紙の市況（2022.8）詳細　8月20日更新分

2022.08.22

【紙に関する市況／状況】

1.製紙各社　２０２３年３月期第１四半期決算発表

　製紙８社は８月１２日にまでに、２０２３年３月期第１四半期（２０２２年４月１日～２０２２年６月３０日）の連結業績を発表しました。各社の公式サイトに掲載された決算短信によると、

　また、２０２３年３月期通期の業績予想については

と８社中６社が増収減益を予想しています。
　昨秋以降発表の価格改定などにより売上高は増加するものの、原燃料費や物流費の高騰、円安の影響などの製造コスト増分を補うには至らないと、各社は通期業績予想について説明しています。

2.日本製紙　カップ原紙や高板などの再値上げを発表

　日本製紙は８月９日、カップ原紙、高級白板紙、キャストコート紙の価格改定実施を発表しました。公式サイトの発表によると、

対象	改定幅	改定時期
紙コップ原紙・食品容器原紙・カップ原紙全般高級白板紙全般キャストコート紙全般	現行価格＋１５％以上	２０２２年１０月１日出荷分より

　昨秋打ち出した値上げはほぼ浸透するも、その後の世界情勢の激変による原燃料価格・物流経費の高騰、急激な円安の影響によるコスト上昇を転嫁せざるを得ないとして、同社は価格改定に理解を求めています。

3.大王製紙　ペット用品製造会社を子会社化

　大王製紙は８月１２日、ペット用品製造販売などを営む株式会社大貴の全株式を取得し、同社を子会社化することを決議したと発表しました。同日に株式譲渡契約を締結し、２０２２年１０月３日付で子会社化する予定であるとのこと。
　大貴はメーカーで規格外となった紙おむつ、壁紙、パルプ系不織布等のリサイクル原料を活用して紙製猫砂を製造しており、その大貴をグループに迎えることでグループ内で完結する形でのの衛生用紙等のマテリアルリサイクルが可能になること、また、使用済み紙おむつのリサイクル事業で分離・回収したパルプ・ポリマーの紙製猫砂への活用に取り組んでいけるようになることなどを、同社は株式取得の理由として説明しています。

【板紙・パッケージに関する市況／状況】

1.王子・北越もパッケージ関連の再値上げを発表

　王子マテリアは８月８日、北越コーポレーションは８月１０日に、段ボール原紙などの価格改定を発表しました。８月１７日までに表明されたパッケージ関連の再値上げ発表をまとめると、

メーカー	対象	改定幅	改定時期
大王製紙	段ボール原紙、包装用紙、機能材	段ボール原紙　現行価格＋１５円／ｋｇ以上包装用紙・機能材　現行価格＋１５％以上	２０２２年９月１日納入分より
ＮＴＩ	段ボール原紙全般特殊板紙（チップ・色板紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、シクラ原紙）	段ボール原紙全般　現行価格＋１５円／ｋｇ特殊板紙　現行価格＋１５％以上	２０２２年９月１日出荷分より
レンゴー	段ボール原紙その他原紙（白板紙、紙管原紙、チップボール）段ボール製品	段ボール原紙　現行価格＋１５円／ｋｇ以上その他原紙　現行価格＋１５円／ｋｇ以上段ボール製品は個別打ち合わせ	２０２２年９月１日納入分より段ボール製品は個別打ち合わせ
王子マテリア	段ボール原紙（ライナー、中芯）特殊板紙（紙管原紙、石膏ボード原紙、雑種紙）白板紙全品種、色板紙、チップボール包装用紙全品種	段ボール原紙・特殊板紙　現行価格＋１５円／ｋｇ以上白板紙・色板紙・チップボール・包装用紙　現行価格＋２０％以上	２０２２年１０月１日出荷分より
北越コーポレーション	段ボール原紙白板紙（コート白ボール、特殊白板紙、高級白板紙）包装用紙全品種	段ボール原紙　現行価格＋１５円／ｋｇ以上白板紙・包装用紙　現行価格＋２０％以上	段ボール原紙　２０２２年１０月１日納入分より白板紙・包装用紙　２０２２年１０月１日出荷分より

　また、原紙の価格改定などに伴い、王子コンテナー株式会社も段ボール製品の価格改定を個別にお願いしていくと発表しています。

【その他の市況／状況】

1.北米産パルプ価格が横ばい

　８月１７日付の日本経済新聞紙上にて、北米産パルプの７月積み日本向け輸出価格が前月比横ばいとなったと報じられています。主な輸出国であるカナダの物流混乱が収まっておらず供給が限られているものの、最大の輸入国である中国で需要が停滞しており、需給バランスなどから２か月連続の横ばいとなったと記事では指摘しています。

【印刷・製品関連】

1．日本製紙　ＣＮＦ配合のハンドバームを共同開発

　日本製紙は８月１６日、高砂酒造株式会社、株式会社ＭＡＲＶＥＬＯＵＳと共同で、同社開発のセルロースナノファイバー（ＣＮＦ）を配合したハンドバームを開発したと発表しました。公式サイトのニュースリリースによると、

製品名	「酒ハンドバーム　国士無双」
内容	高砂酒造の清酒「国士無双」、ＭＡＲＶＥＬＯＵＳの美容品製造ノウハウ、日本製紙のＣＮＦ、のコラボレーションで開発されたハンドケア製品。・日本酒とＣＮＦを保湿成分として配合・常温ではクリームよりもやや硬めだが、肌の上で温められることでオイル状に変化・適度な粘性で肌にとどまり密着、潤いや美容成分がじっくり浸透・原料に天然由来成分を９９％以上配合で、人にも未来にも優しい・日本製紙ＣＮＦの『しっとり潤うのにべたつかない』特性がべたつきを気にする人にマッチ等の特徴をアピール。
発売時期等	２０２２年９月１日より高砂酒造のＥＣサイト・直売店にて期間限定販売

　高砂酒造は既に２０１５年よりＭＡＲＶＥＬＯＵＳと共同で手作り化粧石鹸を開発・販売しており、今回、高砂酒造の地元旭川市に工場を持つ日本製紙が加わって新たなハンドバームを開発したと、同社は開発の経緯を説明しています。

※文中敬称略
※文章は２０２２年８月１８日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。