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華陽ニュース
紙の市況(2025.2)詳細 2月10日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.王子HD・富国紙業・住友大阪セメント、二酸化炭素再資源化人工石灰石を使用した紙を開発 |
王子ホールディングスは2月6日、同社グループ会社の王子エフテックス、富国紙業、住友大阪セメントの3社共同で、世界で初めて二酸化炭素再資源化人工石灰石を使用した紙「ロカボ紙🄬(Low Carbon Paper:ローカーボン紙)」を開発したと発表しました。同社サイトの発表によると、
CO₂再資源化 人工石灰石 |
住友大阪セメントが開発した人工の石灰石。セメントを製造する際に排出される排ガス中の二酸化炭素を廃材由来のカルシウム源と反応させて閉じ込めることで固定化し、製造する。 |
ロカボ紙🄬 | 王子HDの高級印刷用紙「OKミューズガリバーシリーズ」を基に開発。紙に白さや不透明性、平滑性、柔軟性などを与えるために用いられる炭酸カルシウムをCO₂再資源化人工石灰石に置き換えることで、既存製品と同等の強度や印刷適性を保ちながら、二酸化炭素の排出と廃棄物を削減する。 |
紙製品化 | 2025年大阪・関西万博で住友グループのパビリオン『住友館』にて、ポストカードやメモパッドなどの記念品の原紙として使用。 |
同社は今後もCO₂再資源化人工石灰石の適用範囲の拡大について検討を進め、持続可能な社会の実現に貢献していくとしています。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.日本製紙 カップ原紙などを値上げ |
日本製紙は2月4日、カップ原紙などの値上げを発表しました。
対象製品 | カップ原紙、液体容器原紙、コア原紙 |
値上げ幅 | 15%以上 |
実施時期 | 2025年4月1日出荷分より |
理由について同社は原燃料価格の高止まり、物流費の上昇、人員確保のための労務費増加を挙げており、値上げに理解を求めています。
2.レンゴー 2025年3月期第3四半期決算発表 |
レンゴーは2月4日、2025年3月期第3四半期(2024年4月1日~2024年12月31日)の連結業績を発表しました。
前年同四半期比で増収減益となった結果について同社は、連結子会社の増加や製品価格改定が増収に寄与したが、原料価格の上昇や固定費の増加等が利益に影響したと分析しています。
同社は1月31日、
・販売量や製品価格改定が当初計画を下回った
・原料価格が想定以上に上昇
・欧州における景気減速の影響で海外重包装事業の採算が悪化
を理由として、2025年3月期通期の営業利益・経常利益・当期純利益を下方修正する連結業績予想修正を発表しています。
3.日本製紙「NS‐FUJI UltraSlim」80ml容器を新発売 |
日本製紙は2月5日、長期常温保存が可能なレンガ型紙容器「NS‐FUJI UltraSlim」で新たなサイズの80mlタイプを発売したと発表しました。同製品は伊藤園の通販限定商品「健康体 爽快サジー80ml」に採用され、2月12日より販売開始されるとのこと。同社は今後も紙容器の可能性を追求し、様々な提案を行っていくとしています。
【その他の市況/状況】
1.大王製紙 家庭紙値上げ |
大王製紙は2月5日、家庭用・業務用紙製品の値上げを発表しました。
対象製品 | ティシュー、トイレットペーパー、キッチンタオル、ペーパータオル他家庭用・業務用紙製品 全品 |
値上げ幅 | 現行価格より10%以上 |
実施時期 | 2025年4月1日納品分より |
同社は物流費・人件費の高騰の継続を理由に挙げ、安心・安全で高品質な製品を提供するためとして値上げに理解を求めています。
2.12月積みパルプ価格 横ばい・弱含み |
1月29日付日本経済新聞紙上にて、2024年12月積みの北米産N‐BKPの対日価格が前月比横ばいとなったと報じられています。南米産L‐BKPは弱含みとのこと。中国の需要が鈍く、上昇した価格を維持できる状態にないと記事では分析されています。
3.関東古紙在庫12月末に増加 |
1月30日付の日本経済新聞紙上にて、関東製紙原料直納商工組合まとめによる2024年12月末古紙在庫量(32社分)が前月末比56.5%増となったと報じられています。年末の企業や家庭からの古紙排出量の増加が背景とのこと。紙・板紙の生産は停滞を続けており、同月の古紙問屋の集荷量・出荷量は前年同月に比べ減少していますが、在庫量は前年同月比9.3%増となったとも伝えられています。
4.ENEOS、C重油値上げ表明 |
1月31日付の日本経済新聞紙上にて、製紙会社がボイラー用燃料に使う高硫黄C重油について、ENEOSが値上げを表明したと報じられています。1~3月期の価格を2024年10~12月期比で4%引き上げるとのこと。前期より円安が進んだ事が値上げの要因と記事では伝えられています。
