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華陽ニュース
紙の市況(2025.5)詳細 5月20日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.印刷用紙の値上げが浸透の報道 |
5月14日付の日本経済新聞紙上にて、印刷用紙が2年ぶりに値上がりしたと報じられています。大手製紙各社が昨年5~8月に発表し交渉を続けていた値上げを大手印刷会社などが受け入れたことで、主要品種が前月比5%程度値上がりしたとのこと。印刷・情報用紙の内需は減少を続けていますが、設備廃棄や減産などで需給は引き締まっており、値上げを受け入れず製紙各社の収益改善や設備更新投資が進まなければ安定供給への懸念が生じかねないことも、値上げが受け入れられた一因であると記事は分析しています。
2.製紙8社業績発表 |
大手製紙8社は5月15日までに2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績を発表しました。各社の決算短信によると、
各社は
王子HD | ・生活産業資材(板紙等)、印刷情報メディア(印刷・情報用紙等)では国内は人件費、物流費等の増加でコスト増。 ・パルプ市況上昇は増益要因。 ・2026年3月期は、生活産業資材を中心に売価差で国内において215億円の連結営業利益増を予想。政策保有株の縮減、退職給付信託株式の見直し、不採算事業の撤退基準の厳格化、成長性のある事業やエリアへの進出の加速化などを進め、年間配当を24年度の24円/株から36円/株に増配予定。 |
日本製紙 | ・石油等燃料価格の安定、各種製品の価格修正、円安等がプラス要因。 ・労務費や物流費の上昇、紙・板紙需要の低調などがマイナス要因。 ・2026年3月期は生活関連事業(国内)の販売数量の増加や価格修正、海外事業の収益改善等で前年同期比増収増益を予想。 |
大王製紙 | ・ホーム&パーソナルケアの国内事業における価格改定の浸透、紙・板紙事業での輸出販売増加等がプラス要因。 ・紙・板紙事業における国内主要の低迷、板紙・段ボールの中国および東南アジア市場の停滞等がマイナス要因。 ・2026年3月期はホーム&パーソナルケア海外事業の構造改革効果(フェミニンケア商品や高付加価値商品の販売拡大など)により売上は横ばいも増益を予想。 |
北越コーポ | ・輸出強化、海外パルプ市況の回復等により、過去最高となる売上高を記録。 ・パルプ事業の改善、中国白板紙事業の連結除外等の影響で前年比営業利益増。 ・2026年3月期は国内紙需要の減退、輸出価格の低下、アルパックのメンテナンスコスト負担等により、売上高、営業利益の減少を予想。 |
三菱製紙 | ・国内製品の価格改定、石炭や天然ガスのコスト減、海外リストラ等が営業利益にプラスの影響。 ・欧州圏での市況低迷継続、数量減等が営業利益にマイナスの影響。 ・2026年3月期は売上高、営業利益、経常利益増を予想も、ドイツ事業の構造改革による特別損失の計上を見込み純利益は前年同期比減を予想。 |
中越パルプ | ・国内スポット案件受注、輸出拡販、衛生用紙の積極販売等により増収。 ・原燃料価格や物流費の上昇、修繕費等のコストアップの影響で減益。 ・中越エコプロダクツの解散決議による固定資産の減損損失を計上。 ・2026年3月期は増収増益を予想。家庭紙マシンの安定操業と効率改善、CNF事業の売上規模拡大、化石燃料使用量の削減、省エネ対策、植林事業推進による二酸化炭素排出削減等に取り組むとする。 |
特種東海 | ・特殊印刷用紙やトイレットペーパーの価格改定、ペーパータオル新製品の高評価、海外向け特殊機能紙一般製品の需要増等がプラス要因。 ・国内物価上昇による買い控えで段ボール等包装材の需要全体が低調、電子化等の影響による特殊紙製品の国内向け需要減等がマイナス要因。 ・2026年3月期は増収増益を予想。資源再活用事業拡大の一環による連結子会社増の売上高への寄与、特殊素材事業や生活商品事業における価格改定効果による利益改善を見込む。 |
といった分析・見通し等を示しています。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.レンゴー 2025年3月期連結業績発表 |
レンゴーは5月9日、2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績を発表しました。
同社は決算短信において
・板紙業界は、輸出は低調も国内需要が堅調
