者が等分に代金を支払う「割り勘」を考え出したのも京伝とのこと。当時は「京伝勘定」と呼ばれてその金銭感覚が話題になったこともあったようです。