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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 92 見積りのお話③

【初めてこの項目をご覧になる方へ】
 この【紙のソムリエ】は、主に印刷会社の新入社員・若手社員の皆様に、気軽な読み物を通して、規格や用語など紙に関する基礎知識をお伝えすることを目的として、華陽紙業にて編集しております。
 紙の勉強中のシートくんと教育係のロール先輩、後輩のコマキさん、総務のパレット先輩などの紙に関するやり取りを気軽にお楽しみ頂ければ幸いでございます。

 落ち込み続けるシートくん。何とか一般論にしてショックを少しでも和らげようとコマキさんが言葉を継ぎます。
「見積でもどんなことでも確認は大切ですよね。でも初めは、何を確認して良いかすら分からないということがあって・・・」
「そうだね。経験を積めば分かってくることではあるけど、こんなところを間違えやすい、とか、確認を忘れやすい、っていうことが分かっていれば、少しは楽かもしれないね。紙に関することだと、例えば・・・」

例題 上質紙 <55> A3 500枚。キロ単価500円だとすると、用紙単価はいくら?

「これだと、どこが落とし穴だと思う?」
55kgとあるのにA3というところでしょうか。
 上質紙で55kgは四六判の単位。でも必要なのはA3で、A判の4切で取りますから、四六判の55kgと同じ厚さのA判の連量35kgで計算する必要があります。」
「正解。ほかには?」
格差ですね。格差には

連量格差 ベースの厚さよりも薄い、あるいは厚い連量のものには、ベースの価格に格差分がプラスされる。上質紙の場合、キロ単価で45kgには12円、55kgには5円、等の格差がつくとの決め事がある。
色格差 色上質やファンシーペーパーなどで、他の色より価格が高い色のことを『色格差がある』という。北越の色上の場合、黄・赤・緑・白は他の色よりキロ単価で30円、黒はキロ単価で120円プラスされるという色格差が設定されている。
数量格差 一般に紙の購入数量が多くなれば単価は安くなることが多い。端数(包未満の数量)なら単価1,000円のものが包以上なら単価800円、連なら単価500円、等。最初の見積もりから数量が減った場合、単価が高くなることがあるので要注意。

などがあります。この問題の場合、上質紙の55kgだから連量格差は5円。『キロ単価500円』が格差を含んでいるのかいないのかを確認する必要があります。」
「それも正解。じゃあ、ほかには?」
「・・・『A3 500枚』のところですか?何がとは言えませんが、何だか怪しい気がします。」
「勘が良いね。実は『A3で500枚』なのか『500枚をA3に』なのかをわざとぼかしたんだ。これを小数(こかず)全紙(ぜんし)って呼んでるんだけど

小数 切った状態で何枚か、を表す言葉。『A3で小数500枚』なら『A3に切った状態の紙が500枚必要』ということ。
全紙 断裁する前の、四六判やA判などで何枚か、を表す言葉。『全紙500枚をA3』なら、A全判500枚を4切でA3に仕上げるので、『A3で小数2,000枚』になる。全紙のことを、小数の対比として『大数(おおかず)』と呼ぶこともある。

ということになるから、どちらの意味かを確認しないと数量が全然違ってくることになるんだよね。」
「これだと数量格差も絡んできますよね。例えば王子の上質紙の『プリンス』の場合、A判の35kgは500枚包になりますから、『A3で小数500枚』=『A判全紙125枚』の時の紙の単価は端数単価になりますし、『全紙500枚をA3』なら包単価になります。」
「正解だね。ほかにも、実際の仕事と考えると、いろいろ抜けていることがあるけど、分かる?」
「目なりや寸法などですね。」

「基本的なところで、間違えやすかったり、確認を忘れたりしやすいところをまとめるとこんな感じかな。」

銘柄 例えば上質紙だと、上質紙なら何でも良いのか、このメーカーのこの銘柄、という指定があるのか。
同じ白い上質紙でもメーカーによって、あるいは銘柄によって、白さに違いがあったり、印刷品質が異なったりする。
印刷品質が高いことだけではなく、機械との相性や作業適性、入手が容易かどうか(遠方地にしかないと運賃がかかる場合もある)、端数が扱えるかどうか、といった二次的な要素も銘柄の選定に関わってくる。
寸法 仕上がり寸法を考えて、必要な紙の全紙寸法を決定する。
仕上がりがA3でも印刷内容などによってはA全判が最適な紙の寸法ではない、といった場合などもあるので要注意。
また、仕上がりから考えて紙はA判が欲しい、という場合でも、欲しい紙にA判があるとは限らないので、無ければ菊判や四六判など、規格や在庫が有る寸法を使う方法を考えなければならない。
目なり 印刷や加工工程、仕上がりを考えて目なりを決定する。
寸法と同様、欲しい紙に欲しい目なりの規格があるとは限らないので、あらかじめどのような規格があるかを確認して取り都合を考える。
連量 例題のように、指定連量が実際に必要な紙の連量ではない場合もあるので計算時には要注意。
連量格差についても、例えば、上質紙の35kgには格差があるがA3コートの35kgにはない、等、品種や銘柄によって違う場合があるので、覚えるまではその都度確認が必要。
数量 全紙か小数かをはっきりさせることが必要。印刷や加工によって必要な予備枚数が違ってくるのでそれも確認する。端数の取り扱いができない商品の場合は数量が包単位となるので要注意。いったん見積りを提出した後で仕上げ数量が半減、といった場合、数量単価が変わることにより紙の価格が単純な半減にならない場合があるので、それも要注意。
また、板紙の場合、連単位で話をすると、100枚なのか1,000枚なのかで取り違える場合があるので、枚単位で話をした方が無難。
単価 単価の種類(キロなのか枚なのか、など)を把握。格差や断裁料、運賃などが含まれているかどうかも確認が必要な場合がある。
仕上げ寸法 単にA3といっても、A判4切なのかJISA3なのか指定寸法なのか、等で、取り都合が絡んで価格が変わる場合がある。正確な商品を手に入れるためには、事前に打ち合わせるか、ミリ寸法で指定する等した方が確実。

「この辺りを曖昧にしておくと、紙屋さんから正確な紙の価格が聞けなかったり、見積と実際の仕事の時に紙の価格が違う、なんてことになりかねないから要注意だね。」

「例題は平判でしたから、巻取だと寸法の注意事項に流れや入数の確認が入ってくるのですね。」
「封筒や箱など、紙製品だとまた注意事項が違ってくるから、その辺りも確認が必要だね。」
「注意すべきことが多いですね。」
「そうなんだよね・・・だから、その都度確認しないで済むようにエクセルで見積システムをつくっておいたんだけど・・・」
 シートくん、また肩を落とします。
「システムをつくったのに、ミスが発生したのですか?」
「・・・キロ単価なら『1』、枚単価なら『2』って入れて自動計算するようにしてたんだよね。それを入れ間違えて・・・」
「ああ。どんなにシステムが良くても、使うのは人ですものね。」
 思わず正論を呟いてしまい、シートくんをさらに落ち込ませて慌てるコマキさんなのでした。