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華陽ニュース
紙の市況(2025.9)詳細 9月10日更新分
【洋紙 国内の紙の市況/状況】
1.三菱製紙、印刷・情報用紙の値上げを発表 |
三菱製紙は8月29日、印刷・情報用紙の価格改定を発表しました。
対象製品 | 印刷用紙全般(上質紙、塗工紙、微塗工紙 他) 情報用紙全般(PPC用紙、フォーム用紙 他) |
改定幅 | 現行価格+10%以上 |
実施時期 | 2025年10月21日出荷分より |
既に王子製紙が印刷・情報用紙の10月1日出荷分からの値上げを発表しており、対象製品の在庫状況にも注意が必要です。
【板紙・パッケージに関する市況/状況】
1.王子HD 2025日本パッケージングコンテストで受賞 |
王子ホールディングスは8月27日、「2025日本パッケージングコンテスト」の菓子包装部門賞を受賞したと発表しました。公式サイトの発表によると、
受賞品 | 株式会社ブルボン、株式会社シンク・ラボラトリーと共同出品したブルボン「贅沢ルマンドエチオピアモカ」のパッケージ |
パッケージの特長 | ・包装適性・デザイン性を維持しつつ、紙素材を使用することで従来品と比較して60%以上のプラスチック使用量を削減 ・シンク・ラボラトリー社製の水性デジタルインクジェット印刷技術を採用。従来の油性グラビア印刷と比較して、二酸化炭素排出量の抑制と、揮発性有機化合物を使用しないことによる作業環境の改善・従事者の健康維持への貢献を実現。 |
日本パッケージングコンテスト | 公益社団法人日本包装技術協会主催。毎年開催で、2025年で47回目。時代と社会の要請に対応した、生活文化に優れたパッケージ及びその技術開発に資することを目的としている。 |
王子HDは紙素材の提供だけでなく、包装機械メーカーとの幅広い協業体制によってワンストップでスピーディーなサービスを提供しているとし、自社の提案事例などの参照を呼び掛けています。
2.日本紙パルプ商事 「2025沖縄パック」に出展 |
日本紙パルプ商事は8月27日、「2025沖縄(うちなー)パック」に出展すると発表しました。
「2025沖縄パック」は9月10~12日に沖縄コンベンションセンターで開催、沖縄の多様な分野の発展に寄与してきた包装産業における最新情報とソリューションを発信する展示会とのこと。同社はブースにて、減プラ・脱プラを実現するパッケージ製品を中心とした各種環境貢献型商材の展示を行う予定とのことで、是非ご来場をと呼び掛けています。
【その他の市況/状況】
1.王子ネピア 生産工場を集約 |
王子ホールディングスは9月4日、家庭紙生産の王子ネピア4工場のうち、江戸川工場、苫小牧工場を停止、閉鎖し、名古屋工場、徳島工場などに集約すると発表しました。競争力強化のためとしており、江戸川工場は8月に生産を停止、苫小牧工場は2026年3月に生産を停止し、閉鎖するとのこと。同社は5月に発表した「中期経営計画2027」において、既存事業の収益力強化、低収益事業の構造改革、有望事業への投資集中による事業ポートフォリオ転換を通じて、将来の進化に向けた強固な収益基盤の構築を進め、企業価値の向上を図っていくとしており、今回の家庭紙生産体制再構築はこの戦略に基づくものであると説明しています。
2.王子HD オーストリアのバイオリファイナリー企業を買収 |
王子ホールディングスは9月4日、オーストリアのバイオリファイナリー企業オーストロセル社の全株式を取得する株式譲渡契約を締結したと発表しました。オーストロセル社は
・さまざまなバイオ化学品に使用される特殊な溶解パルプを製造
・溶解パルプ製造の副産物である次世代バイオエタノールの商業販売を2021年より開始しているパイオニア
・2024年に溶解パルプ生産の副産物であるリグニンを活用し、生分解性があり、灌漑を大幅に削減できる土壌保水材を開発
