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華陽ニュース

不定期配信 源氏物語の紙9

高貴な血筋ながらそれ以外の点ではちょっと・・・という役回りを負わされている常陸の親王の姫君ですが、筆者はこのキャラクターに愛着があった(?)のか、後の巻でも登場させています。源氏が太政大臣になり、壮麗な新宅も建てて栄華を極めている時代の年の瀬。源氏は妻や娘などゆかりの女君に新年用の衣装を贈ります。女君からお礼のお手紙が届くのですが・・・

第22帖「玉鬘」①

 常陸の親王の姫君の手紙は「いとかうばしき陸奥国紙の、すこし年経、厚きが黄ばみたるに」、実に香ばしく香を焚きしめた陸奥国紙の、少し古びて厚く黄ばんでいるものに書かれています。筆跡も古風なら読みぶりも古式ゆかしいもので、源氏はその古めかしさを笑いながら、常陸の親王の姫君に贈った、由緒ある文様の艶やかな衣装とそれを着た姫君の姿に思いを馳せるのでした・・・

 と書くと、源氏が良い人のようですが、実は源氏、似合わないこと前提でこの衣装を選んでいます。このとき源氏は最愛の妻の紫の上に姫君の話をしながら、少し前に姫君から、姫君の父親の常陸の親王が書いた、和歌の心得が書かれた草紙をもらったことを話します。「常陸の親王の書きおきたまへりける紙屋紙の草紙」には和歌の奥義がびっしり書かれていて、かえって歌が詠めなくなりそうだから返したよ、と源氏が笑い、紫の上が明石の姫君(源氏の娘)の教科書にすれば良いのに、と言うと源氏は、「必要ない。女の子は不得意なものがあってはいけないけど、何か突出して得意なものがあるのも体裁が良くないものだよ」と返します。
 常陸の親王の姫君への衣装の選び方といい、女性に対する考え方といい、現代では「はて?」と言われてしまいそうな源氏が描かれている場面です。

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。

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