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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話66 紙パッケージと水分
「あ!・・・あー、やっちゃった・・・・・・」
「どうされたのですか、シート先輩?」
「うっかり冷たい飲み物を置いておいたら、書類に結露が・・・」
「夏のあるあるですね。大丈夫ですか?」
「うん、有難う、大丈夫。常務に呼ばれて慌ててよく見ずに置いちゃったから・・・」
「紙パックの底の形の染みができてしまっていますね。」
「飲料用の紙パックって、水分が入れられるので、耐水ということですよね?それに、そもそも紙には吸水性があるわけですから、結露するのが不思議な気がします。」
「うーん、どこから説明して良いか困るけど・・・まず、液体用紙容器の表面は紙そのものじゃないよ。」
「そうなのですか?」
「牛乳パックみたいに低温流通が基本の液体紙容器は、一般的には「ポリエチレン」+「紙」+「ポリエチレン」の三層構造なんだ。ちなみに常温流通するものはこれにアルミ箔やポリエステルを加えて5~6層構造にして酸素や光線を遮断し、さらに無菌充填といった技術で長期保存を可能にしているわけだけど。いずれにしても、紙パックに液体が入れられるのは、紙が直接液体と接触することをコーティングで防いで耐水性を持たせているからなんだ。表面について言えば、こちらはさらに印刷もされるわけだし、紙が空気中の水蒸気に直接触れる状態、というわけじゃない。」
「冷たい飲料入りのペットボトルが結露するのと変わらないということですね。」
「それに紙だって結露しないとは言い切れないよ。紙には水分を吸収・放出する機能があるけど、湿度と寒暖差が限度を超えれば結露する可能性はある。まあ、結露するより、水分を吸収したり放出したりすることで変形することの方がはるかに多いわけだけど。」
「水分による変形を防ぐために防湿紙で包装するのですよね。防湿紙にもポリエチレンが使われているのですか?」
「パッケージに使われるのは紙とポリエチレンの二層構造のものが多いかな。他の素材との組み合わせとか、ワックスを含侵して防湿性を高めたものもあるよ。あと、ポリエチレンラミネートの防湿紙はリサイクルしにくいからというので、顔料のコーティングでリサイクルを可能にした防湿紙もあるね。」
「コーティングでバリア性を高める、というと、『紙製バリア包材』と呼ばれるものを思い出します。」
「最近増えたパッケージ用紙だね。紙にバリア性がある素材を塗工して、酸素や水蒸気、香気のバリア性を高め、内容物を保護しながら環境性能を向上させる。」
「王子HDの『シルビオ』シリーズ、日本製紙の『シールドプラス』などですね。」
「北越の『パンセ』や三菱の『バリコート』もその仲間だね。」
「バリア紙ではないですけれど、紙素材でプラスチックに置き換えるという意味では、大王製紙の『エリプラ』シリーズも見逃せないですよね。」
「食品のパッケージというと、テイクアウト用には耐水耐油紙が使われていますね。」
「表層に耐油性を持たせて、芯材に耐水性を持たせるといった方法で、耐水耐油を実現している紙だね。あと、パッケージの構造に吸水ポリマーを組み込んでいるものもあるよ。もちろん、食品の安全を考慮した構造になっているんだけど、そういう構造にすることで、食品の水分量を調整しつつ、パッケージが充分な硬さを保てるように設計されているんだ。」
「水分のある食品のパッケージなら『シクラパック』も外せません。魚箱に仕える紙パッケージなんて、なかなかないのではないでしょうか。」
「なんかいろいろ話がずれたけど、つまりは紙パッケージの吸水性や耐水性、防湿性と、結露するかどうかはまた別の話だよ、ということが言いたかったんだ。」
「分かりました。要は、机に物を不注意に置いてはいけない、ということですね。」
「う・・・」
「それとも、そもそも書類やパソコンがあるデスク近辺に飲み物を持ち込まない方が良い、ということでしょうか?」
「・・・」
「休憩スペースがあるのだから、何か飲みたいときはそちらに移動しなさい、ということかも?」
「・・・・・・ごめんなさい」