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華陽ニュース
紙の市況(2024.6)詳細 6月30日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.日本製紙 リグニンを用いた環境配慮型感熱紙を製品化 |
日本製紙は6月18日、日華化学株式会社と共同でリグニンを用いたバイオマス顕色剤を新開発し、このバイオマス顕色剤を配合した環境配慮型の感熱紙を同社より製品化したと発表しました。
リグニンは木質資源の3割弱を占める主成分のひとつで繊維同士を接着する役割を果たしていますが、パルプを製造する過程で取り除かれ、以後は熱源として再利用されることが多いとされています。同社はこのリグニンの有効な活用方法として、これまでに染料分散剤やコンクリート混和剤に使用していましたが、研究を重ねるなかで、木質パルプを製造する際に生成するクラフトリグニンが顕色剤として使用できることを世界で初めて発見、日華化学との共同研究を経て、今回の環境配慮型感熱紙の製品化に至ったとのことです。
感熱紙はレシートやラベルとして広汎に使用されており、同社によれば世界市場規模が2030年までに年率5%強成長するとの予測もあるとのことで、同社は各用途に応じた製品開発に注力していくとしています。
2.大王製紙 非フッ素系耐油紙の販売を開始 |
大王製紙は6月24日、フッ素を含まない耐油剤を使用した耐油紙「FS 耐油紙 FF」の販売を開始したと発表しました。「FS 耐油紙 FF」は
・ラミネートを使用せず、紙のみで耐油機能を実現
・FDA(米国食品医薬局)に準拠したフッ素を含まない耐油剤を使用
・食品衛生法、食品・添加物の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合
・片艶紙使用で高い印刷適性を実現
・原紙はFSC🄬認証紙に対応
等の特長を有しており、フライドチキンやピザといった油分を多く含む食品をはじめとした商品の包装や敷紙などの用途を想定しているとのこと。
同社は今回の新発売で経営ビジョンのひとつの「再生:地球を再生すること」に特に焦点を当て、耐油紙の販売を通じて、環境に配慮した取り組みを進めていくと表明しています。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.大日本印刷 パルプ回収率85%以上の紙製ハイバリアパッケージ |
大日本印刷は6月25日、パルプ回収率85%以上を有する紙製ハイバリアモノマテリアルパッケージを完成させたと発表しました。公式サイトのニュースリリースによると、
内容 | 脱プラやリサイクルなどパッケージに求められる環境性能が高まりをみせるなか、同社は2022年、紙の単一素材(モノマテリアル)を原材料とすることで『リサイクルしやすさ』を高めながら、酸素や水蒸気等の透過を防ぐ『高いバリア性』を持つ『紙製ハイバリアモノマテリアルシート』を開発。今回その材料や加工方法をさらに改良し、パルプ回収率を85%以上まで高めることでリサイクル性を高めた『紙製ハイバリアモノマテリアルパッケージ』を完成。 |
特長 | ・パルプ回収率85%以上の実現で、紙パッケージ資源のリサイクルに貢献 ・紙でありながら、酸素や水蒸気の透過を防ぐ高いバリア性を実現 ・薄紙から厚紙まで対応。折り曲げ加工後のバリア性の劣化も最小限に抑えている。 ・ハイバリア膜にポリ塩化ビニリデンやアルミ蒸着膜、アルミフィルム等を使用しておらず、リサイクル時の微小金属の混入をなくすことで、再生パルプの質の劣化を防止 |
同社はこの製品により
・パルプ回収率85%以上で循環型社会の実現に貢献
・自然再生可能資源である紙の使用量を増やすことで石油由来材料の利用を減らし、供給網全体での二酸化炭素排出量を削減
・ハイバリア機能の実現でフードロス、在庫の破棄を削減
につなげていくとし、食品・化粧品・医療品等のメーカーに包材として提供していくと今後の展開を説明しています。
2.日本製紙 新型紙製飲料容器を発売 |
日本製紙は6月21日、新型の紙製飲料容器『Pure‐Pak🄬 Sense MINI』を開発し、2024年10月より発売すると発表しました。新型容器はPETボトル500ミリリットルと同じサイズ感の口栓付き紙容器で、
・コンビニなどでPETボトルと並べて陳列できる
・再封機能のある口栓によりPETボトルと同様の使いやすさを実現
・紙容器であるため、環境負荷の小さいバイオマス素材
・乳飲料から清涼飲料まで幅広く対応
といった特長を有しており、将来的にはラミネーションや口栓でもバイオ樹脂をオプションとして使用できるよう準備をしているとのこと。
同社は「紙でできることは紙で🄬」を合言葉に、再生可能な資源である「木」から生まれた紙容器の可能性を追求し、これからも様々な提案を行っていくとしています。