と、高いコスト競争力と顧客基盤を活かした開発力により、多岐にわたる新規製品群への参入を実現している、欧州で最も先進的なバイオリファイナリー企業のひとつとのことで、王子HDはこの買収が、事業ポートフォリオの転換を加速させ、木質バイオマスビジネスの中核化を図るとする「中期経営計画2027」に沿ったものであると説明しています。
3.レンゴー 「ビスコパール」を陸上養殖の水質浄化向けに販売 |
レンゴーは9月5日、同社が開発・販売する、木材パルプが原料の生分解性をもつ粒状セルロース粒子「ビスコパール」が陸上養殖の水質浄化材向けに採用されたと発表しました。同日の日本経済新聞の記事によれば、ビスコパールを用い、IMTエンジニアリングと共同で3か月間の水質浄化実験を行ったところ、ビスコパールを設置した水槽で対象群と比べ硝酸濃度が最大84%低下したとのこと。閉鎖循環式陸上養殖では現在、アンモニアを除去する過程で生成される硝酸を取り除くため、水を入れ替えたり硝酸を取り除いたりするための設備を導入しているとのことで、特別な設備投資が必要ないと見通されるビスコパールの導入で、水替えのコストや手間が減ることが期待されると記事では伝えられています。
【ESG、SDGs等関連】
1.王子HD ホテル京阪の紙容器をリサイクル |
王子ホールディングスは9月2日、京阪ホールディングス、ホテル京阪と共同で、ホテル京阪の客室で使用されたアルミ付き紙容器のリサイクルを開始すると発表しました。王子グループの旭進紙業が2025年8月中旬より大阪府内のホテル京阪5店舗でアルミ付き紙容器の本格回収を開始、王子グループ協力工場にてトイレットペーパーに再製品化してそれをホテル京阪で活用することでサーキュラーエコノミーの推進に貢献する仕組みとなるとのこと。この取り組みで年間約23トンの廃棄物削減、年間約27.6トンの二酸化炭素排出削減効果が見込まれるとのことで、王子HDはホテル京阪の全国の各店舗への仕組み導入拡大の検討を進め、持続可能な社会の構築に向けた取り組みを一層強化していくとしています。
2.王子HD リサイクルの取り組みを象徴する新ブランド『Renewa(リニューワ)』を始動 |
王子ホールディングスは9月5日、従来の紙のリサイクルからさらに一歩踏み込んだ資源循環の取り組みとして、難処理古紙のマテリアルリサイクルなどを含む同社のさまざまなリサイクルの取り組みを象徴する新ブランド『Renewa(リニューワ)』を新たに策定したと発表しました。日本では紙のリサイクルが社会に浸透している一方、一般の設備ではマテリアルリサイクルが難しい難処理古紙が焼却されサーマルリサイクルにとどまっている現状があるとのこと。同社はこうした難処理古紙についてもマテリアルリサイクルの可能性を広げるなど、既存の高い古紙回収・利用率をベースにさらに一歩踏み込んだ資源循環の実現に挑戦すると表明しており、新ブランド『Renewa』の理念に賛同頂ける企業・団体の皆様と連携を深めながら、低炭素・循環型社会の実現に向けて資源循環の『輪』をさらに広げていきたいとしています。
3.日本製紙クレシア 「#deleteC大作戦」に参画 |
日本製紙クレシアは8月29日、認定NPO法人deleteC(デリートシー)の「みんなの力で、がんを治せる病気にする」の趣旨に賛同し、昨年に引き続き「deleteC大作戦」に参画すると発表しました。同社サイトの発表によると、
deleteC大作戦 | 毎年9月のがん征圧月間に、全国で投稿や買い物、歩く、学びといったカジュアルソーシャルアクション(CSA)に結び付けた活動で、がん治療研究を寄付と啓発で応援する取り組み。2019年に設立された認定NPO法人deleteCが、プロジェクトに参加する企業・団体と市民ががん治療研究の応援に参加できる仕組みのひとつとして展開。 |
参加方法 | ①クレシアの商品やロゴに関連する「C」の部分を消した画像や動画を、想いとともに「#deleteC 大作戦」と「#クレシア」を付けてXかInstagramで投稿すると、クレシアから1投稿当たり100円がdeleteCに寄付される。 ②クレシアの公式アカウントが発信する deleteC 大作戦に関する画像や動画を「リポスト」「いいね」「再生」をすると、1リポスト/1いいね/1再生あたり10円がクレシアからdeleteCに寄付される。 ※寄付額には上限があります。 |
