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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 90 見積りのお話①

【初めてこの項目をご覧になる方へ】
 この【紙のソムリエ】は、主に印刷会社の新入社員・若手社員の皆様に、気軽な読み物を通して、規格や用語など紙に関する基礎知識をお伝えすることを目的として、華陽紙業にて編集しております。
 紙の勉強中のシートくんと教育係のロール先輩、後輩のコマキさん、総務のパレット先輩などの紙に関するやり取りを気軽にお楽しみ頂ければ幸いでございます。

前回の見積り間違いを引きずって落ち込むシートくん。コマキさんが声を掛けます。
「大丈夫ですか、先輩。お客様に叱られました?」
「叱られはしなかったけど大笑いされた。あまりに金額が違いすぎて間違いなのは明らかだったから、いつ気付くか待ってたんだって・・・『あんなに一目瞭然なのに気づかないなんて、やっぱりシートくんだね』って・・・やっぱりって・・・・・・」
 話しながらさらに落ち込んでいくシートくんに、慌ててコマキさんが言葉を継ぎます。
「見積りって気をつけなければいけないことがたくさんありますよね。単価にもいろいろな種類がありますし。私もまだ整理しきれていないので、改めて教えて下さいませんか?」
「教える・・・」
「はい。是非お願いします。」
 コマキさんの言葉に、シートくん、やっと顔を上げます。

「・・・じゃあ、コマキさんの言葉にもあった単価の種類から。コマキさんはどんなのがあるか知ってる?」
「すぐ思いつくのは、

キロ単価 1kg当たりの価格。『K/120』と表記されていたら、『1kgが120円』の意味。
枚単価、ケース単価、本単価 それぞれ1枚当たり、1ケース当たり、1本当たりの単価。
枚単価の場合『枚/10.52』あるいは『S/10.52』(S=sheet)などのように表記し、1枚当たり10.52円(10円52銭)を意味する。
連単価 1連当たりの単価。紙は1,000枚=1連(R)なので
『R/13,730円』であれば、1,000枚=13,730円、即ち、1枚=13.73円となる。

というところでしょうか。」
「そうだね。『連単価』が珍しいかな?」
「『銭』という単位も面白いなと思いました。今の貨幣では存在しない単位なのに、紙の価格を言うときは普通に使いますよね。」
「紙は1枚あたりだととても安い商材だからね。そもそも、メーカーさんと紙屋さんの間で大量に紙を売買するときは、数量じゃなくて重量で紙の量を表現するんだ。『〇〇の紙を15万枚分作って下さい』じゃなくて『〇〇の紙を10トン作って下さい』という風にね。こういうのを『抄造発注』って言ってるんだけど・・・」
「そういうときにキロ単価で取引するのですね。」
「うん。例えばこの紙の価格がK/150円だとしようか。そうなると、紙の総額はいくら?」
「1kg当たり150円の紙が10トンですから、150万円です。」
「そうだね。で、10トンで15万枚だとすると、枚単価は?」
「150万割る15万ですから、10円です。」
「さらに、この紙がA判の紙だとすると、A4、1枚の価格は?」
「A4はA判の8分の1ですから、A4で1枚は、10割る8で1.25円、1円25銭になります。」
「続けて、この紙を使ってA4で100ページの冊子を作るとする。単純に考えて、1冊当たりの紙代はいくら?」
「100ページだと50枚のA4の紙が必要になりますから、1.25X50で62.5円になります。」
「この紙10トンでできる冊子の数と紙代は?」
「1冊がA4で50枚ですから、A全判だと6.25枚。10トンが15万枚なので15万割る6.25で2万4千冊分。1冊分の紙代が62.5円ですから62.5円掛ける2万4千冊で150万円。・・・あ、戻りました。」
「うん。要するに、冊子1冊分の紙代と紙のキロ単価っていうのはそういう関係にあるよってこと。もう少し普通にありそうな例で言うと、こうかな。

A4で100ページの冊子を1,000冊作るとする。紙の連量は70kg。紙の単価はキロ200円。冊子1冊分の紙の原価はいくら?

