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華陽ニュース

不定期配信 源氏物語の紙13

恋文に、パッケージにと大活躍の『源氏物語』の『紙』ですが、ときに不穏な役回りを果たすこともあります。そのうちのひとつの使い手が、源氏の親友の息子で、夕霧の親友でもある「柏木」。穏やかで帝の信頼も厚い貴公子ですが、源氏の妻のひとりとなった「女三の宮」への想いを断ち切れず、源氏の留守に邸に押しかけて思いを遂げてしまいます。女三の宮が懐妊し、しばらく留守にしていた源氏が姫宮のもとに帰ってきていると聞いて、焦った柏木は女三の宮に手紙を送りますが・・・

第35帖「若菜(下)」

 源氏が女三の宮のもとを訪れたあくる朝。病気のため別宅で療養している紫の上のもとに帰ろうと早起きした源氏は、「浅緑の薄様なる文の押しまきたる端見ゆる」、敷物の下から浅緑色の薄様の手紙の端がのぞいているのを見つけます。読むと柏木から女三の宮に切ない思いを訴える手紙で、源氏は女三の宮の懐妊に関する真実を悟ります。
 柏木を女三の宮のもとに手引きした女房は、源氏が浅緑色の手紙を手にしているのを目にします。「昨日の文の色と見るに」、昨日の柏木からの手紙と同じ色だと気づき、源氏が手紙を読んで(真実を知って)しまいましたよ、と女三の宮に告げるのでした・・・

 柏木はその後、源氏への罪悪感や心労から病に倒れ亡くなりますが、経緯が不本意な女三の宮の心情は「世にながかれとしも思さざりしを」と描写されています。源氏によって若い「柳」に例えられた女三の宮。老いた自分を笑っていると源氏に皮肉られ、病を発症する柏木。そして何より、自分の罪を自覚しながらも、心の中で2人を責めずにはいられず、ついつい態度に出てしまう源氏。それぞれの未熟さ、幼稚さ、浅はかさ、残酷さを象徴しているような「浅緑」の薄様なのでした。
 

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。

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