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不定期配信 源氏物語の紙

2024年のNHK大河ドラマは紫式部と藤原道長が主人公の『光る君へ』。
越前和紙の美しさに感嘆し、「私もこんな紙に物語を書いてみたい」と呟く主人公に、「文具女子・・・!」と共感された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところでこの紫式部の『源氏物語』、いろいろな場面で紙に関係する記述が出てくることでも知られています。
例えば・・・

第13帖「明石」
 ある出来事をきっかけに、京都から須磨、須磨から明石へと引っ越した光源氏。
 明石の邸を提供してくれている明石入道から「うちの娘と結婚しませんか?」と持ち掛けられます。
 じゃあ文通から、と最初の手紙を出す源氏が選んだ紙が『高麗の胡桃色の紙』。輸入紙の高級レターヘッド、というところでしょうか。「心づかひしたまひて、高麗の胡桃色の紙に、えならずひきつくろひて」、気を使って、高麗産の胡桃色の紙に、きちんと整えた筆遣いで、和歌を書きつけて送ります。
 ところがこのご立派な手紙に身分違いを感じて気がひけ、お嬢さんは気分が悪いと寝込んでしまいます。お父さんである入道が返事を代筆するのですが、このとき使うのは『陸奥国紙』。当時の、どちらかというと男性貴族御用達の、ふっくらと白い厚めの檀紙に、古風ではあるものの風情のある筆遣いで、娘は嬉しすぎたみたいで・・・と返事を書きます。
 お父さんから代筆の返事が来ちゃったよ、と驚く源氏は、今度は「いといたうなよびたる薄様」、当時の貴族の女性が好んでいた、やわらかな薄い紙に、可愛らしさのある筆遣いで手紙を送り、それに対してお嬢さんは「浅からずしめたる紫の紙」、香をたきしめた紫色の紙で返事を送り返します。その、都の貴族にも劣らない高貴な筆遣いや書きように、源氏は都のことを思い出すのでした・・・

 1000年以上も読み継がれる力を持つ『源氏物語』では、登場人物のキャラクターや心情を表現するのに、様々なアイテムが効果的に使われています。『紙』もそのひとつ。ドラマで興味を持った方も、授業で読んだよ、という方も、『紙』に注目して読み直して頂くのはいかがでしょうか。

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。