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華陽ニュース
不定期配信 江戸の紙や本や出版や 2
令和と明和。似た響きの元号の大火のシーンから始まった「べらぼう」ですが、次の場面では一転、蔦重が持ち込む貸本に女性たちが群がる、本好きが見る夢のようなシーンが展開されます。その続きには、病と飢えに苦しむ女性が、せっかく届けてもらったお弁当よりも朗読を早くとせがむシーン。声色を変えて読み分ける蔦重をみながら、「あれ、何の本?」とお調べになった方もいらしたのではないでしょうか。
2 「談義本」
本は平賀源内著・画で1763年に出版された『根南志具佐』。歌舞伎役者の水死事件という実話を題材に、役者絵をみて名女形に恋をした閻魔大王が彼を地獄に連れてくるよう竜王に命じて・・・という奇想天外な筋立てのお話ですが、その裏には政治や社会への批判が隠れているという、「談義本」というジャンルの本でした。
笑える筋立てに皮肉や風刺、教訓を隠した「談義本」は「半紙本」、縦約24センチX横約33センチの「半紙」を半分に折ったサイズで出版されるのが常で、この時代、本のサイズと内容は連動していたようです。現代でも新書と文庫ではサイズも内容もすみ分けがされている場合がある、というのに近いかもしれません(そればかりではありませんが)。
ちなみに江戸時代は『源氏物語』も盛んに出版された時代ですが、『根南志具佐』の序文には(皮肉な文章ではありますが)「紫式部にはかなわないけど人情について記すくらいならできそうなので」と執筆の動機が書かれているそうです。「光る君へ」から「べらぼう」へのバトンタッチが「談義本」に隠されている、という見方は「うがち」が過ぎる、というものでしょうか。