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華陽ニュース
紙の市況(2024.8)詳細 8月31日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.製紙各社 値上げ発表 |
各社に続き中越パルプ工業が8月21日、大王製紙が8月23日に価格改定を発表しました。5月10日の王子製紙の価格改定発表以降の各社の価格改定発表をまとめると、
メーカー | 対象商品と改定幅 | 実施時期 |
王子製紙 | 印刷用紙全般=現行価格+5%以上 情報用紙全般=現行価格+5%以上 |
2024年7月1日出荷分より |
王子エフテックス | フィルム製品を含む全製品 改定幅は個別にご案内 |
2024年9月出荷分より |
特種東海製紙 | 特殊紙全製品=現行価格より10%以上 | 2024年10月1日出荷分より |
北越コーポ レーション |
印刷・情報用紙=現行製品価格の5%以上 白板紙=現行製品価格の10%以上 |
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中越パルプ工業 | 印刷・情報用紙=現行価格より+5%以上 白板紙=現行価格より+10%以上 |
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大王製紙 | 印刷用紙、情報用紙=現行価格より5%以上 ファインペーパー=現行価格より10%以上 |
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三菱製紙 | 紙素材事業製品のうち白板紙全般=現行価格+10%以上 その他紙素材事業製品、情報用紙=現行価格+5%以上 |
2024年10月21日出荷分より |
8月28日付の日本経済新聞紙上には王子製紙・船田社長のインタビュー記事が掲載されており、印刷用紙などの値上げの進捗について、他の製紙各社の値上げで取引先の値上げ受け入れが進むとの見方を示し、秋に向けて浸透させると語っています。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.レンゴー 米国包装資材メーカーの持分取得 |
レンゴーは8月22日、同社連結子会社のトライウォール社が米国のコンセプト・パッケージング社の持分25%を取得したと発表しました。コンセプト・パッケージング社は米国本社の重量物包装資材メーカーで、主に自動車関連産業に向け段ボールなど重量物包装資材の製造・販売を行っている会社とのこと。レンゴーは今般の持分取得で米国での重量物段ボールの生産能力を増強し、ネットワークを拡大すると表明しています。
【その他の市況/状況】
1.広葉樹パルプの対日価格が下落 |
8月20日付の日本経済新聞紙上にて、南米産広葉樹さらしクラフトパルプの7月積み対日価格が前月比2%下落したと報じられています。下落は1年2か月ぶりとのこと。中国のパルプ輸入が減少していること、広葉樹パルプを生産する南米メーカーの生産余力が大きいことなどが背景にあると記事では分析しています。
2.7月の家庭紙店頭価格が横ばい |
8月22日付の日本経済新聞紙上にて、7月の家庭紙の店頭価格が全品目で横ばいとなったと報じられています。東京紙商家庭紙同業会のまとめによるもので、今春に表明された家庭紙メーカーの値上げ交渉がほぼ終わり、一部製品でみられた値上げの動きも落ち着いたと記事では伝えられています。
3.日本製紙クレシア 資源循環に貢献する紙おむつの共同開発を開始 |
日本製紙クレシアは8月26日、栗田工業株式会社と、資源循環に貢献する『環境にやさしい』紙おむつの共同開発を開始したと発表しました。両社が2022年から検討・改良を続けてきた成果をもとに、日本製紙クレシアがより再資源化に適した紙おむつ製品の試作品を製造。その試作品を栗田工業が開発した使用済紙おむつ分別処理装置を使って分別処理し、結果を検証しながら再資源化したプラスチック類やパルプ類の品質向上につながる紙おむつの製品仕様や装置改良の検討を行いつつ、二酸化炭素排出量の削減効果の検証、分別処理後の素材を使用したリサイクル製品の試作なども検討していくとのこと。両社は再資源化しやすい『環境にやさしい』紙おむつの開発を通じて、循環型経済社会の構築や脱炭素社会の実現に寄与し、持続可能な社会へのさらなる貢献を目指していくとしています。
4.日本製紙 大昭和ユニボードの株式を譲渡 |
日本製紙は8月27日、同社子会社の大昭和ユニボード株式会社の全株式を株式会社エーアンドエーマテリアルに譲渡することで合意し、同日株式譲渡契約を締結したと発表しました。大昭和ユニボードは低圧メラミン化粧板「ユニボード」を製造し住宅・建築・内装メーカー等に販売する、日本製紙の連結子会社ですが、人口減少など構造的な需要減少が予測されるなか、不燃建築材料の製造販売等を事業とするエーアンドエーマテリアルへの株式譲渡が三社の永続的な発展に資する最良な選択であるとの判断から合意に至ったと、日本製紙は株式譲渡の理由を解説しています。
