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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話70 パッケージで『守る』こと

「おはよう、コマキさん。今日は寒いね。」
「おはようございます、シート先輩。年末らしくなってきましたね。」
「年末かあ。1年あっという間だったなあ。」
「毎年そんな会話をしていますね、私たち。良い1年でしたか?」
「どうだろう。頑張ってはきたつもりだけど、評価するのは自分じゃないしね。」
「商品が品質基準を満たしているかどうか、みたいには、人の1年って評価できませんしね。」

「商品か。確かに最低限の品質基準は法令や業界の決め事その他で決まっているし、それを満たしていることは最低限の条件だけど、商品の良さとか選ばれやすさを決めるのはそれだけじゃないしね。そういう意味では人と同じかも。」
「というと?」
「例えば、パッケージで言うと、『過剰包装はやめましょう』っていうのは、各自治体の条例等で決まっている。」
「そうなんですか?」
「岐阜県には『岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例』っていうのがあるんだけど、第8条で『事業者は、(中略)容器及び包装の過剰な使用の抑制(中略)等により、廃棄物の減量及び資源の有効活用に努めなければならない。』って決められているし、第6条と第7条で県民や事業者に『簡易な包装を用いた製品を選択することで廃棄物の減量と資源の有効活用に努めなさい』って決められている。」
「つくる側にも使う側にも過剰包装の抑制を求めているわけですね。」
「県単位だけじゃなくて、例えば岐阜市にも『岐阜市廃棄物の処理及び清掃に関する条例』っていうのがあって、これの第4条の2の4には『事業者は、(中略)過剰包装の自粛、容器の簡素化等を図らなければならない。』って明記されているし、各務原市には『各務原市の良好な環境の保全および創出に関する基本条例』っていうのがあるんだけど、それを周知しているサイトのページで、市民の責務のひとつとして『買い物をするときは、過剰包装を断りましょう』って呼び掛けているんだ。」
「市町村単位でも決まっているのですね。でも、それだけ読むと、パッケージって悪者扱い?ですか?」
「そう思うでしょ?でも、一方で、岐阜県には『岐阜県消費生活条例』っていうのがあって、その第12条が『包装の適正化』っていう条項なんだけど、それには『消費者が内容を誤認することが無いよう、消費者に危害を及ぼすことが無いよう、事業者は包装の適正化と包装の安全性の確保に努めなければならない』っていうことが記されている。」
「つまり、パッケージの『中身を守る』とか『中身を知らせる』っていう機能は十分発揮させつつ、でも環境負荷を抑えるために、使用は最低限でね、ということでしょうか?」
「そういうこと。で、自治体とか業界団体で、これを超えたら過剰だよね、っていう基準が定められている。容積率とか、包装にかかる経費の比率とか。でも、この基準を満たしている2つの商品があったとして、どちらを選ぶかというと。」
「そこにパッケージ制作者の腕の見せ所があるというわけですね。決められた基準内でいかに選ばれるパッケージをつくるか。」
「そう。商品のアピール力だけじゃなく、最近は、いかにパッケージを開ける人が簡単に作業できるかとか、捨てるときは勿論、運ぶ時もいかに環境にやさしいか、ってことが評価されるポイントになって来てるよね。そういう意味で、商品だって、基準が決まっててもそれだけが評価につながるわけじゃないよって言いたかったんだけど・・・結局、人のアイデアが関わっている部分だから、やっぱり人を評価するのは難しい、って話になるのかな?」

「そう言えば、最近、普段使っている日用品の銘柄を変えたのですけど、その理由がパッケージの変更でした。」
「どういうこと?」
「以前使っていた製品の詰替え用が、パッケージの変更で、開封した跡が残らないものになってしまったのです。日用品ですし、そこまで神経質になる必要はないのかなとも思ったのですが、何となく違和感があって、他の銘柄に変えました。」
「ああ、『タンパーエビデンス』だね。」
「タンパーエビデンス?」
「『タンパー』は『改ざん』のこと。さっきコマキさんが言ったみたいに、開けたら跡が残るパッケージの工夫のことで、食品でよく使われているね。ペットボトルのキャップとか、剥がしたら『開封済み』っていう文字が残るシールとか。プラスチックでできた空洞に商品を入れてアルミ箔で蓋をして、開けたらアルミ箔が破れるっていうパッケージもそのひとつだよ。」
「お菓子とか薬で使われている包装ですね。」
「そう。タンパーエビデンスはミスや悪戯、不正防止の意味合いが強いけど、『チャイルドレジスタンス包装』っていうのもある。」
「子どもには抵抗のある包装、ですか?」
「子どもが簡単には開けられない包装、だね。押しながら回さないと開かない蓋とか、フィルムを剥がさないと押しても中身が出ないとか。幼い子どもたちが薬なんかを誤飲するのを防ぐための、パッケージの工夫だよ。」
 

「そういう工夫を知ると、パッケージの『守る』機能は、『中身を守る』だけじゃなくて、『消費者も守る』なんだなって思うよ。」
「『知らせる』機能もそうですよね。『商品の良さを知らせる』と同時に、原材料や保存方法、消費期限などを『知らせる』ことで『消費者を守る』機能を果たしています。」
「で、最近では、素材の質や使用量を工夫することで『環境を守る』機能も求められている。もう、『パッケージとは』って聞かれたら『守ることです』って言っちゃって良いんじゃないかな。」
「それは大げさですけど、パッケージの機能の多くは守ることにつながっているのですね。紙という素材がその実現を手助けできていると良いのですが。」
「まあ、それを判断するのは世間の皆様だから。」
「話が始めに戻りましたね。『良い1年でしたか?』」
「『どうだろう』・・・じゃあ、コマキさんからみて、僕の1年って、どうだった?」
「・・・どうでしょう?」
「そこは嘘でも、『充実してましたね』って言って欲しかった・・・・・・」