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紙の市況(2022.6)詳細 6月10日更新分

【紙に関する市況/状況】

1.日本製紙 印刷・情報用紙の値上げを発表

 日本製紙は6月9日、印刷・情報用紙の値上げを発表しました。

対象 印刷用紙全般、情報用紙全般
改定幅 現行価格+15%以上
改定時期 2022年8月1日出荷分より

 日本製紙は昨年11月に印刷・情報用紙の値上げを発表・実行していますが、それ以降一段と原燃料や物流経費が急騰したとして、さらなる値上げの理由について説明しています。


2.日経42種 「紙・板紙」3か月連続上昇

 6月1日付の日本経済新聞紙上にて、景気動向に敏感な素材や燃料などの企業間取引価格を基に1970年を100として指数化した日経商品指数42種の5月末値が発表されました。全体の指数は4月末比0.1%の上昇にとどまり、中国の都市封鎖などの影響で非鉄や石油の価格が下がったことが全体の伸びの鈍化に影響したと分析されていますが、「紙・板紙」の指数は前月比2.0%上昇、3月末値より3か月連続の上昇となっています。

・印刷用紙、段ボール原紙・シート、白板紙、フォーム紙、パルプ製トイレ紙などで値上げ浸透
・物流の混乱などでパルプ価格が高騰
・発生量の減少や回収費用の上昇などで古紙価格が値上がり

といった背景が指数の上昇に影響しているものと思われます。
 5月には王子製紙が7月1日出荷分からの印刷・情報用紙の値上げを発表しており、今後も指数上昇の要因が出現し続けるかにも注目が集まりそうです。


3.日本製紙 オーストラリアに新会社設立

 日本製紙は6月1日、オーストラリアでの現地法人設立を発表しました。

商号 Nippon Paper Liquid Package Australia Pty. Ltd.
所在地 オーストラリア メルボルン市
設立年月日 2022年6月予定
資本 日本製紙株式会社100%

 
 同社はElopak ASAとオセアニア地域でのライセンス契約を、四国化工機と同地域の充填機総代理店契約をそれぞれ締結して、同地域で液体用紙容器と充填機を販売する体制を整えており、木質バイオマスを主要原材料とした紙容器の需要増加が期待される同地域で液体用紙容器事業の拡大を狙っていくとしています。


【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.日本製紙 高板マシン1機をカップ原紙用に転換

 日本製紙は6月6日、現在高級白板紙を抄紙・塗工している抄紙機1機を停機し、カップ原紙の塗工用に改造すると発表しました。

対象 日本製紙クレシア興陽工場 2号抄紙機
内容 現在、商業印刷向け高級白板紙などを抄紙から塗工まで一貫生産している2号機を停機し、カップ原紙の塗工専用設備に改造。
時期 2022年11月末に停機、2023年度後半をめどに改造を実施。

 飲料、食品容器を主用途とするカップ原紙は、脱プラ、減プラのニーズなどから需要が高まっており、同社はカップ原紙生産のさらなる高機能・高付加価値化を「成長事業への経営資源のシフト」の一環と位置づけ取り組んでいくことを表明しています。


2.王子マテリアの新包材が採用

 王子ホールディングスは5月27日、「ネピア 鼻セレブマスク」シリーズに新ラインナップ「ネピア 鼻セレブマスク 紙エールパッケージ」を追加すると発表しました。この新製品には王子マテリアが開発した新包装材「紙エール」が採用されています。公式サイトの発表によると、

紙エールの特長 王子マテリアが開発した紙素材「サンカヨウ」を使用した紙製パッケージ。紙自体の一部を透明化した特殊な加工で、
・プラスチックフィルム窓の分別が不要で、紙としてそのままリサイクルが可能
・紙自体が透明で中身が見える
と、透明性とリサイクル性を両立させている。株式会社イムラ封筒と王子マテリアで共同開発。
サンカヨウ 特定樹脂の浸透性を高めることで、透明性を高めた紙素材。リサイクル時の離解性を向上させることで、透明化してもリサイクルが可能。水に濡れると白い花が透明になる「山荷葉」をヒントに開発。

 「ネピア 鼻セレブマスク 紙エールパッケージ」は法人向けのノベルティ商品として取り扱い開始予定とのことですが、紙自体を透明化することにより、脱プラスチックの動きに呼応する紙の代替パッケージ開発の可能性は高まると、王子ホールディングスは新素材の可能性について言及しています。


3.レンゴー セロファンの価格改定

 レンゴーは5月27日、セロファンの値上げを実施すると発表しました。公式サイトの発表によると

対象 セロファン 全品種
改定幅 現行価格+2,000円/連以上(一般セロファン#300換算)
改定時期 2022年7月1日納入分より

 同社は溶解パルプ、薬品、燃料、電力等の製造コストの高騰を挙げ、価格改定に理解を求めています。


【その他の市況/状況】

1.北米産パルプ 上昇続く

 6月7日付の日本経済新聞紙上にて、北米産パルプの5月積み対日価格が4月積み比0.9%の上昇となったと報じられています。値上がりは5か月連続とのこと。

・主産国カナダの輸送能力低下が継続。
・カナダの大手メーカーが、温暖化ガス削減などに向けた事業改革の一環として、8月積みを最後に針葉樹さらしクラフトパルプの生産を停止。
・ウクライナ危機の継続でロシアパルプメーカーの欧州からの薬品などの資材調達が停滞。減産や受注停止などにより、ロシア産パルプの輸入国である中国が調達先を北米に切り替え。
・UPMキュンメネのストライキによる生産の混乱が継続。
・日本国内で家庭紙などの需要が堅調で、原料パルプの供給メーカーが強気な価格設定。

と、様々な要因が影響していると記事では説明しています。
 石炭やパルプなど、主に中小の製紙メーカーの収益を圧迫する要因は解消が見えておらず、今後家庭紙などの紙製品の価格押し上げ要因になりそうだと記事では指摘されています。


【印刷・製品関連】

1.大日本 バイオマス基材使用のICカード

 大日本印刷は5月31日、バイオマス原料の一部に使用した非接触対応ICクレジットカード『バイオマスカード』を開発し、6月に提供を開始すると発表しました。公式サイトの発表によると、

バイオマスカード 植物由来の原料(バイオマス)基材をカードの重量比約25%使用した、非接触対応ICクレジットカード。
特長 ・焼却時の二酸化炭素排出量を一部相殺できることで、温室効果ガス排出を抑制。
・石油由来原料の使用量削減。
・バイオマスマークの認定取得申請中。取得できればバイオマスマークを当カードに表示でき、消費者にブランド訴求が可能。

 このバイオマス―カードは既にジェーシービーでの採用が決定しているとのことですが、同社は金融機関、ICカードや電子マネーカードの発行事業者、ポイントカードなどを展開する小売・流通企業などにバイオマスカードを提供し、環境負荷の低減を支援していくと、今後の展開について説明しています。


※文中敬称略
※文章は2022年6月8日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。