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不定期配信 江戸ネタ 3

今年の大河ドラマ「べらぼう」の舞台、江戸。文化の担い手が特権階級から町民へと広がり、政治に与える経済の影響が拡大するこの時代には、様々な文化や風習が新しく生まれ、現代へとつながっているものもあります。
江戸時代の出版や紙、風習や様々な出来事などについて、小ネタをご紹介致します。

3 「下り本と地本」

 江戸の初期には食物にしても文化にしても良いものは上方=京都や大阪からくるもの、というのが常識で、「下り酒」「下り醤油」と同じく「下り本」=上方で出版された本の流通や販売を担うのが、江戸の本問屋さんの主な役割でした。本屋さん自体も上方資本や、上方本店の支店が多く、大河に登場する鶴屋喜右衛門も、もとは京都の本問屋さんの江戸支店です。これらの問屋さんは「書物問屋」と呼ばれ、扱っている本は仏教書や学術書、名鑑など固い内容のものがほとんどでした。
 江戸の人口が増え、経済が発展するにつれ、江戸の庶民向けの読み物や浮世絵などの需要が高まり、書物と比べ比較的軽い内容の出版物が増加します。これらの出版物は地元のものという意味で「地本」と呼ばれ、「地本」を扱う問屋さんは「地本問屋」と呼ばれるようになります。「書物問屋」と「地本問屋」はともに板木を所有する「版元」を兼ねるようになりますが、先ほどの鶴屋喜右衛門は「書物問屋」の江戸支店として出発し、後に独立して江戸の「地本問屋」となり、やがては錦絵を売る様子が江戸名所として描かれるほどの版元となっていくのでした。