「A4で100ページ=A4で紙50枚=A全判で6.25枚 までは一緒ですよね。
 1,000冊だから6.25X1,000で6,250枚=6.25連の紙が必要。
 紙の連量は70kgだから70X6.25で紙の総必要重量は437.5kg。
 紙の単価がキロ200円だから200X437.5=87,500円。
 これが1,000冊分の紙代ですから1冊分は割る1,000、冊子1冊分の紙の原価は87.5円になります。」
「正解。実際に冊子を作るときにはこれに印刷や製本用の予備分を加える必要があるし、本文と表紙、口絵では違う紙を使うとかもあるから、もっと計算が複雑になるけどね。ただ、基本はこうだと覚えておけば、いろいろな原価を計算するときに応用できると思うよ。」

「さっきコマキさんが挙げた以外に、

包単価 1包当たりの単価。断裁料の提示の時などに使われることがある。
㎡(へいべい)単価 1平方メートル当たりの単価。フォーム用紙などで使われることがある。

も使うから、計算できるようになっておいたほうが良いよ。例えば、

上質55kg1,100枚を4切にする。断裁単価は包/500円。上質55kgは1包=500枚。断裁料の総額はいくら?

「1包=500枚だから1,100枚は2.2包、つまり3包分ですよね。
 断裁料の総額は500X3で1,500円になります。」
「包数の計算は切り上げになるからそこも注意だね。じゃあ、

フォーム用紙55kg、267mmX6000m。㎡単価が10円だとすると、1本当たりの単価は?

「267ミリX6000メートルですから、1本当たりの面積は0.267X6000で1,602平方メートルですよね。
 ㎡単価が10円ですから10X1,602で、1本当たりの単価は16,020円になります。」
「正解。この場合は連量の55kgが計算には全く関係ない。じゃあ、

フォーム用紙、連量は四六判で言うところの55kg、寸法が267mmX6000m。キロ単価150円(※格差込み)の場合の1本当たりの単価はいくら、だったら?

「55X150・・・ではないですよね?」
「違うね。」
「えっと・・・四六判の55kgということは、米坪だと64g/㎡。
 先程の計算で1本当たりの面積は1,602平方メートルだと分かっていますから、
 1本当たりの重量は64X1,602/1,000でおよそ102.5kg。
 キロ単価が150円ですから150X102.5、1本当たりの単価は15,375円になります。」
「そうだね。以前に米坪と連量の関係の話をしたと思うけど、覚えておくとこういう計算の時に役に立つんだよ。
 ただ、計算の仕方としてはちょっと惜しい。これはこういう場合の連量の計算の決まりなんだけど、まず、64X0.267X1000/1000=17.088の時点で二捨三入七捨八入して、1000m当たりの重量が17kgと考える。これが6,000メートル分だから17X6で、重量は102kg、と計算するルールになってるんだよね。」
「じゃあ、150X102で15,300円、となるのですね。」

「フォーム用紙の幅って、267mmとか292mmとか、中途半端な数値なのですね。」
「もともとフォーム用紙はコンピューター用の紙だから、元になっている寸法も単位がインチなんだ。例えば267mmなら10.5インチ。ちなみに1インチ=25.4mmで計算できるよ。この267幅、10.5インチの用紙に印刷をして耳の処理をすると、10インチ幅の連続伝票ができるんだ。」
「連続伝票・・・見たことないです。」
「少なくはなったけど、今でも送り状とか納品書とか、産業の現場で使われているよ。複写のもね。」
「ああ、ノーカーボンのフォーム用紙もありますね。」
「うん。で、そのフォーム用紙の価格計算の時に出てくることがあるのが㎡単価。同じ巻と言ってもオフリン用紙となるとまた計算方法が違ってくるんだけど、それは次回にしようか。」
「はい。有難うございます。・・・先輩、いろいろお詳しいですね。」
「詳しい、かな?・・・まあ、詳しくても、使い方を間違えてたら意味ないんだけどね・・・」
 再び落ち込んでしまったシートくんをどう慰めれば良いのか、困り果てるコマキさんでした。