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華陽ニュース
紙の市況(2024.12)詳細 12月10日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.小学館から紙にこだわった新文芸誌創刊 |
小学館から11月27日、新文芸誌『GOAT』が創刊されました。誌名『GOAT』には小説と紙に対する熱い思いが込められています。同社サイトや紙を提供した大王製紙サイトの発表によると、
『GOAT』 | 「自分たちが心の底から読みたい、みんなに読んでほしい小説を集めた文芸誌を作りたい」という編集部の思いから誕生した、小学館の新文芸誌。誌名の由来は、紙を愛してやまない≪ヤギ≫と≪Greatest Of All Time(=史上最高の)≫の頭文字から来ており、「かつてない紙の文芸誌を作りたい」という気持ちが込められている。 エンタメや純文学といった線引きは一切なしで、心の栄養になる、純粋に「面白い!」と思える小説を届け、新たな読者と出会うためのアクセシブルな試み(読書バリアフリー)や、小説界にとどまらないクリエイターの発掘にも積極的にGo at(=取り組む)としている。 |
使用紙 | 大王製紙の「Remsスタンダード‐FS」、「FSエリプラペーパー」、「い織り‐FS」、「NTラシャ」、「ユトリロプレミアエクセル」、「色上質紙」、「ユトリロ上質」、「ミルトGAスピリット‐FS」を使用。 表紙や本文、口絵といった文芸誌本体のほか、読者プレゼント企画のブックエンドにも、同社の高密度厚紙「FSエリプラペーパー」と微塗工高級印刷用紙「ミルトGAスピリット‐FS」が採用されている。 |
創刊号のテーマは「愛」ですが、「愛と再生」をテーマにした詩が掲載されている部分で、大王製紙グループが資源の有効活用を目的に取り組みを進めている混抄紙受注システム「Rems」について紹介されており、紙への「愛」も詰まった1冊となっています。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.日本製紙 液体用紙容器の値上げを発表 |
日本製紙は11月28日、液体用紙容器の値上げを発表しました。
対象品種 | 液体用紙容器 全品 |
改定幅 | 現行製品価格より10%以上 |
実施時期 | 2025年4月1日納入分より |
同社は2024年4月にも液体用紙容器の値上げを実施していますが、その後も人件費・副資材価格を含む生産諸コストの上昇、物流費の高騰、円安進行・定着による輸入資材の大幅なコスト悪化といった状況に加え、2025年に向けて液体用紙容器原紙価格の価格改定が提示されたことが価格改定の要因として、値上げに理解を求めています。
【その他の市況/状況】
1.王子ネピアの赤ちゃん用紙おむつ生産設備をアイリスオーヤマが一部取得 |
アイリスオーヤマは11月27日、2025年上旬を目途に赤ちゃん用紙おむつの生産を開始すると発表しました。マスクやウェットシートなどの生産で獲得した不織布製品の知見を活用しヘルスケア事業の強化を図るとのことで
・王子ネピアが所有する国内の赤ちゃん用紙おむつの生産設備の一部を取得する売買契約を11月21日に締結
・王子ネピアが国内販売する赤ちゃん用紙おむつ「Genki!」ブランドのライセンス契約を11月25日に締結
し、「Genki!」ブランドの高い知名度と同社の強みの物流体制・販売網を活かして、赤ちゃん用紙おむつ事業に新規参入するとしています。
王子ホールディングスは今年9月の最終出荷をもって国内子供用紙おむつ事業から撤退しており、アイリスオーヤマはこの王子グループの生産設備の一部を買い取ってアイリスオーヤマ富士裾野工場の一部を改修し、生産を開始するとしています。
2.日本製紙クレシア 繰り返し使えるペーパータオルが「サンキュ!明るいミライ大賞For family 2025」を受賞 |
日本製紙クレシアは11月26日、同社の「スコッティ🄬 ファイン 洗って使えるペーパータオル」が生活情報誌『サンキュ!』の「サンキュ!明るいミライ大賞 for family 2025」を受賞したと発表しました。同賞は『サンキュ!』編集部が「家族のミライを明るくするモノ」を選考するもので、「スコッティ🄬 ファイン 洗って使えるペーパータオル」は
・布のように洗って繰り返し使える
・たくさん使ったら最後はそのまま捨てられて衛生的で、洗濯などの手間も軽減できる
といった特長から、仕事や子育てなどに日々忙しい人々の家事をちょっと便利にするものであると、同社は製品について説明しています。
【ESG、SDGs等関連】
1.コープ電力が王子社有林育林目的の寄付 |
王子ホールディングスは12月3日、同社が九州に保有する社有林の育林費用の一部について、コープ電力株式会社から寄付を受けることになったと発表しました。コープ電力株式会社はコープ九州事業連合のグループ会社で、
王子社有林から木材を出材
