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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話⑫真実は6つ?(前)

「もう11月か・・・今年はコロナのせいか、いつもの年よりあっという間だった気がするな・・・」
「テレワークだったり、外出自粛だったり、日常生活が目まぐるしく変化したせいでしょうか。」
「紙業界は、これまで緩やかに進行していた変化が加速して進んだ感じだよね。」
「印刷・情報用紙の需要減少ですね。」
「反面、パッケージ用紙が堅調だったり、衛生用紙が伸びたりする傾向とかね。・・・でも、こんなに色々変化しているのに、頑固に変わらないものもあるんだよなあ。」
「なんですか?」
「『紙は環境に悪い』っていう意見。この意見の背景にある誤解を解こうということで、今年9月、日本製紙連合会さんが『紙は環境に悪い?誤解を解く6つの真実』っていうパンフレットを作成されているんだよ。」

1.「『紙の生産・消費が世界の森林減少の原因』という話は事実と異なります。」

「FAO(国連食糧農業機関)の調査で、

・2010~2020年の間に、年平均470万ヘクタールのペースで、世界の森林面積が減少している。
・地域別にみると、森林面積の減少が顕著なのは、アフリカと南米。

っていうことが判明している。ただ、同じ調査で、

・林産物の生産を主たる目的とする森林面積は1990年以降一定であると評価

っていう結果も出ている。」
「製紙も『林産物の生産を主たる目的とする』産業の一つですから、製紙によって森林面積が減っているとは言えないということですよね。」
「じゃあ、どうして森林面積が減っているか、という原因について、日本製紙連合会さんのパンフレットでは環境省の資料が紹介されている。その環境省の資料によれば、森林減少の大きな原因は

・農地や牧草地等への転用
・持続可能な森林経営を阻害する違法伐採
・自然の回復力に配慮しない、非伝統的な焼畑農業
・燃料用木材の過剰な採取
・森林火災

などとされていて、『紙をつくること・使うことが世界の森林減少の原因』というのは誤解なんだよ、ということが分かるんだ。」

2.「『紙1トンが木○○本』という表現は実態を表していません」

「そもそも日本の紙って、自然林をバッサバッサ伐ってつくっているわけではないんだよ、っていうのが、次の項目の趣旨だね。」
「詳しい数値を紹介されていますよね。日本で使われている紙の原料の64%は古紙、36%が木材。もちろん古紙も元は紙で木材由来なわけですが、パルプの原料の木材の出所の内訳は、2019年の場合

輸入材 国産材
植林木から 90.8% 建材用などに製材した残りから 41.6%
天然林の低質な木材から 0.8% 天然林の低質な木材から 26.9%
建材用などに製材した残りから 8.4% 植林木から 24.4%
古材から 7.1%

で、持続可能な計画に沿って植林されている森林からの収穫分が大きなウエイトを占めています。」
「以前どなたかが『植林木は、田んぼや畑で農作物を大切に育てて、実ったものを収穫するのと同じイメージ』ということを仰っていたけど、まさにそんな感じだよね。植林木以外の木材も、住宅用の柱や床材を取った後の残材とか、間伐材とか、燃料にするか廃棄するかしかないようなものがほとんどで、紙に携わる人々がいかに木という資源を大切に考えているか、分かって頂けるんじゃないかな。」

3.「紙は原料である木の成長から廃棄・焼却されるまでCO₂を固定する素材です」

「CO₂を固定・・・難しい表現ですね。」
「木は光合成で大きくなるよね。光合成に必要だから、木は二酸化炭素を吸収する。この吸収された二酸化炭素が、チップになっても、紙製品になっても、ずっと製品内に溜め込まれていることを『二酸化炭素を固定』している、って表現しているんだ。正確に言うと、溜め込まれているのは炭素=Cで、残りのO₂=酸素は光合成の段階で空気中に放出されるんだけど。」
「森林による光合成は、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収してくれる大切な現象ですよね。でも、だからこそ、木が原料である紙は悪者である、という意見の背景になっていたのでは?」
「森林の減少は製紙のせいではない、というのは1で説明した通り。それに加えて、紙は、流通している間はその中に二酸化炭素(正確には炭素)をずっと溜め込んで(=固定して)いる。だから、

木が大きくなって紙になって流通している間に、吸収して溜め込んでいる二酸化炭素の量=廃棄される紙や、紙にならなかった部分が燃やされる時に発生して放出される二酸化炭素の量

という考え方が世界中で認められている。『カーボンニュートラル』っていう言葉で表現されているね。」
「他の素材が燃やされる時に放出される二酸化炭素は増えるだけだけど、紙の場合は吸収・固定した分と相殺される、ということですね。」
「そう。だから、紙の生産・消費は温室効果ガスの増加には関わらない。紙の環境優位性を示す特徴の一つだとされているんだ。」

「今回はここまで。『紙は環境に悪い』という意見の背景が誤解に基づくものだということが、少しは伝わったかな?」
「誤解を解くのって難しいですよね。製紙メーカーさんだけ、とか、日本製紙連合会さんだけ、とかにお任せするのではなくて、紙に携わっている私たちみんなが、根気強く発信していくことが大切なのだなと思いました。」
「そうだよね。誤解を解くのって難しいよね。僕のサイズ感が・・・っていう誤解も、根気強く解いていかないと・・・」
「先輩・・・それが誤解だというなら、客観的な数値を示していただく必要があるかと・・・」
「・・・・・・」