日本製紙は中期経営計画2025において「事業構造転換の加速」を推進しており、同譲渡の実現で経営資源集中による事業構造転換をさらに加速させていくとしています。
【ESG、SDGs等関連】
1.丸住製紙大江工場 パルプ工場として世界初のISCC‐CORSIA認証取得 |
丸住製紙は8月26日、同社大江工場がパルプ工場としては世界で初めてISCC‐CORSIA認証を取得したと発表しました。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと連名で公開した発表によると、
対象となる実証事業 | 三友プラントサービス株式会社と株式会社Biomaterial in TokyoがNEDOの助成を受けて行っている、「パルプからの国産SAFの一貫生産およびサプライチェーン構築実証事業」。国産材からパルプ、パルプから第2世代バイオエタノールを生成し、そのバイオエタノールを原料として国産の持続可能な航空燃料(SAF)を製造するシステムおよび供給網の構築を実証する。 |
丸住製紙大江工場 | 県内製材所から残渣などの廃棄物系木質原料の供給を受け、パルプを製造するまでの工程を担う。SAF製造工程における温室効果ガス(GHG)削減効果を証明するため、原料調達からパルプ製造までのGHG排出量の算出などに取り組んだ結果、認証を取得できた。 |
ISCC‐CORSIA 認証 |
国際航空においてGHG削減効果のあるSAFであると認められるための認証。国際民間航空機関(ICAO)が定める原料やGHG削減効果などに関する様々な基準をクリアする必要がある。 パルプおよび第2世代エタノールからSAFを製造する工程は世界的に事例がなく、GHG排出量の実測値がある原料からパルプ製造までの工程で認証を先行取得した。 |
今回の認証取得は国産SAFが国際航空において脱炭素効果がある燃料であると認められる第一歩であると同時に、新たなパルプ利用の可能性を切り拓き、パルプを用いたバイオリファイナリー産業の推進に大きく貢献するものと考えていると、発表には記されています。
2.王子HD 使用済み紙コップをBOXティシュの箱にリサイクル |
王子ホールディングスは8月27日、ザスパ群馬、株式会社栗原医療器械店、国際紙パルプ商事と共同で、使用済み紙コップをザスパ群馬オリジナルBOXティシュの箱に再利用する、マテリアルリサイクルを開始したと発表しました。正田醤油スタジアム群馬で使用された紙コップを分別・回収し、パルプを再資源化してBOXティシュの箱として再生、スタジアムやパートナー店舗で販売したり栗原医療器械店で活用するなどしてマテリアルリサイクルを実現するとのこと。プラスチックラミネート加工が施されているため古紙回収禁忌品として焼却処分されることが多い紙コップですが、循環経済実現の意向が高まるなか、マテリアルリサイクルの重要性は増しているとして、同社は今後も引き続き資源の循環利用と脱プラスチックに向けた取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献していくと表明しています。
3.中パ 氷見市から災害廃棄物受け入れ |
中越パルプ工業は8月21日、同社高岡工場内の土地の一部を災害廃棄物仮置場用地として富山県氷見市に貸与する契約を締結し、調印式を執り行ったと発表しました。能登半島地震からの復興支援を目的とするもので、受入れに向け仮置場設置工事に着手するとのこと。実際の災害廃棄物の受入は2024年10月を予定しているとのことで、同社は今後も被災地に所在する企業として地域の復興を支援していくとともに、一日でも早い復興と被災された方に安心して生活できる環境が戻ることを心より祈念していると表明しています。
【印刷、製品、その他関連】
1.大日本印刷 ファインペーパーを用いた写真展 |
大日本印刷株式会社は8月27日、写真展「紙の光 光のしるし」を「DNPプラザ」と竹尾「見本帖本店」で同時開催すると発表しました。サイトに掲載された発表によると、
内容 | 5人の写真家が、自らの作品の「光」に調和する竹尾の「ファインペーパー」を、紙の色や張り、重みなどの観点から精選し、その紙の上にDNPグループがその印刷技術を駆使して写真家が捉えた光景を繊細にしるした写真を展示するもの。 |
会場 | 「DNPプラザ」の「表現工房」と、竹尾の「見本帖本店」の2会場で同時開催 |
会期 | 2024年9月30日~11月22日(休館日あり。予めご確認下さい) |
2会場ではそれぞれ異なる視点で展示を構成するとのことで、竹尾の紙とDNPの印刷が掛け合わされたことで生まれる光の表現に注目が集まりそうです。
※文中敬称略
※文章は2024年8月28日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。