⇒王子グリーンエナジー日南のバイオマス発電燃料の一部に活用
⇒発電した電気をコープ電力に供給
⇒コープ九州事業連合の組合員が電力を購入
⇒購入された電力量に応じて、育林費用の一部をコープ電力が寄付
という関係にあるとのこと。
王子HDは今後もステークホルダーの皆様と協働し、健全で豊かな森林を最大限活用したネイチャーポジティブ経営に取り組んでいくとしています。
2.北越 二酸化炭素分離回収技術に関する実証試験開始 |
北越コーポレーションは11月29日、新潟工場のソーダ回収ボイラーから排出する二酸化炭素を分離回収する技術の実証試験を11月から開始したと発表しました。回収ボイラーの主な燃料が黒液(※)であることから、黒液を燃焼して発生する二酸化炭素はカーボンニュートラルであり、その二酸化炭素を分離回収することで、大気中の二酸化炭素を削減する「ネガティブエミッション」が実現されると同社は説明しています。
同社はこの実証試験を通じてネガティブエミッションの可能性を検証し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していくとしています。
※パルプを製造する過程で繊維から取り除かれるリグニンなどを含んだ黒い液体が「黒液」と呼ばれています。黒液は木が成長過程で吸収・固定化した炭素を起源とするため、燃やしても大気中の二酸化炭素は増加しないカーボンニュートラルであるとされています。
【印刷、製品、その他関連】
1.大日本印刷 生成AIで校正を支援 |
大日本印刷は12月4日、AIを活用して印刷物の校正・校閲・審査業務を支援する「DNP AI審査サービス(校正・回覧業務)」に、生成AIを活用して法令等のルールへの準拠や専門用語に関する審査を支援する機能を追加したと発表しました。先行して保険業界向けに同日より提供を開始し、12月中には銀行・化粧品・飲料・食品業界等の関連法令にも対応する予定とのこと。
高い専門性が求められ、非常に煩雑なこと、法令準拠の状況など解釈や判断が必要なこと、などからこれまで人手に依存してきた作業を生成AIの活用で支援し、複数社との実証実験では審査時間の削減率を最大80%まで高められることが算出されたとして、同社は属人化からの脱却とミスの低減などの課題解決を同サービス開発の背景に挙げています。
2.TOPPAN 絵本をハンズフリーで読み聞かせるサービスの販売を開始 |
TOPPANは11月27日、絵本をハンズフリーで読み聞かせるサービス「Yondee!🄬(ヨンデー)」の販売を同日よりクラウドファンディング「CAMPFIRE」で開始すると発表しました。ラインナップされている絵本を専用のウェアラブルデバイスのカメラで認識すると、絵本のページに合わせてタイムリーに読み聞かせの音声コンテンツが提供される仕組みで、誰もが絵本を楽しむことをサポートすると同時に、アナログメディアの紙面とデジタルの連携で新たな読書体験を提供し、五感に豊かな生活や健康な心の成長に寄与していくとしています。
「CAMPFIRE」での販売は2025年1月22日までと予定されていますが、同社は今回の販売で「Yondee!🄬」のさらなる検証やニーズ把握などを行い、2025年秋ごろからの一般販売を目指すとしています。
3.スタバ ストローを紙からバイオプラへ |
スターバックスコーヒージャパンは12月6日、飲み心地の良さと環境負荷低減の両立を目的として、2020年より提供してきた紙製のストローをバイオプラスチック製のものに順次切り替えると発表しました。レギュラーストローについては2025年1月23日の沖縄県での提供を皮切りに25年3月以降全国に順次導入、太い口径のストローでも25年4月上旬を目途に全国の店舗で導入するとのこと。新たにストローの原料として採用される「カネカ生分解性バイオポリマーGreen Planet🄬」は植物油などを原料としたもので、現在使用している森林認証紙のストローよりもライフサイクル全体で二酸化炭素排出量を低減し、紙より軽いことから店舗から出るストローの廃棄物量も重量比で半分近く削減できる見込みであると同社は説明しています。
4.紙のタウンワークが休刊へ |
株式会社リクルートは12月3日、求人情報メディア『タウンワーク』の紙のフリーペーパー全77版を、2025年3月31日(2025年3月24日発行)をもって休刊すると発表しました。1998年11月の創刊より26年にわたって全国で人と仕事の出会いを支援してきたフリーペーパーですが、昨今のユーザー動向を含む社会の変化を受け止め、ウェブサイト・アプリの『タウンワークネット』に一本化するとのこと。同社は26年間のご愛顧・ご協力に対し感謝を述べ、今後も『タウンワークネット』を通して、一人でも多くの求職者と企業のマッチング機会の創出を目指して取り組んでいくとしています。
※文中敬称略
※文章は2024年12月6日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。