3.日本製紙と日本テトラパック 飲料用紙容器リサイクルで協業 |
日本製紙と日本テトラパックは6月19日、飲料用紙容器のリサイクル率向上に向け協業することで合意したと発表しました。主原料が紙で焼却時に発生する二酸化炭素が相殺されるため環境負荷が低いと考えられる紙パックですが、両社の協業で
・BKP100%使用の原紙の継続採用で、使用済み紙パックの高付加価値リサイクルを推進
・原紙以外の樹脂やアルミ箔等の産業用途でのリサイクルを推進
・紙パックリサイクルにおける積極的なPR活動
という方向性の下、紙パックの価値を一層高め、リサイクル率向上で同分野における資源循環を確固たるものにしていくと、両社は協業の意義について説明しています。
4.王子HD 台湾のデラックス社に出資 |
王子ホールディングスは6月25日、台湾で高品質パルプモールドの製造設備とパルプモールド製品を製造・販売するデラックス社に、第三者割当増の引き受けによる出資を行い、同社製造設備・製品の全世界における販売権(うち日本・インドについては独占販売権)を取得したと発表しました。
パルプを主原料として成形されるパルプモールドは近年、従来の高強度・高耐久性・リサイクル可能といった機能に加え、美粧性・意匠性の高い高品質なものが広まり、脱プラを可能にするパッケージ素材として注目を集めています。
王子グループはパルプモールドの分野で高い技術力と開発力を有するデラックス社の技術を取り込み、パルプから高品質パルプモールド製品を一貫製造して日本・インド・東南アジア・オセアニア・欧州などで段ボールや紙器とともに複合提案するビジネスモデルを展開しながら、サステナブル資材のトータルパッケージングプロバイダーとしてグローバル市場を牽引していくと、今回の出資の狙いを説明しています。
【その他の市況/状況】
1.5月の古紙在庫が3か月ぶりに減少 |
6月19日付の日本経済新聞紙上にて、関東製紙原料直納商工組合(32社分)の5月末の古紙在庫が前月末比で減少したと報じられています。減少は3か月ぶりとのこと。夏場の需要期に向け段ボール原紙の生産が拡大する時期であること、東南アジア向け輸出が増加した影響であるとしており、在庫率も適正水準となったと記事では伝えられています。
2.パルプの5月積み対日価格が上昇 |
6月22日付の日本経済新聞紙上にて、パルプの5月積み対日価格が前月積み比で上昇したと報じられています。北米産N‐BKPは前月比6%、南米産L‐BKPは同4%の上昇とのこと。欧州での引き合いの上昇、木材産地のフィンランドでの運輸関連業界のストライキ等がアジアや日本向け価格にも影響を及ぼしているとのことで、6月積みも高値傾向が続くとの取引業者間の見方も記事では伝えられています。
【ESG、SDGs等関連】
1.大日本印刷 2023年度は約19万トンの二酸化炭素排出量削減と発表 |
大日本印刷は6月20日、2023年度の製品ライフサイクル全体における温室効果ガス排出削減量が二酸化炭素換算で約19万トンに相当する効果を達成したと発表しました。2022年度の約17万トンに比べ約2万トン、削減効果が上昇したとのこと。同社は脱炭素など環境負荷低減を目指して開発・販売されている商品ブランド『DNP環境配慮パッケージングGREEN PACKAGING🄬』を展開しており、発表されている温室効果ガス排出削減量は同ブランドの年間出荷量に基づき算出されているとのこと。
同社は包装関連製品の売上における「GREEN PACKAGING」の比率を2030年度に100%にするという目標を掲げており、その他さまざまな環境戦略や取り組みで、引き続き環境配慮製品・サービスの価値向上に努め、全ての業種・業界等のステークホルダーとともに、持続可能な社会の実現に取り組んでいくとしています。
【印刷、製品、その他関連】
1.政府、船荷証券を電子化との報道 |
6月25日付の日本経済新聞紙上にて、日本政府が船荷証券の電子化に向け具体的な法改正の作業に入ると報じられています。船荷証券は輸送業者が貨物の受け取りに際し荷主に対して発行するもので、貨物の受取証や運送契約書、貨物の引取証などの機能を有しており、現在の日本の法制度では紙であることが原則となっています。船会社から船荷証券を受け取った荷主がそれを荷物の送り先に転送することで荷物の引取りが可能となりますが、船荷証券の転送が遅くなると荷物が引き取れないといったトラブルもあり、改善が求められていたとのこと。政府は2027年度までの商法の改正・施行を目指しており、ブロックチェーン技術の採用などで安全性を高めてデジタル化することで貿易実務の負担を軽減する狙いと記事では説明されています。
※文中敬称略
※文章は2024年6月26日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。