期間 | 2025年9月1日20:00~2025年9月30日23:59 |
同社はお客様のSNS投稿や拡散ががん治療研究の応援につながるとして、CRECIAやSCOTTIEの”C”を消してご参加を、と呼び掛けています。
4.大王製紙 異業種2社と共同輸送の取り組み |
大王製紙は9月4日、YKKAP、北陸コカ・コーラボトリングとともに、8月から、異業種3社による共同輸送の取り組みを開始したと発表しました。大王製紙の物流グループ会社であるダイオーロジスティクスが各社の輸送を一括で行い、これまで別々に大型トラックを走らせていた各社の輸送拠点を1台でつなぐことで実車率(貨物を積んで走行する距離)を向上させ、年間71.6トンの二酸化炭素排出量削減、年間1,992時間のトラックドライバー運転時間の削減を見込んでいるとのこと。3社は今後も社会課題を解決する物流効率化を進め、持続可能な物流の実現を目指すとしています。
【印刷、製品、その他関連】
1.日本製紙 和紙糸を使った安全靴専用靴下を開発 |
日本製紙は9月1日、富山県高岡市に本拠を置く靴下メーカー大手・助野と協力して、日本製紙開発の高機能和紙糸「Cu‐TOP🄬アオ」を使った安全靴専用靴下を開発したと発表しました。同社サイトの発表によると、
「Cu‐TOP🄬アオ」 | 日本製紙が開発した高機能和紙糸。銅イオンの効果で、抗菌・消臭・抗ウイルス性能を持つ。日本製紙石巻工場で材料を製造。 入浴が難しい入院患者用の靴下などでの採用実績はあったが、工場で安全靴を履くという過酷な環境に耐えられる製品での採用は今回が初めて。 |
開発の背景 | 助野と日本製紙石巻工場が協同で開発を進めるなか、実際に工場で安全靴を履いて作業している従業員の 「高温多湿の環境で安全靴を使用する際の『ムレ』『ニオイ』『耐久性』が大きな悩み」 との声を受けて対策・改善を実施。 |
対策 | ①ムレ 和紙糸が元来有する吸水・速乾性が有効。アンケートで70%以上の従業員が改善を実感。 ②ニオイ 「Cu‐TOP🄬アオ」の特長の抗菌・消臭機能が解決。75%以上の従業員が軽減を感じる。 ③耐久性 耐久性のある繊維を同時に編み込むことで向上させ、穴が開きにくくなったとの意見も。 |
今後の展開 | 過酷な環境を想定した開発で得た、高い耐久性、ムレやニオイを抑えられるという特徴を活かし、 ・災害時に避難所で使える靴下やインナーウェアなどの防災グッズの開発 ・医療、介護、スポーツ分野などでの商品展開 を検討。 |
この安全靴専用靴下は9月10~12日にインテックス大阪にて開催される「緑十字展2025」の助野のブースで展示予定で、生産体制を整えたうえで2026年春ごろの販売を目指すと同社は表明しています。
2.大王製紙『エリプラシリーズ』で「えひめが誇るスゴ技」認定 |
大王製紙は8月29日、環境配慮の紙製品ブランド『エリプラシリーズ』において、高い技術力や優れた製品を持つ「ものづくり企業」として、愛媛県の「えひめが誇るスゴ技」に認定されたと発表しました。同社サイトの発表によると、
えひめが誇るスゴ技 | 愛媛県のものづくり企業の知名度向上と取引促進を図るため、高い技術力や優れた製品を持つ「ものづくり企業」を『スゴ技企業』として認定し、紹介する、愛媛県運営のデータベース。 |
エリプラシリーズ | 高密度で剛性のある紙や、耐水・耐油・防湿など様々な機能を付与した紙でプラスチックを代替することで、脱プラ・減プラに貢献し、環境負荷を和らげることを目的とした同社の紙製品シリーズ。ミニハンガーやマドラー、防湿包装紙などをラインアップとして展開し、プラスチックやフィルムの代替としての活用法を提案している。 |
同社は今後も環境にやさしい製品を展開することで持続可能な社会の実現に貢献していくとしています。
※文中敬称略
※文章は2025年9月8日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。