不定期配信　マウスちゃんとメモリ主任のＩＴ１年生⑭

情報の重要性が増す昨今、弊社では情報セキュリティについて、その意義や情報を共有する取り組みを続けています。
担当チームが社内向けにまとめた資料などを基に、軽い読み物を不定期でお届けできればと思いますので、ご笑覧頂ければ幸いでございます。

　ある日の終業間際。イーさんが頭を抱えて悩んでいるのに気付いたマウスちゃん。
「どうされたんですか、イーさん。」
「この前の会議の議事録つくるの忘れてて・・・今日が締め切りなんだけど、今日はどうしても定時に帰らないといけないんだよ・・・」
「えっと・・・悩んでいる時間があるなら取り掛かれば良いのでは・・・」
「間に合わないよ・・・こうなったら・・・」
　おもむろにスマホを開くイーさん。
「どうされるんですか？」
「資料を撮って家のパソコンに送って家でつくるよ。明日の朝までに提出すれば何とか・・・」
「え？私用のメールアドレスに会社の資料を送るのって、規定違反じゃないですか？」
「え？」

「ほら、ここ。『私用の情報環境を業務に用いることを原則禁止します』って書いてあります。例として、『個人のパソコンやスマホなどに業務の資料を送ること』って。まあ、そもそも会社の資料を私用のスマホで撮ること自体が違反だと思いますけど。」
「本当だ・・・え？でもなんでダメなの？」
「入社の研修の時に

・会社の情報を許可なく業務以外の宛先に送信することは情報漏洩につながる
・会社の機密情報を個人的な友人に誤って転送するなどのミスが起こりやすい
・個人のパソコンやスマホのセキュリティ対策が十分にされているかどうか、会社で管理できない

といった状況から、情報漏洩が起こる恐れがあるから原則禁止、って教わりましたよ。」
「じゃあ、急ぎの仕事をどうしても家でやらないといけないときはどうするの？」
「社外からでもアクセスできる会社の情報端末を借りるみたいですね。もちろん、理由を書いた申請書が必要ですけど。」

「そんな・・・『今日が締め切りなのをすっかり忘れていました』って書いても、『今日はオンライン飲み会があるので残業できません』って書いても怒られる気がする・・・」
「そんな理由だったんですね・・・いえ、ワークライフバランスは大切ですよね。えっと、じゃあ・・・」
　マウスちゃん、共有のフォルダにファイルをアップロードします。
「この前の会議なら私も出ていましたし、自分用にメモをつくっておいたんです。それを今アップロードしましたから、良かったら使って下さい。使えるかどうかわかりませんが、一からつくるよりは時間短縮できるんじゃないでしょうか？」
「マウスさん・・・神・・・？」
「違います。」
　苦笑したマウスちゃんと、いそいそと作業を始めようとしたイーさんに
「盗用は感心しませんね。」
　冷たい声がかかり、二人は思わず息をのみます。
「メモリ主任・・・作者本人が使用を認めているので、盗用というわけでは・・・」
「そもそもブック部長がイーさんに議事録作成を指示したのは、それがイーさんのためになると思われたからではないですか？マウスさんの行為は、イーさんの成長機会を奪うことにつながるのでは？」
　正論に二人が黙ってうなだれると、メモリ主任は溜息を吐きます。
「情報の無許可持ち出しという規定違反を未然に防いだマウスさんに免じて、ブック部長に報告することはしませんが・・・お二人はもう一度、仕事というものについて考え直した方が良いかもしれませんね。」
「はい・・・」
　メモリ主任の正論に加え、メモリ主任に借りをつくってしまったという事実に青ざめる二人なのでした。