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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 56 「溜める」と「流す」~和紙の発展③漉き方~


【今回のお話】
寒い朝。ロール先輩は紙漉きを思い浮かべますが・・・
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登場人物御紹介

シートくん 岐阜の印刷会社で働く、若手営業マン。知識と経験の不足を熱意でカバーすべく、今日も元気に紙修行中。
布団から出るのが日ごとに難しくなる11月の朝。
ロール先輩 何かと足りないシートくん(先輩)を優しく導く、工務の先輩社員。
起きるとまだ暗いことに季節を感じる11月の朝。
ブック部長 シートくんやロール先輩の仕事ぶりを温かく見守る営業部長。
パレットちゃん いつも優しくて可愛い総務の先輩・・・?
後輩シートくん シートくんと同姓で1年後輩の営業マン。

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「寒いです・・・」朝の挨拶もそこそこに、寒いを連発するシートくん。ロール先輩が苦笑で応じます。
「服が薄すぎるんじゃないの?」
「朝は寒いけど、昼は暑いんですよ。そう思うと、冬服出す気にならなくて・・・」
「服出すくらいはしようよ、これから昼も寒くなるんだから。・・・紙漉きの季節が来るよね。」
ロール先輩の言葉に、きょとんとするシートくん。
「寒くなると、紙漉きの季節、なんですか?」
「手漉き和紙の話だけどね。もともと紙漉きは農家さんの農閑期の仕事って側面もあるし、『ネリ』の粘度や質が長持ちする寒い時期の方が品質の良い紙が漉けると言われているの。」
「そう言えば、『楮の寒ざらし』って聞いたことあります。」
「美濃和紙の伝統行事だね。あれは1月だけど・・・」
「板取川でやるんですよね?1月の川・・・すっごい寒そう・・・」
「今は室内でやる工程で、川でやるのは技術の保存と伝承のためだそうだけどね。」

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「そもそも手漉き和紙をつくる工程って、どんなものがあるんですか?」
「地方や年代、樹種によっても違うみたいだけど、大まかに言うと・・・」

原料の刈り取り 楮などの枝を刈り取り、蒸して皮をはぐ。この皮が『靭皮』で、原料となる。
白皮作り 靭皮を水に浸して柔らかくし、外側の黒い部分を削り取る。
煮熟 草木灰などを加えたアルカリ性の水溶液で煮る。
アク抜き、漂白 煮たものをしばらく放置した後、釜から取り出し、流水に晒して、リグニンなどの不純物を洗い流し、同時に漂白も行う。
古くは「川晒し」などとして、川の水中の酸素や日光を利用した天然漂白が行われた。
塵取り 漂白後の繊維束に残る表皮の破片などを手で取り除く。
叩解 繊維束を叩いてほぐし、適切な長さに切る。繊維が均一に分散し、絡みやすくなる効果がある。
紙料づくり 繊維にネリを加え、紙料をつくる。
紙漉き 紙料を槽に入れ簀ですくって紙をつくる。
圧搾 湿紙に圧力をかけて脱水する。
乾燥 天日干しや蒸気、熱などで紙を乾燥させる。
仕上げ 紙を出荷できるように検査、断裁、包装する。

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「この『紙漉き』の工程で使われる方法が・・・」
「『流し漉き』ですよね。この前教えて頂いた。」
「そう。でも、『流し漉き』は奈良時代末~平安時代初の頃に現れた技術で、その前は『溜め漉き』っていう技術が主流だったって言われているの。」

溜め漉き 紙料液の入った槽に簀を入れてすくい上げ、自然滴下で水を切って、すくい上げた紙料を全て紙にする方法。
洋紙は機械化以前はすべて溜め漉きだったが、簀の材質や乾燥方法、簀をほとんど揺らさないこと、ネリを使わないことなど、日本式の溜め漉きとは異なる点がある。
流し漉き 紙料液を簀ですくい、揺り動かして繊維を均一に分散させ、余分な水を捨てる方法。
東洋の国々で見られる製法で、より少ない原料からより多くの紙を漉くこと、薄くて強く平滑な紙をつくることに適している。

「ちなみに、流し漉きは、初水、調子、捨て水、っていう段階に分かれるんだけど・・・」

初水 呼び方は「うぶみず」。最初に簀の上に紙料液を少量すくって薄く広げ、繊維の膜をつくる段階。「化粧水(けしょうみず)」とも呼ばれる。
調子 初水に続いて紙料液を何回か汲み上げて揺らし、紙の層を形成させて厚さを調整する段階。
捨て水 最後に、余分な紙料液を簀を払って槽に戻す段階。「払い水」とも呼ばれる。
紙料液と一緒にゴミや繊維の塊などの異物を除き、より美しい紙に仕上げる効果もある。

「この『捨て水』が『流し漉き』の最大の特徴で、日本式でも西洋式でも『溜め漉き』には見られない操作だって言われているの。」

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「『ネリ』を東洋の紙漉きでしか使わないことと、『流し漉き』が東洋にのみ見られる漉き方だっていうことには、関係があるんですか?」
「『流し漉き』を可能にしているのがネリだからね。流し漉きの技法で紙を手早く、薄く、平滑に漉くためには、繊維が均等に分散している必要があるでしょ?」
「ネリには繊維を均等に分散させる役目がある。だからなんですね?」
「そういうこと。で、ネリは温度が高くなると分解して粘度がなくなってしまう。だから、これからの寒い時期が、ネリを使う紙漉きには適している、っていう話につながるわけ。」

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「これが洋紙になると逆で、溜め漉きで厚紙を漉くのにはたくさん脱水しなきゃいけないから、紙料液の温度を上げたんだって。」
「その方が暖かそうで良いなあ・・・」
「その代り、簀が金属や木材で出来てるし、汲み上げる紙料液も流し漉きより多いから、相当重かったみたいだよ。」
「やっぱり和紙の方が良いかな・・・」
「・・・シートくんには紙漉きは無理そうだね。」
シートくんのヘタレな感想にロール先輩が首を振ったところに。
「おはよう。寒いね、ロールちゃん。」
妙に明るい声に振り替えると、パレットちゃんがにこにこ笑って立っています。
「あ、おはようございます、パレット先輩。」
「おはよう、シートくん。・・・で?昨日お願いした端数差額伝票は処理してくれたのかな?」
「あ・・・」
「この前お願いした交通費の精算は?その前にお願いした処理済クレームの書類はどうかな?」
「あ・・・えっと・・・・・・」
にこにこしながら目は笑っていないパレットちゃんと、真っ赤になって汗をかき始めたシートくんを見ながら、
(書類を溜めて温度が上がる・・・シートくんの机の中で溜め漉きが出来そう・・・・・・)
と現実逃避気味に考えるロール先輩なのでした。

※文中敬称略
※上記の文章を作成するに当たり、下記書籍等を参照させて頂きました。
『和紙つくりの歴史と技法』 久米康生著 岩田書院(2008年)
『紙のなんでも小事典』 紙の博物館編 講談社(2007年)
『和紙の道しるべ‐その歴史と化学』 町田誠之著 淡交社(2000年)
美濃市サイト>観光情報>祭り・イベント>「コウゾの寒ざらし」ページ 

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