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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 38 退行、耐光、耐候・・・~紙とインキと印刷方法~


【今回のお話】
珍しく元気のないシートくん。初夏の爽やかな風にもぼんやりとした様子ですが・・・
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登場人物御紹介

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シートくん
岐阜の印刷会社で働く、若手営業マン。知識と経験の不足を熱意でカバーすべく、今日も元気に紙修行中。
姪のためにおりがみで鯉のぼりを作成中の、何か間違っている5月。
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ロール先輩
何かと足りないシートくんを優しく導く、工務の先輩社員。
母のためにおりがみでカーネーションを作成中の、節約生活の5月。
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ブック部長
シートくんやロール先輩の仕事ぶりを温かく見守る営業部長。 130507_palet
パレットちゃん
いつも優しくて可愛い総務の先輩・・・?

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いつになくぼんやりとした様子のシートくん。「どうしたの?」ロール先輩が声を掛けます。
「何だかだるくて。5月病でしょうか?」「5月病?あれって新入社員さんがなるものなんじゃ?」言われてシートくん、ちょっと気弱に微笑みます。「きっと、年度代わりの忙しい時期が終わって、気が抜けてるんだと思います。駄目ですよね、気合入れないと。」

「今年は統一地方選もあったし、年度代わりが長いように感じたよね。」
「ネットでの選挙運動が解禁になったし、AR付のポスターが増えるかと思ったんですけど、そんなこともなかったですね。QRコードがついてるポスターも少なかったし。」
「解禁になったとは言え禁止事項や制限もあるしね。公職選挙法の第271条とか、書き方も難解だし、慣れるのに時間が掛かりそう。」
「選挙運動って、ネットじゃなくても制限や禁止事項多いですもんね、当然ですけど。事前運動とみなされるものは禁止、配れる葉書もビラもポスターも、サイズとか大きさとか選挙の種類によっては掲示場所とか、細かく法律で決められている。」
「まあ、だからこそ、公的な掲示板のポスターって重要なんだと思うよ。選挙運動期間中、堂々と貼り出してみんなに読んでもらえる。サイズの上限は決められていても中身やデザインは自由だから、伝えたいことをより自分らしく伝えることもできる。」
「パッと見て『この人信頼できそう』って思わせなきゃいけないんだから、見た目は重要ですよね。・・・でも・・・・・」
「でも?」
「たまにですけど、そういう事にあまり気を使っていないんだなあ、っていうポスターを見かけることがあるんですよね・・・」

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「えっと、まず、紙はユポ®が主流ですよね。」
「主流だけど、ユポ®だけってわけでもないよ。屋外に掲示して天候で劣化しにくい、って条件を満たす合成紙は、他のメーカーでもいくつかあるから。」

屋外ポスターに使用される主な合成紙
ユポ® ユポ・コーポレーション(旧・王子油化)の合成紙で、選挙と言えばこれ、というくらい知名度の高い合成紙。ポスター用には、FEB(ウルトラユポ®。ユポ®用インキを使用するが速乾性、印刷再現性に優れる)、FRB(スーパーユポ®。一般インキ使用可能で速乾、印刷再現性優良)の#110、#130、或いはそれらを基材とするユポ®タックなどが使用される。
ザ・ポスター 日本製紙パピリアの『オーパー』シリーズの1種で、ポスター用に特化した製品。中央の紙層の表裏を樹脂層で覆い、更に片面にだけコート層(グロス・マット)が設けられている。このコート層のおかげで、一般インキが使用でき、印刷再現性も高い。
ピーチコート 日清紡ペーパープロダクツの合成紙。樹脂層の両面に独自のコート面を設けており、樹脂とコートの組み合わせで様々な用途・プリンターに適した品種を用意している。ポスター用には印刷再現性と加工適性の高いインクジェット用のVSIPが勧められている。
クリスパーコート 東洋紡績の合成紙『クリスパー』に、北越紀州製紙が、GWの場合は両面、GVの場合は片面に、コーティングを施した製品。一般インキが使用でき、印刷再現性、加工適性、乾燥性なども優れている。

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「次にインキ。合成紙用インキを使うか、指定の一般インキを使うかっていう違いも勿論だけど、耐光性も重要なの。」
「藍や墨は化合物の結合が強くて紫外線にも破壊されないけど、黄や紅は結合が弱くて破壊されやすい、っていうのですね。」
「そう。4色刷る時に基本K⇒C⇒M⇒Yの順で刷るのと同じ理由だね。黄(Y)や紅(M)には耐光インキがあるから、それを使う方が色あせしない。ただ・・・」
「ただ?」
「選挙運動期間って大体1~2週間でしょ?特に地方選だと短期決戦だから、そこまで要求されないかも、っていう気もするんだよね。」

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「僕が見たポスター、印刷が剥落してたんです。それが丁度、候補者の方の顔の真ん中で・・・小学校の近くの掲示板だったんで、子供のいたずらかな、とも思ったんですけど、何だか悲しかったんですよね。」
「うーん、何とも言えないけど・・・どの合成紙でも必ず注意書きにあるのが『湿し水を極力絞ること』なんだよね。合成紙は耐水性が売り、つまり吸水しないってことだから、普通の紙なら問題ないレベルの湿し水でもインキの乳化が起こって、印刷面が汚れたり、セットしなかったり、乾燥しなかったりする。他にもユポ・コーポレーションさんが技術資料で公開されている、乾燥不良や乾燥遅延が起こる原因・対策によると・・・」

原因 ・インキの過度の乳化
・古いインキの使用
・印刷室や乾燥場所の室温の低さ
対策 ・新しいインキを使う
・湿し水を極力絞る
・適切な乾燥促進剤を添加すると効果的な場合もある
・インキの盛り過ぎに注意
・乾燥場所の温度を25~30度に保つ

(ユポ・コーポレーション様公開の技術資料より華陽紙業にて抜粋・編集)
「でも、これってあくまで、紙が合成紙、印刷はオフセット印刷で、適切なインキを使っていたのに乾燥不良が起こっていた場合の対処だからなあ。紙とインキと印刷方法の組み合わせによって原因は違うし、シートくんが見た印刷の剥落がそのせいかどうかは分からないよ。」
「例えば?」
「例えば、UV印刷の場合のインキの量や色による硬化不良だとか、耐水着肉性の低いインキの使用で紙とインキの間に水分が入り込んじゃって剥落を起こすとか・・・」
「そう言えば、ユポ®って結露するんですよね。」
「普通の紙でも結露状態にはなるよ。それで紙通しのくっつきが生じて給紙不良になったりする。ユポ®の場合も同じで、給紙不良になったりインキ転移不良になったりするから、紙の場合と同じく、最低でも24時間前には包装のまま印刷室に搬入して、印刷室と同じ温度にして下さいって注意喚起されてるね。」

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「合成紙って色々ありますけど、それぞれ特徴があったりするんですか?」
「大きな違いが一つあるよ。実はそれにも印刷方法が絡んでいて・・・って、シートくん?なんだか、顔、赤くない?」
「・・・それって、熱があるんじゃないの?」
通りすがりのパレットちゃんの指摘に慌てるロール先輩と、
「そうか・・・熱があるからだるいんだ・・・・・・・」
と納得するシートくん。
てきぱきと早退の用意を進めるパレットちゃんにシートくんを託しながら、(意外に熱に強いのか、シートくん・・・その状態で合成紙の話につなげられれば、段取り良かったんだけどな・・・・・・)と残念がる、ちょっぴり薄情なロール先輩なのでした。

※ユポ®、YUPO®、優泊®およびイ尤泊®は、株式会社ユポ・コーポレーション様の登録商標です。

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