1. HOME
  2. KAYO NEWS
  3. 不定期配信 源氏物語の紙4

KAYO NEWS

華陽ニュース

不定期配信 源氏物語の紙4

「澪標」の後半部分で六条御息所の娘の世話をする様子が描かれる光源氏ですが、同じ「澪標」の前半部分では、明石に置いてきた女君、明石の君と、その間に生まれた娘を巡るやり取りが記されています(というより、タイトルからしてこちらがメイン)。都に戻ってからも明石と手紙を送り合う光源氏。一の人である紫の上が嫉妬するのを可愛く思いながら、娘が生まれたと知ると、何とか手元で育てたいと上京を促します。そんな時・・・

第14帖「澪標」

 いろいろな願い事を叶えてもらったお礼に住吉や難波津にお参りする源氏。その住吉には明石の君もたまたま参詣に訪れていましたが、源氏の参詣を知らされていなかったことやその参詣の行列の壮麗さに気後れして黙って立ち去ってしまいます。難波津まで来てそれを知った源氏が思わず「会いたいな・・・」と呟くと、それを耳にした従者の惟光が懐から「柄短き筆」、携帯用の小さい筆をさっと取り出して車が止まったときに源氏に差し出し、これもまた風流な、と思った源氏は「畳紙」に『こんなところで会うなんてやっぱり縁が深いんですね』という歌を書きつけて明石の君に送るのでした・・・

 現在の「畳紙」は着物をしまうための包み紙という印象ですが、当時の「畳紙」は「懐紙」、「陸奥紙」などを畳んで懐に入れ、歌や手紙を書きつけるためのものでした。旅先で携帯用のペンとメモ用紙を使ってさらさらと歌を詠む俺って・・・と源氏が思った、なんていう描写はありませんが、「さる召しもや」、こんなご命令もあろうかと懐に筆を忍ばせてさっと渡せる惟光は確かに従者の鏡、かもしれません。

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。

「源氏物語の紙5」を読む方はこちらから

「源氏物語の紙」を最初から読む方はこちらから