5.CNF コスト削減進むの報道 |
2月4日付の日本経済新聞紙上にて、セルロースナノファイバーの実用化の上での課題だったコスト削減が少しずつ進んでいると報じられています。王子ホールディングス・CNF創造センター副センター長によれば、数年前まで1キロ数万円程度と言われていたコストが現在は数千円から1万円程度まで下がってきたとのこと。CNFはその保湿性や増粘性、分散安定性、チキソ性などといった多様な特性から食品・化粧品・日用品などでの採用が広がってきましたが、価格が下がればより産業規模の大きい繊維強化プラスチックなどの複合素材やゴムの補強材などでの採用に向けた量産が進めやすくなるとして、記事では現在の段階を「CNF市場の離陸期」と評しています。
6.日本製紙 家畜用サプリメント「トルラプラス🄬」の生産量拡大 |
日本製紙は2月6日、家畜用サプリメント「トルラプラス🄬」を夏頃より生産拡大し、全国で使用してもらえるよう本格販売を開始すると発表しました。同社の公式サイトの発表によると、
トルラプラス🄬 | 同社の江津工場で培養するトルラ酵母から抽出した核酸と酵母細胞壁を原料とする家畜用サプリメント。牛や豚などの家畜の成長促進や免疫機能の安定化に寄与する。 江津工場のある島根県で行われた実証実験で、乳牛の出血性腸症候群の発生数の低減が認められた。 |
生産拡大 | 全国の獣医師・畜産農家からの引き合い拡大に対応し、生産量を年間140トンから約500トンに拡大できる新設備の導入を決定。設備稼働による生産拡大は夏頃を予定。 |
江津工場 | 国内唯一のサルファイト蒸解パルプ製品製造工場。製造の際に発生する副産物のヘミセルロースから得られる糖を栄養源としてトルラ酵母を培養し、2020年より「トルラプラス🄬」の製造を開始していた。 |
同社は今後も再生可能な木質資源の総合利用で、お客様のニーズに応える高付加価値製品の提案を行っていくとしています。
7.日本製紙 リグニン使用の「常温アスファルト混合物用乳剤」を共同開発 |
日本製紙は2月6日、東亜道路工業と共同で「常温アスファルト混合物用乳剤」を開発したと発表しました。同社の公式サイトの発表によると、
アスファルト混合物 | 道路の舗装等に使用される、石や砂などの骨材とフィラー材、接着剤の役割を果たすアスファルトを混合させた複合材料。高温で加熱溶融され製造・施工に使用される「加熱アスファルト混合物」が従来用いられている。 省力化、コスト削減、低炭素化、作業環境改善などの観点から、常温で製造・施工できる「常温アスファルト混合物」への転換が検討されてきたものの、 ・結合剤の役割を果たす「アスファルト乳剤」の安定性や保管管理の難しさ ・施工後の強度発現に時間を有する 等の課題から、これまでは補修や簡易舗装等にしか使用されてこなかった。 |
今回の開発品 | 日本製紙が新規に開発した特殊変性リグニン「StarLigno🄬」を使用。既存のリグニン製品より分散性・増粘性に優れる「StarLigno🄬」を使用することで、加熱アスファルト混合物と遜色のない常温アスファルト乳剤混合物を製造する「常温アスファルト混合物用乳剤」の開発に成功。 |
同開発品は2024年11月の試験施工で良好な結果を取得、現在は国土技術研究センターの実施する「超広域運搬が可能なアスファルト乳剤混合物」の施工及び供用性データを取得する追跡調査を実施中とのことで、インフラの整っていない国外の島嶼部や未舗装地域、災害復旧時などでの活用が期待されるとしています。
【ESG、SDGs等関連】
1.外食3社と王子HD 使用済み紙コップを再生 |
王子ホールディングスは1月31日、日本マクドナルド、日本ケンタッキー・フライド・チキン、タリーズコーヒージャパンの3社と共同で使用済み紙コップを回収し、王子ホールディングスの設備でペーパータオルに再生する取り組みを開始したと発表しました。公式サイトの発表や同日付の日本経済新聞記事などによると、1月30日から東京都内の近接地にある26店で始め、2025年末までに東京、大阪、愛知などの125店舗に広げる計画とのこと。3社共同の専用トラックが近接地を巡回することでトラックの積載率を高め1社だけで回収する場合より回収コストを下げられる見通しとのことで、年間約60トンの回収を目指し、再生されたペーパータオルは3社の店舗で従業員の手洗い向けといった用途で再利用されると伝えられています。4社はこの取り組みを通じてお客様にリサイクルへの協力を促す方法やより効果的・効率的なリサイクルを進めるための知見を共有し、また、この取り組みに賛同・参画する企業・団体を積極的に募ることで、さらなる規模の拡大と、低炭素・資源循環社会の実現への貢献を目指すとしています。
2.特種東海 「省エネルギーセンター会長賞」を受賞 |
