いよいよ6月1日より紙の新価格がスタートしました。
社会の反応の色々を日本経済新聞5月17日朝刊の記事より御紹介致します。
製紙各社が打ち出した印刷用紙の値上げ交渉が来週から本格的にスタートする。原燃料価格の高騰が理由だが、1月に発覚した再生紙の古紙配合率の偽装問題に振り回された印刷業界からは怒りの声が上がる。ただ、急激な原燃料高や偽装への反発の温度差で、印刷業界には押し返せないムードも漂う。
「今はとても認めてもらえないと思って値上げの延期を打診した」。価格交渉と販売を担う代理店の幹部は、ある大手製紙が2ヶ月遅らせた値上げ表明の舞台裏を明かす。
当初は1月下旬だった値上げ表明が始まったのは3月下旬。今月21日から6月1日にかけて各社横並びで代理店への出荷価格を15%引き上げる計画だ。
だが、再生紙偽装問題のほとぼりが冷めたと考えるのは早計のようだ。「社内処分でけじめをつけたつもりだろうが、製紙会社は市場の空気が読めていない」。中小印刷会社を束ねる全日本印刷工業組合連合会(東京・中央)の浅野健会長は今も不信感を隠さない。
ある印刷会社の仕入担当者も「偽装の紙であっても、急場しのぎで使ってもらえるよう我々はユーザーに謝って回った」と振り返る。「偽装で振り回された揚げ句、値上げ転嫁などできるはずがない」と反発する。
すでに印刷業界は昨年夏の10%値上げを受け入れている。その分の転嫁は「3割しかできていない」(凸版印刷)。偽装問題を今回の値上げを押し返す材料にしたいとの思惑は根強い。
しかし、印刷業界も一枚岩ではない。中堅印刷会社の社長は「クギは刺すが、交渉材料にはしない」と言い切る。「コスト高は世界経済の変化の結果で、偽装と無関係だからだ」という。
実際に古紙の値上がりは、急速な経済成長が続く中国の需要増の影響が大きい。工場ボイラー燃料の高硫黄C重油の上昇は、投資マネーや新興国の需要増で原油相場が高騰しているためだ。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で米国の住宅建設が滞ったことも、北米産木材チップの原料になる製材廃材の減少をもたらした。
製紙会社側からの“逆襲”を恐れる印刷会社もある。「前回の交渉で値上げを拒絶したら代理店から出荷されなくなった」。今回も代理店は「いや応なしに仕入れ価格が上がってしまう」と印刷会社側に強硬な姿勢をちらつかせる。
需給環境も印刷会社側に必ずしも追い風ではない。製紙会社が減産する汎用品、上質紙は需給が締まっている。チラシに使う軽量コート紙や微塗工紙の過剰感もない。
再生紙偽装問題への反応で不満がくすぶるが、一丸となれない印刷会社側。現状では値上げを阻む決め手に欠いているようだ。 |