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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話68 段ボールの進化

「おはよう、コマキさん。何だか楽しそう?」
「おはようございます、シート先輩。実は昨日、お菓子をもらったんです。先輩にもひとつお裾分けしますね。」
「有難う。お菓子もだけど、箱のデザインも素敵だね。」
「綺麗ですよね。実はこれ、段ボールなんですよ。」
「段ボールの美粧印刷って外装箱のイメージがあったんだけど、内箱でも素敵なのがあるんだね。」

「最初は段ボールって、帽子の中敷きだったのですよね?」
「そうだよ。1856年にイギリスで、シルクハットの内側に巻くために開発された製品だったんだって。段ボールに段があるのは、通気性とクッション性を持たせるためだったって話。」
「今のようにパッケージ用ではなかったのですね。」
「パッケージ用に進化したのはアメリカでなんだ。1871年ごろのアメリカで、今の用語で言うとフルートでランプのホヤを巻いたのが最初だったって話があるよ。フルートだけだと段が伸びちゃうからって片面に紙を貼り付けた『片面段ボール』が開発されたのが1874年、その後、両面段ボールや段ボール箱、段ボール製造の機械が開発されて、1800年代の終わりごろにはもう、今の段ボール箱の原型が出来上がってたんだって。」
「日本に入ってきたのはその後ですか?」
「1900年代初めにはもう輸入されてて、電球を包むのに使われていたみたいだね。それを見て、井上貞次郎さんっていう方が、オリジナルの段ボール製造機を開発したのが1909年。ちなみに『段ボール』っていう名前を考えたのも井上貞次郎さんなんだよ。」
「レンゴーの創業者の方ですね。」
「そう。でも、段ボール箱が日本で本格的にパッケージとして使われ出したのは第二次世界大戦後のことだって話だよ。それ以前は、一部切り替えの動きはあっても、やっぱり外装箱の中心は木箱だったんだけど、戦後にアメリカのパッケージの中心は段ボールだってことが伝わったり、1950年代に政府が木材資源保護を理由に木箱から段ボール箱への切り替えを進めたりしたことがあって、急激に段ボールが生活に浸透して、そうなるとさらに製造技術も進歩して、最後まで木箱が優勢だった青果物でも段ボール箱が使われるようになったんだって。」

「その後も段ボールは進化し続けたのですね。」
「そうだね。方向性としては『美しさ』『機能』、それから『環境性能』の追求かな。段ボールにデザイン性や訴求性を加える『美粧段ボール』や、耐水性を持たせる『耐水ダンボール』は1950~60年代ごろからつくられ始めている。省資源とコストの問題から形状の工夫や軽量化が始まったのも同じ頃。インキや糊、製造機械についても進化を続けて今に至っている感じだね。」
「各社から出ている、段ボール関連の技術やサービスにはどのようなものがありますか?」
「ごく一部でしかないけど、こんな感じかな。」

コルフレックス
(レンゴー)
原紙の段階でフレキソ輪転印刷することで、段ボールの多色印刷を可能にしたレンゴーの技術。1970年代に開発され、通常印刷よりディスプレイ効果を向上させると同時に大量生産・陳列に対応。
デジパケ
(レンゴー)
原紙に印刷データをインクジェットでプレプリント・デジタル印刷するレンゴーの技術。高い印刷再現性により美粧性が向上、デジタル印刷であるため多様なデザイン展開やユニークコードの印刷が可能で、特大サイズの印刷にも対応している。
ノンステープル段ボール
(レンゴー)
封緘時に金属針を使用しないため、中身を傷つける心配がなく、リサイクルにも適した、環境にやさしい段ボール。
RAFEP(ラフェップ)
(レンゴー)
表面に粘土層のある白板紙を使用し、防炎薬液による加工を施すことで、容易に着火せず、燃え広がらない段ボール。レンゴーは災害用間仕切りや展示用パネルとしての使用を提案。
防水ライナ
(日本東海IP)
日本東海インダストリアルペーパーサプライが2021年3月に開発した、防水性、防湿性、耐油性を有する多機能段ボール原紙。紙製だが水が漏れず、氷詰めも可能。同年9月、ニッスイが量販店向け鮮魚輸送用パッケージの一部に採用。
アーカイバルボード
(特種東海)
弱アルカリ性で資料や作品を保護する段ボール。一般の段ボールの2~3倍の強度がある。この段ボールを原紙に使用した保存箱なども同社で製品として販売。
ファインフルート
(竹尾)
ライナーとフルートに同社のファインペーパーを使用した段ボール。色を組み合わせたり、中のフルートが見えるデザインにするなどして、デザイン性の高いパッケージを製作できる。

「他にも、防虫機能があったり、重量物OKだったり、各社がいろいろな機能を持った段ボール製品を提供しているよ。」

「段ボールって水平リサイクルが当然で環境性能が高い半面、機能とか美しさとかはあまり問われないイメージがあったのですが、そんなことはないのですね。」
「ひとつの長所で満足しないで、どんどん進化を続けてきた結果だよね。見習わないと。」
「私もです。今年も残り少ないですが、何か新しいことが出来るようになりたいですね。」
「来年の冬季五輪に向けて、イタリア語でも勉強してみる?」
「イタリアといえばファブリアーノですし、透かしの技術を身に着けてみるとか?」
「え、でも、透かしの技術を身に着けてつくるものといったら・・・おさ」
「駄目ですよ。」