・段ボール業界は、天候不順で青果物向けの需要が低迷、飲料を含む加工食品向けは好調
・紙器業界は、ギフト関連市場は縮小、土産物・地域特産品の包装需要は堅調
・軟包装業界は、インバウンド需要の増加、個人消費の持ち直しで生産量は前年比増
・重包装業界は、石油化学関連の需要減で生産量が前年比減
等の業界分析を示しています。
2.王子HD、アルミ付き紙容器を段ボールに再生 |
王子ホールディングスは5月12日、日本テトラパック株式会社、ゴールドパック株式会社と連携し、アルミ付き紙容器を段ボールに再生するリサイクル技術を実用化したと発表しました。これまで焼却処理によるサーマルリサイクルが中心で、紙製品に再利用するマテリアルリサイクルは3%台だったアルミ付き紙容器を、段ボールへ再生するリサイクルシステムを王子HDと日本テトラパックが構築、アルミ付き紙容器を段ボールに再生するリサイクルシステムの構築は国内初とのこと。再生された段ボールは、大阪・関西万博の北欧パビリオンで来場者に配布される、ゴールドパック製造の「ノルディック・サークル」オリジナルデザインのミネラルウォーターの梱包に採用されており、今後さらに再生段ボールの採用が加速することが期待されると同社は説明しています。
【その他の市況/状況】
1.ENEOS C重油価格を引き下げ |
5月13日付の日本経済新聞紙上にて、ENEOSが4~6月期の高硫黄C重油の価格の引き下げを表明したと報じられています。対象時期の原油価格の下落や円高・ドル安傾向を反映したもので、1~3月期比で11%安い価格を提示していると記事では伝えられています。
【ESG、SDGs等関連】
1.大王製紙 千葉県佐倉市、いとう教材社と市内の防災力強化を目指した取り組み |
大王製紙は5月8日、千葉県佐倉市及び有限会社いとう教材社と「紙おむつ定額サービスおよび災害時支援に関する三者協定」を5月7日に締結したと発表しました。公式サイトの発表によると
協定の内容 | いとう教材社が提供する「おむつん」の仕組みを活用し、保育施設に日常的に紙おむつをお届けするとともに、紙おむつを一定量、災害時備蓄おむつとして活用できる体制を構築。 |
狙い | ・保護者や保育現場の負担軽減と、防災力強化を両立する新たなモデルの確立 ・特定の拠点に備蓄を集中させるのでなく、保育施設を基点とした分散型の備蓄を可能とすることにより、災害発生時にも迅速かつ身近な支援を実現 ・日常的な使用で紙おむつを循環させることで、使用期限切れによる廃棄を防止 |
おむつん | いとう教材社が提供する、おむつのサブスク・月額定額制の使い放題サービス。保護者に代わり保育施設に直接、紙おむつやおしりふきを届けるもの。 |
大王製紙は同社グループのビジョンのうち、今回は「衛生:人々の健康を守ること」に焦点を当て、同社商品の活用により、災害時や日常生活での健康維持を支援していくとしています。
2.大王製紙 PPC用紙「助け合いの輪+」の第6回の寄付を実施 |
大王製紙は5月9日、、PPC用紙「助け合いの輪+(プラス)」にの直近1年間(2024年4月1日~2025年3月31日)の売上金額の1%を日本ユニセフ協会「ユニセフ募金」へ寄付したと発表しました。同社は2021年に現行品にリニューアルする前の製品で寄付を開始して以来、寄付を継続しており、今回で6回目の寄付となるとのこと。「ユニセフ募金」は主に開発途上国の子どもたちに対する保健・栄養・水と衛生・教育等の幅広い支援に役立てられるものとのことで、同社は今後も経営理念とビジョンに基づき、事業活動を通じた支援を継続して行っていくと表明しています。
3.日本製紙 「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」に参画 |
日本製紙は5月12日、環境省が推進する「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」に参画し、「ネイチャーポジティブ経営を推進する企業(NPEパートナーズ)」および「ネイチャーポジティブ技術を有する企業等(NPEソリューション・パートナーズ)」として登録されたと発表しました。
「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」は2030年までにネイチャーポジティブ経済を実現する目的で設立されたもので、会員によるネイチャーポジティブ経営の取り組みや技術の紹介、ビジネスマッチングの場を提供するものとのこと。
