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華陽ニュース
不定期配信 源氏物語の紙11
玉鬘を娘として保護した源氏。多くの求婚者が殺到し、誰と結婚させるか、入内させようか、いっそ自分のお嫁さんに、などと悩むことになります。玉鬘が実の娘だとまだ知らない内大臣は、うちにもあんな娘がいたらなあと思い、ひそかに探させるのですが・・・
第26帖「常夏」
そうして見つかり、内大臣家に引き取られたのが「近江の君」。父親によく似た顔立ちの、愛嬌のある姫君ですが、早口で、双六好きで、教養に欠けていて・・・と良くない評判が広がり、内大臣はとりあえず、近江の君にとって異母姉にあたる弘徽殿の女御に仕えてみるか?と近江の君に尋ねます。承諾した近江の君、「青き色紙一重ねに」、青の料紙を重ねたものにお手紙を書いて女御に訪問のお伺いを立てますが、筆跡は角ばって何流とも言えないやたら格式ばったもので、和歌自体と合わせ、女御は意味がよく分からないと不思議がり、お付きの女房たちには笑われてしまうのでした・・・
同じ内大臣の娘で同じように田舎で育った2人を対比させることで玉鬘の優秀さを際立たせる意図があったとも読み取れそうなこのくだり。近江の君が選択する紙の色も定番の『紫』ではなく『青』で、この違いにも意味を求めてしまいそうになります。ただ、たとえ筆跡が角ばっていても、和歌がおかしなものであったとしても、青い紙を小さく結んで撫子を添えて送る近江の君は愛らしい、と筆者が思ったのかどうか。常陸の親王の姫君や源典侍などとともに、忘れたころにひょっこり顔を出す、愛すべきキャラクターのひとりとなった近江の君でした。
※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。