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華陽ニュース

不定期配信 源氏物語の紙8

度を過ぎた世慣れなさで源氏を困惑もほっとけない気にもさせる常陸の親王の姫君。源氏が須磨に転居して生活の面倒を見てくれる人がいなくなり、以前よりさらに困窮することになります。お化け屋敷のようになった邸で、若い侍女もいなくなり、父親王が残してくれた古い道具類に囲まれて何とか生活していますが・・・

第15帖「蓬生」

 何かと物思いが多い日に姫君が広げるのが古い歌が書かれた紙の数々。使われている紙は「麗しき紙屋紙、陸奥国紙などのふくだめたる」、もとは端正な紙屋紙、陸奥国紙なのに古びて毛羽立ってしまっている、と表現されている紙に、「選りすぐられたものならまだしも、たいして珍しくもない古い歌が書かれているものなどはとても興ざめなのに、姫君はぼんやりと眺めている」と筆者の筆は辛らつです。やがて源氏は須磨から都に戻り要職に返り咲きますが、常陸宮には訪れないまま。高価な紙が有効に使われたり正しく保管されたりせず色あせて古びていってしまう様を記すことで筆者は、高貴な血筋ながら様々な点で不足のある姫君がただ漫然と零落していく姿を表現しているようです。

 とはいえ物語はそのままでは終わらず、やがて姫君は源氏と再会し、ついには源氏の住居の一角に引き取られることになります。その運の強さはまさに和紙の強い耐久性そのもの、と言ってしまうと強弁に過ぎるというものでしょうか。

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。

「源氏物語の紙9」を読む方はこちらから

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