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紙の市況(2025.5)詳細 5月31日更新分

【洋紙 国内の紙の市況/状況】

1.日本製紙 片艶生産機1機を停機

 日本製紙は5月26日、大竹工場で片艶紙を生産する1号抄紙機の停機を決定したと発表しました。

・同抄紙機は2021年に設備故障で一時生産見合わせ、その後修理点検し生産を継続
・片艶紙需要のさらなる減少が見込まれることから、再生産可能な収益の確保が困難

という事情から、2026年6月末を目途に停機することを決定したとのこと。
 同機の生産能力は年間2万トンですが、同機で生産している製品については、同工場の2号抄紙機、3号抄紙機での生産を含めて代替品の案内を進めていくとして、同社は顧客の理解を求めています。
 

【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.日本製紙が白板紙の値上げを発表

 日本製紙は5月21日、コート白ボールと特殊板紙の価格改定を発表しました。

対象品種 コート白ボール、特殊板紙
値上げ幅 15%以上
実施時期 2025年8月1日出荷分より
実施理由 原燃料価格の高止まり、物流費の上昇、労務費の増加等のコストアップを転嫁

 コート白ボールや特殊板紙はお菓子や日用品など幅広い最終製品のパッケージに使用されるもので、原紙の価格改定が最終製品の価格に影響を与えるかにも注目が集まりそうです。
 
 
【その他の市況/状況】

1.L‐BKP・古紙 価格下落の報道

 5月20日付の日本経済新聞紙上にて、南米産広葉樹さらしクラフトパルプ(L‐BKP)と古紙の価格が下落していると報じられています。L‐BKPの4月積み対日価格が前月比3%下落、古紙では関東製紙原料直納商工組合の5月積み輸出入札価格で組合買い入れ価格が前月比9%安となったとのこと。L‐BKPは中国の買い付け停滞、古紙は米国産古紙のアジア向け価格が軟化している影響と記事では分析していますが、いずれも米国の関税政策の影響を受けての対応である側面があり、米関税政策自体の先行きが不透明であることから、影響がどの程度及ぶかは見通しにくいと記事では指摘しています。
 

2.日本製紙、全国菓子博に出展

 日本製紙は5月20日、5月30日~6月15日に北海道旭川市で開催される「第28回全国菓子大博覧会・北海道 あさひかわ菓子博2025 SMILE SWEETS HOKKAIDO」に出展すると発表しました。1911年の初開催以来、約4年に1度、全国各地で開催されてきたお菓子の祭典が、コロナ禍を経て8年ぶりに開催されるこの機会に、同社は、お菓子に添加することで「ふわっと、しっとり、もちもち」した食感を付与できる「セレンピア🄬」を紹介するとのこと。
 5月31日、6月1日の2日間には、旭山動物園とのコラボ企画「スイーZOO」で販売予定の商品を試食提供する予定とのことで、

・セレンピア🄬入り糊剤を活用した高剛度板紙「ICBボード」を試食時の紙スプーンに
・スイーZOO販売商品の一部包材として「シールドプラス🄬」「メトセラパーツ」

等の展示も行うとのことで、同社は来場の際には同社ブースにお立ち寄り頂きたいと呼びかけています。
 

3.王子HD バイオエタノールなど生産の実証プラントの竣工式

 王子ホールディングスは5月21日、王子製紙・米子工場内に建設していた木質由来糖液・エタノールのパイロットプラントの竣工式を執り行いました。このパイロットプラントの生産能力は木質由来糖液3,000トン/年、木質由来エタノール1,000キロリットル/年で、このプラントで実証実験を行い、2030年度の事業化を目指すとのこと。
 木質由来糖液はプラスチックや繊維、ゴムなどの基幹原料として、木質由来エタノールは持続可能な航空燃料(SAF)や基礎化学工業製品の製造に利用するものとして、石油由来製品からの代替が期待されており、非可食の木材を原料とすることから食料との競合も無いと同社は説明しています。
 

4.家庭紙店頭価格が一部上昇

 5月24日付の日本経済新聞紙上にて、4月の家庭紙の店頭価格が一部品目で上昇したと報じられています。東京紙商家庭紙同業会の調べによるもので、大手のパルプ製トイレ紙(50~55メートル、12ロール)が上値・下値ともに前月比20円高かったとのこと。大手のパルプ製トイレ紙は60メートル、12ロールの製品も同程度値上がりしており、メーカー値上げが店頭価格に反映されるケースが出始めたと記事は評価していますが、同じくメーカー値上げが表明されている再生紙トイレ紙は横ばいで、値上げの時期のばらつきが影響したと記事では分析されています。
 

