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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話48 バルカナイズドファイバー
「お疲れ様、コマキさん。何を熱心に見てるの?」
「お疲れ様です、シート先輩。年末年始に友達と旅行の予定があるのですが、それに合わせてスーツケースを買おうかと。」
「ああ。キャスターのついたやつ?楽だよね。」
「そうですね。そう思って探していたのですが、対象外のタイプに目がとまってしまって。」
「どんなの?・・・ああ、これ。・・・コマキさん、これ、紙製だって知ってた?」
「紙製、ですか?」
「うん。『バルカナイズドファイバー』っていって、原紙を薬品処理して層にして水洗いして乾燥させることでつくられる丈夫な紙なんだよ。日本では北越さんのグループで製造されているんだけど、もともとはイギリスで19世紀に発明された紙。
・丈夫で粘り強くて割れにくい
・絶縁性が高く電気を通しにくい
・耐熱性もある
・折曲加工や塗装、接着など各種加工が可能
とかの特徴があって、スーツケースやトレイ以外にも、電気機器部品や産業用の部品、溶接する時用のマスクなんかにも使われてるんだって。」
「軽くて丈夫で熱にも強くて加工もしやすいとなれば、活躍の場は幅広そうですね。」
「そうだね。さらに最近になって2つの点で、再注目されてもいる。」
「2つの点?」
「ひとつはセルロースナノファイバーとの関わり。バルカナイズドファイバーが丈夫なのは、薬品処理されることでセルロースがナノレベルにまで解繊されて強固に絡み合うことによるものだってことが解明されたんだ。それって要するに」
「最近注目のセルロースナノファイバーでできている紙だということですね。」
「そう。セルロースでできている紙だから、生分解性にも優れている。丈夫で長持ちなのに環境にも優しいっていう点が、プラスチック使用量低減が課題になっている現代で再注目されている、もうひとつの理由なんだ。」
「19世紀にイギリスで発明された当時は、今までの皮革素材のトランクより軽くて丈夫だっていうんで大人気だったそうだよ。北越東洋ファイバーさんのサイトによると、親子三代で受け継げるくらいの耐久性なんだって。キャスターがついてるタイプもあるし、対象外ってことはないと思うけど?」
「そうですね。デザインもとても素敵で、持ち歩いたら旅行がさらに楽しくなりそうだなと思います。ただ・・・」
「ただ?」
「お値段が、その、対象外で・・・」
「・・・・・・」
※文中、敬称略