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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話52 和紙の歴史

「シート先輩、何をご覧になっているのですか?・・・ころころしたお雛様ですね。」
「可愛いでしょう?姪の手作りなんだよ。まあ、手作りと言っても、キットを買ったみたいだけど。」
「私ならキットでもこんな風に綺麗にはつくれないと思います。器用ですね。」
「へへ、そう?」
「和紙のお雛様なのですね。表情のおかげかもしれませんが、温かみを感じますね。」

「もともと日本人は防寒用に紙衣を使っていたくらいだし、和紙とあたたかさって関係が深いのかも。」
「吸湿性が高く、湿度の調整機能があるから、高温多湿の日本の夏にも適していると聞きますよね。日本人の暮らしと和紙は、以前はもっと関係が深かったのですか?」
「紙衣自体は奈良時代から使われていたっていう話だよ。

紀元前2世紀ごろ 絹や麻の衣料をつくる過程で出る繊維くずから紙の原型がつくられたとされている。現存する世界最古の紙のひとつとされる『放馬灘紙』は紀元前180~141年ごろ製造と推定。
2世紀初め 蔡倫が製紙法を改良・完成させたと伝えられる。
3~6世紀ごろ 日本に紙とその製法が伝来したと考えられている。
7~8世紀ごろ 行政文書や戸籍の作成、仏教の普及などの要因により、日本でも紙づくりが普及、盛んになる。日本製だと確実に伝わっている最古の紙は正倉院に納められた702年の美濃・筑前・豊前の戸籍。710年ごろに公立の製紙所である『紙屋院』が置かれ、公用紙である『紙屋紙』の製造のほか、製紙技術の開発・改善、地方への製紙技術の伝授などを担った。
905~927年、967年 平安時代の律令の施行細則『延喜式』が編纂・改訂され、施行。製紙原料、製法・工程、作業ノルマなどについても記載がある。延喜式では和紙の製法として『溜め漉き』法が記載されているが、同時期に『流し漉き』法が完成し、次第にこちらが主流になっていったと考えられている。
平安時代 写経や書写用などとして上流社会で紙が盛んに使われるようになり、輸入紙に加え、紙屋紙、『陸奥紙』、薄様、継紙などの装飾・加工した紙など、多彩な和紙が日本でつくられ、加工されるようになる。戸や襖、衝立などの建具の材料にも紙が使用されていたと伝えられている。
12~16世紀ごろ 公家や僧侶に加え、武士階級でも紙が普及し、『陸奥紙』や、播磨産の『杉原紙』など地方でつくられた紙が愛用されるようになる。書写用のほか、懐紙、明り障子紙、傘紙、武士の陣羽織や胴服としての紙衣など、用途も拡大。
江戸時代 一般庶民にも紙の使用が広がり、出版物、帳簿、手紙などの書写用、包装紙、ちり紙、汗をぬぐう、化粧用、衛生用、紙糸、紙布、合羽、建具や壁紙等、日常的に広く使われる素材となる。需要の拡大に伴って藩が紙の生産を奨励し、専売制をとって藩の財政を潤した例もあるが、厳しいノルマを課せられた農民が紙一揆を起こしたとの記録も残る。

って感じで、和紙を使う層が増えるにつれて生産が増えて、コストが下がって、さらに需要が増えて、って、一大産業に発展していったみたいだね。」

「全国で幅広い用途に使われていた和紙が、明治期に洋紙に押されて急速に衰退した、ということなのですね。」
「それだけじゃないけどね。地方の働き手が流出してつくれなくなったとか、プラスチックなんかの新素材にとって代わられたとか、楮の畑で別のものをつくるようになったとか。いろいろな要因があって、いま、和紙は、日用品じゃなくて伝統工芸品みたいな扱いになっているけど、和紙の特長とか良さがなくなったわけじゃないから、見直されてきてもいる。」
「シャツや靴下、帽子やネクタイなど、身につけるもので和紙の糸を使っているものを見かけることはありますね。」
「建材とかね。それから、こんなお雛様。」
「デジタル化で洋紙の印刷用紙の需要が急減しているなか、紙の機能や役割を見直すうえでは、和紙にもっと目を向けるべきなのかもしれませんね。」
「・・・そうか。お正月の門松に続き、このお雛様にもそんな深い意味が!」
「・・・シート先輩は、姪御様に対する愛情の在り方を見直した方が良いのかもしれませんね。」

※文中、敬称略