【ESG、SDGs等関連】

1.王子 ソフトバンク本社で紙コップのマテリアルリサイクルを開始

 王子ホールディングスと王子ネピアは5月22日、ソフトバンク本社ビルの一部で使用された紙コップを「nepiaハンドタオル」にマテリアルリサイクルする取り組みを開始したと発表しました。これまで年間500kg廃棄していた紙コップを分別・回収し、年間約1,500パックのハンドタオルとして生まれ変わらせて、ソフトバンク本社ビルで使用する取り組みとのこと。王子ホールディングスがオフィスビルで発生する紙コップのマテリアルリサイクルを定常的に行うのはこれが初の取り組みとのことで、同社グループは引き続き、資源の循環利用や環境配慮型素材・製品の開発を通じてグリーンイノベーションを推進し、持続可能な社会の実現に貢献していくと表明しています。
 

2.王子HD バイオ炭の実証実験

 王子ホールディングスは5月27日、株式会社トロムソと共同で、ベトナムにおいてバイオ炭の実証実験を実施すると発表しました。

①ベトナムの製材所で発生し、これまで未利用だったアカシア等の樹皮を回収
②トロムソ社がバイオ炭を製造
③王子グループのベトナム植林会社が保有するアカシア植林地で施用

というもので

・植物が腐敗することで発生する二酸化炭素を、バイオ炭化することで長期間固定し、大気中の二酸化炭素を削減
・バイオ炭を用いることで土壌の保水性や通気性を向上させ、植物の生育を促進

といった効果を期待するとのこと。
 バイオ炭は農業では使用が進んでいますが林業では使用例が限られていると同社は説明しており、この実証実験で土壌改良効果、樹木の成長への影響、炭素固定効果等を検証するとしています。
 

3.日本製紙 「エリートツリー」苗木の里親プロジェクト

 日本製紙は5月27日、三井不動産レジデンシャルとともに、三井住友銀行のサポートのもと、誰でも気軽に都心マンションから植林に参加できる「エリートツリー」苗木の里親プロジェクトのトライアルを開始すると発表しました。

①日本製紙がエリートツリーの苗木を提供
②三井不動産レジデンシャルが分譲・管理するマンションの入居者が、1年間育苗
③育苗後、苗木を回収して日本製紙の社有林に植樹
③将来的には日本製紙の紙製品に

という仕組みで

・従来品種に比べ花粉が少なく、成長性に優れる特徴を持つ「エリートツリー」の普及拡大
・都心マンションから気軽に植林活動に参加可能
・より多くの方々への木育・循環型社会への参加機会の提供
・参加者には日本製紙グループの紙製品の提供や、三井不動産レジデンシャル提供のアプリ「くらしのサス活」との連携によるインセンティブの提供を予定

との狙い・特典があるとのこと。
 プロジェクトの第一弾として既に5月24日にワークショップを実施済みで、今後は参加者の声をもとにマンションでの育苗環境の確認やご入居者様への告知・回収方法などの課題を抽出することで、取り組みの拡大を検討していくと同社は発表しています。
 

【印刷、製品、その他関連】

1.パナソニックが植物由来の高強度プラスチックを開発

 パナソニックは5月15日、植物由来のセルロースファイバーをナイロン系の樹脂に40%転嫁することでエンジニアリングプラスチックと同等の強度を有する成形材料を開発したと発表しました。同社が2015年から開発を続けてきた、セルロースファイバーを高濃度に樹脂に複合化する技術を応用したとのこと。

・エンジニアリングプラスチックと同等の強度
・成形性に優れ、エンジニアリングプラスチックより低比重
・高濃度に天然由来成分を含有、一般社団法人日本有機資源協会が認定するバイオマスマーク40%を取得

との特長から石油由来の樹脂使用量の低減に貢献できるとして、今後、家電の筐体や車載機構部材、大物家電外装等への展開を進めていくと同社は想定される用途を挙げています。
 

※文中敬称略
※文章は2025年5月28日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。