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華陽ニュース

不定期配信 江戸ネタ 33

今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。

33 「耳袋」

 『よしの冊子』と同じ頃、やはり市井に流布する様々な噂話などを書き留めた書物に『耳袋』があります。新米役人から地道に昇進を重ねて63歳の時に町奉行にまで出世した根岸鎮衛という人が、来訪者などから聞いた話を書き留めたもので、江戸中期に巷でどのような話が流行っていたかを知ることができる作品として知られているとか。叩き上げの苦労人だったせいか、この根岸さん、上にも庶民にも評判が良かったらしく、民事裁判担当だった勘定奉行の時代には、地方から裁判のために上京してきたお百姓さんに対して裁判所公認旅館の主人が「来月は根岸様の担当だから、その時に出直してきた方が裁判が早く済むよ」とアドバイスした(長逗留してもらった方が旅館はもうかるのに)なんて話が、『よしの冊子』に残されています。『耳袋』には怪談奇譚の類も多く、資料と言うにはちょっと・・・という扱いをされることもあるそうですが、そういう話も排除せず書き留める懐の深さが、町奉行を17年間も勤め上げた所以なのかもしれません。