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華陽ニュース
不定期配信 マウスちゃんとメモリ主任のIT1年生59
情報の重要性が増す昨今、弊社では情報セキュリティについて、その意義や情報を共有する取り組みを続けています。
担当チームが社内向けにまとめた資料などを基に、軽い読み物を不定期でお届けできればと思いますので、ご笑覧頂ければ幸いでございます。
ある日、いつも通りに営業先から帰ってきたイーさん。マウスちゃんは顔をじっと見て尋ねます。
「何かありましたね、イーさん。」
「断定・・・どうしてそう思うの?」
「首がちょっと左に傾いています。イーさんの首が左に傾いてるのは、何か納得いかないことがあったときです。」
「こわっ!自分でも気づいてない癖、見抜かれてるとか!・・・ああ、でも、それくらい分かりやすい合図があると良いのに・・・」
肩を落としたイーさん、苦笑して話し始めます。
「大した話じゃないんだけど・・・お客様に見積もりを出したんだけど、高すぎるって言われて。いろいろ交渉したんだけど納得されなくて、結局ちょっと製品スペックを落として価格を下げてOKを頂いたんだよね。」
「交渉成立したなら良かったじゃないですか。」
「そうなんだけど・・・お客さまの環境だと、最初に出した案がベストな筈なんだ。それを説明したんだけど、説明が納得いかないっていうより、僕の言葉が信用できないって感じで・・・」
イーさん、さらに肩を落とします。
「まだ担当して間もないお客様だし、信頼なんて一朝一夕で築かれるわけじゃないってわかってても、信頼感を理由に自信のある提案を却下されるのは気が滅入るよ。いっそのことゲージで表示されると良いのにって思う。この人の信頼度はこの程度ですよって。」
客観的に数字でも出てるならあきらめもつくのに。そう言って笑うイーさんの腕を、「行きましょう!」とマウスちゃんが引っ張ります。
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「それで私のところに連れてきたと。」
「はい。メモリ主任なら信頼感について何かアドバイス頂けるんじゃないかと思って。」
意気込んだマウスちゃんと恐縮するイーさんを前に、メモリ主任は切り出します。
「信頼感ですか・・・私に思いつくのは、システムの信頼性指標のことくらいでしょうか。」
「信頼性指標、ですか?」
「以前にマウスさんに『MTTR』の話をしたことがあると思うのですが。」
「『平均復旧時間』ですね。サイバー攻撃に遭った時にシステムを復旧させるのにかかる時間の平均値のことです。」
「そうですね。ただ、あの指標は、もともとは単純に故障したシステムの復旧にかかる時間の平均を表したものだったのです。」
「えっと、部品が壊れてシステムが稼働しなくなったとか、そういった故障ですか?」
「はい。『MTBF』、『平均故障間隔』という指標があって、それと組み合わせて稼働率を計算するのです。」
「平均故障間隔?」
「あるシステムが復旧してから次に故障するまでの時間の平均値ですね。単純に、MTBFが30日で、MTTRを1日としましょうか。」
「えっと、そのシステムは30日間連続して働くと故障する、復旧に1日かかる、ということですね。」
「そういうことです。すると、そのシステムは働いている30日と復旧にかかる1日を足した31日の間に30日間稼働していることになります。システムの稼働率は?」
「31日のうち30日稼働しているわけですから、30/31で96.8%くらいです。」
「そうですね。ちなみに『故障率』という指標もあります。2つ意味があって、ひとつは稼働率の逆。先ほどの例で言うと稼働率が96.8%ですから故障率は3.2%ということになります。不稼働率とも言いますね。もうひとつは、単位時間内にどの程度の確率で故障するかを故障率という場合です。先ほどの例で言うと、30日に1回故障するので、こちらの故障率は1/30、3.3%ほどということになります。こういった稼働率や故障率をシステムの信頼性指標というのですよ。」
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「えっと・・・そうすると、やっぱり信頼性っていうのは数字でちゃんと表した方が良いということに・・・」
恐る恐る口に出すイーさんに、メモリ主任はかぶりを振ります。
「信頼性指標というのは数字を出してそれで終わりというわけではありません。その数字で実用に耐えるか、実用に耐えるように信頼性を上げるためにはどうすればよいのか、ということを考えるための指標なのです。」
「あ、そうか。重要インフラのシステムが30日に1回故障して、復旧するのに1日かかるからって、このシステムはこういうシステムなんだから故障するのは当たり前です、復旧まで1日待って下さい、っていうわけにはいかないですもんね。」
「マウスさんの指摘の通りですね。どうすれば良いと思いますか?」
「えっと・・・単純なのは、もう一つ同じシステムを並列で用意しておくことでしょうか?そうすれば一方が故障してももう一つは稼働しているからシステム全体が止まることにはならないですよね。」
「そういう方法もありますね。イーさんはどう思われますか?」
「僕なら故障した部品自体を見直します。どんな環境でどんな風に故障するのかデータを取って分析して、故障原因を排除することで故障率を下げようとすると思います。」
「そうですね。お二人が今即座に思いついた以外にも信頼性を上げる方法はあると思います。それと同じではありませんか?」
「え?」
「イーさんは今日お客様とお話しして、信頼感が足りないから提案を聞いて頂けないのだと感じた。システムの信頼性指標を分析したら今のスペックでは不足だと分かったのと同じ状態ですね。では、その先は?」
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「信頼性を上げるための対策を打つこと、です。さっきマウスさんが言ってくれたみたいに、最初から複数案を用意しておいて比較して頂くとか、お客様が信頼している上司や前の担当に同行を頼んで提案を聞いて頂ける雰囲気をつくるとか。」
「それも大切な方法ですが、イーさんが先ほど仰った点も大切ですよ。」
「え?」
「故障の原因を特定して取り除くことです。そもそもお客様はイーさんのどこを不安に思うから信頼なさっていないのでしょう?商品知識?提案方法?確認しなければならない点はいくつもあるのではないでしょうか?」
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やることはたくさんあるってことですね。そう言って元気に営業部に戻っていくイーさんの背中を見ながら、メモリ主任がマウスちゃんににっこり笑いかけます。
「目的達成、という顔ですね。」
「え?」
「本当は話の中身は何でも良かったのではないですか?ただ、イーさんを営業部から一時連れ出して、気分転換させてあげたかっただけなのでは?」
「えーっと・・・」
目を反らすマウスちゃんにメモリ主任の笑みが深くなります。
「悪気はないということで今回は大目に見ますが、次回からは休憩時間などにして頂けると助かります。」
私の稼働率が下がってしまいますので、というメモリ主任の言葉に、私たちと話す時間は故障復旧時間ってことですか、とか、やっぱりメモリ主任ってシステムなんですか、とか、いろいろ言いたいことはあるマウスちゃんですが、迫力ある微笑を前に、小さな声で、はい・・・と返事をするのが精一杯なのでした。