日本製紙は同社が持つエリートツリー苗の増殖技術などの先進的な森林育成技術を活かして、今後も森林資源の持続的な管理や生物多様性保全に取り組むとともに、他の会員企業との連携も強化し、ネイチャーポジティブ経営をさらに推進していくと表明しています。
4.王子・大日本、共同輸送の取り組みを開始 |
王子ホールディングスは5月14日、グループ会社の王子ネピア・王子物流が、大日本印刷グループのDNPロジスティクスと共同輸送の取り組みを5月中旬より開始すると発表しました。両社が福島県内の工場で製造した大人用紙おむつと包装資材を1台のトラックに混載し、それぞれの関東拠点と東京の倉庫に輸送するもので、2024年12月からの実証実験によって
・福島から東京へ輸送するトラックを両社合算で従来の半数に削減
・対象区間における二酸化炭素排出量を年間50%削減の見込み
といった効果が見込める目途が立ったことから、今回共同輸送を開始する運びとなったとのこと。
王子ネピアは「人と地球に、ここちいい。」のもと、今後も商品づくりや配送などにおける環境負荷低減の取り組みを継続していくと表明しています。
【印刷、製品、その他関連】
1.品川区の子育て支援施設に紙製人工芝 |
KPPグループホールディングスは5月1日、グループ会社の国際紙パルプ商事が販売する紙製の人工芝「OJO⁺ペーパーターフ」が、同日開設された東京都品川区立八潮子育て支援施設「IKUMOやしお」内に敷設されたと発表しました。同施設内に設けられた、0~2歳の乳幼児が転がったりして遊べる部屋「ころころウッドルーム」内に18平方メートルの「OJO⁺ペーパーターフ」が敷設されたとのこと。「OJO⁺ペーパーターフ」の原料として使用されている紙糸は、繊維に対する安全性の基準「エコテックス」で、『3歳までの乳幼児の肌に触れても安全』という、最も厳しい「クラス1」を取得しており、紙製である故に持つ吸放湿性という「OJO⁺ペーパーターフ」の特徴から、肌触りが優しく、安全で快適な遊び場としての採用につながったと同社は発表しています。
2.日本の小説が英国文学賞受賞 |
新潮社は5月13日、柚木麻子さんの小説『BUTTER』が英国の文学賞「ブリティッシュ・ブック・アワード2025」のデビュー・フィクション部門を受賞したと発表しました。2020年1月に文庫版が日本で刊行されて以降、フランス、ドイツ、イタリア、スペインとオファーが続いた同作は2025年5月現在、36か国で翻訳が決定しているとのこと。イギリスでは2024年2月に同国の出版社から翻訳版が刊行されたとのことですが、同年11月には読者の投票によって結果が決まる「2024 Books Are My Bag Readers Award」の「Breakthrough award category」と、大手書店チェーンWaterstone社が選ぶ「Waterstones Book ob the Year 2024」の2賞を受賞しており、今回の受賞でイギリスで3冠に輝いたと同社は発表しています。
3.段ボール製の防衛ドローン |
5月15日付の日本経済新聞紙上にて、防衛向けドローン開発のスタートアップ、エアカムイ(名古屋市)が、素材に段ボールを使った小型ドローンを開発したと報じられています。素材の9割に防水加工を施した段ボールを採用することで
・軽量化で航続距離を延長
・安価な段ボールの採用で生産コストを大幅に減らし価格が低下
・組み立て式のパーツで大量に輸送でき、利用者が工具を使わず1機当たり5分程度で組み立てられるように工夫
等を実現したとのこと。
機体の重量は4キログラム程度とのことで、使用時は紙飛行機のように人力で空中に投げて飛ばし、最大で時速90キロ程度の速度が出せると記事では紹介されています。
4.「O-hajiki」が今川焼の包装紙に採用 |
王子ホールディングスは5月15日、同社開発の非フッ素耐油紙「O-hajiki」が、大阪・関西万博でニチレイフーズが販売する「凍ったまま食べられる今川焼」の包装紙に採用されたと発表しました。「O-hajiki」はフッ素系耐油剤を使用していない耐油紙で、従来のフッ素系耐油紙と同等の耐油性能を維持、油分を含んだ食品の包装や敷紙に適しており、また、ポリエチレンラミネート紙の代替として使用すれば包装資材の脱プラにも貢献できるとのこと。同社は「O-hajiki」の環境や健康への配慮が、未来に向けたサステナブルな魅力を持つ包材としてニチレイフーズの理念に合致したと、採用の理由を説明しています。
※文中敬称略
※文章は2025年5月16日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。