特種東海製紙は2月5日、2024年度省エネ大賞において「省エネルギーセンター会長賞」を受賞したと発表しました。同社は卸電力市場の価格変動に応じて、価格が安いときに多く購入し高いときは買わないという価格型ディマンドリスポンス(電気需要最適化)を事業者自ら実施していますが、その取り組みの先進性・独創性が高い評価を受けたと説明しています。同社は電力需要家自らが積極的にエネルギーの使い方を変えていくことが脱炭素社会、再エネ主力化社会の実現に重要と考えこの取り組みを推進してきたとのことで、三島工場の大幅なコストダウンに寄与するとともに、取り組みの普及と脱炭素社会の実現に貢献するため本事業を新会社として切り出したことも発表しています。
【印刷、製品、その他関連】
1.コクヨ 大人向けの「やる気ペン」発売へ |
コクヨは1月29日、大人の資格試験の学習状況を見える化し応援する、「大人のやる気ペン」を発売すると発表しました。同社サイトの発表によると
仕組み | 加速度センサーとLEDがついたデバイス「大人のやる気ペン」を筆記具やタッチペンなどに取り付ける。 加速度センサーがペンを使ったデータを測定、LEDやアプリとの連動でデータを見える化する。 |
やる気サポートの工夫 | ・測定データを「やる気パワー」として記録。LEDの色変化で「やる気パワー」の蓄積量を通知。 ・学習後にスマホと通信し、専用アプリで日々の「やる気パワー」をグラフ化。 ・一週間の学習傾向に合わせ、「叱咤激励」メッセージが届く。 ・自身のアバターが「やる気パワー」の量に応じてスゴロク形式のステージを進み、アイテムを獲得。アバターをカスタマイズできる。 ・スゴロクステージで他のユーザーのアバターと遭遇し、「勉強のコツ」や「勉強する理由」などを知ることができる。 |
販売 | クラウドファンディングサイトのMakuakeにて2025年1月29日~3月15日に先行販売。2025年春には一般発売を予定。 |
コクヨは同様の子供の日々の努力を見える化する『しゅくだいやる気ペン』を2019年に発売、約8割の親子が学習習慣化の効果を実感している一方、大人が資格勉強などに活用している実態も明らかになったとして、学習の際、全世代で課題となる「モチベーション維持」に貢献し、「仕事も学びも頑張る人を応援したい」という思いから今回のIoT文具の開発に至ったと、発売の動機を説明しています。
2.パブテックス 書籍トレーサビリティーサービスを開始 |
講談社、集英社、小学館、丸紅が出資するパブテックスは1月30日、RFIDタグを活用して書籍のトレーサビリティーを可能にするシステム「BOOKTRAIL」の商用サービスを1月29日より開始したと発表しました。書籍にRFIDタグを装着、書店側はそれを読み取ることで店内在庫の把握や棚卸の効率化、万引き防止などにつなげられるとのこと。1月31日付の日本経済新聞記事によれば、RFIDタグ取り付けの費用は出版社が負担、書店側にはサービス料金やレジ・リーダーなどの設備導入の初期費用が掛かるとのことですが、同社は出版物の流通の効率化、可視化が書店オペレーションや収益の改善に貢献するとし、引き続き持続可能な出版界の実現に貢献していくとしています。
3.印刷枚数の減少で複合機レンタル料が下落 |
1月31日付の日本経済新聞紙上にて、オフィスの複合機の2024年12月のレンタル料金が前年同月比38%と大幅に下落したと報じられています。オフィス家具・OA機器レンタルのレンタルバスターズのまとめによるもので、複合機のレンタル料金は印刷枚数に比例することから、民間企業に続いて公共団体でも紙からデジタルへの移行が進み、印刷枚数が減少したことが料金下落につながったと同社は分析しているとのこと。ただ、2025年は大型イベントや企業の間接業務外注の増加が増えるとの見方があり、これらが料金押し上げの要因になる可能性についても記事では伝えられています。
4.AIが読書感想文を指導 |
子供に読書習慣を付けるオンライン習い事「ヨンデミー」を運営する株式会社Yondemyは1月31日、同日より「ヨンデミー」の新機能「ハナシテミー」の正式提供を開始したと発表しました。「ハナシテミー」は読書を楽しむ技術を「思い描く・質問する・認める・つなげる・予想する・見極める・解釈する」の7つと定義。それぞれを得意技とするAIキャラクターと会話することでこれらの技を楽しく身につけ、感想文の書き方についてもAIとの会話を通じてサポートを受けられる構成となっています。
2024年9月から提供されたベータ版では提供開始1か月で感想文の2割が「ハナシテミー」経由で提出されたと同社は成果を述べており、「ハナシテミー」を通じて、本を読むことだけでなく、読書の技術を身につけ、考えを深めながら「書く」楽しさや習慣を広め、子どもたちの読書体験をより豊かにしていくと、サービスの意義を説明しています。
※文中敬称略
※文章は2025年2月7日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。