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華陽ニュース
不定期配信 江戸ネタ 1
今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。
1 「板木」
日本に木版印刷が伝来したのは6~7世紀ごろ。中国から朝鮮半島を介して製紙技術などと一緒に伝来したものとの説があり、770年につくられた『百万塔陀羅尼経』は世界最古の印刷物のひとつと考えられています。
蔦屋重三郎が生きた時代を含む「宝暦・天明文化」の時代も、販売を目的とした出版の手段の中心は木版印刷でした。活字を用いる活版印刷は既に伝来していましたが、再版の度に活字を組みなおす必要からか大量印刷には向かなかったようで、文字や絵を紙に描いて「板木」と呼ばれる木に移し、印刷する部分だけを残して彫る=製版を使った印刷が、多部数を何度も摺りたい書物では主流となっています。
この「板木」、印刷のための「物」としての価値だけでなく、その作品を出版する「出版権」も有しているものでした。同業者組合で板木=出版権を所有していることを証明する記録を取っていたり、板木を売買することで出版権も譲渡可能だったりと、重要な役割を担っていましたが、一方でいらなくなった板木は削られて別の作品のために使われたり、薪として燃やされてしまったりといったこともあったようです。