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華陽ニュース

紙の市況(2022.5)詳細 5月20日更新分

【洋紙 国内の紙の市況/状況】

1.製紙各社2022年3月期決算出揃う

 製紙各社が2022年3月期の連結決算を発表しています。公式サイトに掲載された各社の決算短信によると、

 要因について、各社は以下のようにコメントしています。

王子HD +経済活動の再開による需要の回復
+パルプ販売価格の上昇
+為替差益
-原燃料急騰
日本製紙 +前第1四半期に主に印刷用紙の需要が大幅に落ち込んだ反動
+2020年4月末に豪州・ニュージーランドでの板紙パッケージ事業の譲受
-世界経済の回復やウクライナ危機による、世界的な原燃料価格の高騰
レンゴー +段ボールで加工食品、電気・機械器具向けが堅調、通販・宅配など需要が好調
+紙器で個人向け加工食品や薬品などが伸長
+軟包装は食品関係を中心に堅調
+重包装は石油化学関連の需要が回復
-世界的な原燃料価格の高騰、補助材料や物流経費の大幅な上昇
-紙器で業務用食品、オフィス関連需要が減少。他素材へのシフトも
-重包装で食品関連向けが低調
大王製紙 +経済活動の回復傾向によりチラシなどの広告需要が増加
+輸出向け段ボール原紙需要が堅調
+物流費・原燃料費・環境対策費用の増加などを背景に、販売価格の修正にも取り組み
+供給能力を強化した衛生用紙の拡販が順調
-パルプ、荷資材等の価格高騰によるコストアップ
-タイ、インドネシア、ブラジルでのコロナ禍による行動制限などが影響し、海外H&P事業は期初計画未達
北越コーポ +緊急事態宣言解除による旅行用パンフレット需要の回復、年度末セール用チラシ等の拡大
+コロナワクチン接種拡大による世界的な経済活動の回復
+板紙で、食品一次容器、持ち帰り用食品関連容器、レトルト食品向け箱、店頭POP用、各種カード類向けが堅調・増加
+2020年4月より営業生産を始めた段ボール原紙が数量を拡大
+パルプ販売価格の上昇
-中国で板紙販売数量が減少
-化粧品・医薬品向け高級白板紙が低調
三菱製紙 +外出やイベントの制限緩和による需要回復
+王子グループとのアライアンスにより、事業ポートフォリオ変革、経営基盤強化が進展
+市販パルプ価格の高騰
-製品配送コストの上昇
-原油・石炭・天然ガスなどの燃料価格急騰
中越パルプ +経済活動回復による紙需要回復を背景に、国内拡販・輸出販売強化取り組み
+世界的なパルプ市況回復を背景に、製品パルプの販売強化取り組み
+脱プラ需要・巣ごもり需要で食品関連を中心とした加工原紙需要増加
-発電事業で、紙生産数量増に伴う売電量減少、燃料価格上昇
特種東海 +コロナ禍の影響を受けた前期に比べ大幅に事業環境が改善、需要回復
+2020年に発売した高耐熱性絶縁紙で顧客開拓
+ペーパータオルの需要は高い水準で推移
-原燃料価格高騰
-パルプ・薬品等の購入価格上昇
-渇水が水力発電の売電事業に影響
-情報用紙で電子化の影響
-ペーパータオルで各社の増産や新規参入など競争激化

(※「+」は増加要因、「-」は減少要因)

 2023年3月期の業績予想については

メーカー 通期予想
2022年3月期比
説明
王子HD 増収減益 2022年度より新たな中期経営計画がスタート。パッケージング事業を中心に既存事業の充実と新規事業の拡大を図り、基幹事業の収益力アップとスケールアップを目指す。ESG経営の推進、気候変動問題への対応としての燃料転換や森林経営など、多岐にわたり計画。
日本製紙 未定 世界経済の不確実性が高まるなか、原燃料価格の動向などが不透明で、同社グループへの影響を現時点で合理的に算定することが困難。
レンゴー 増収
営業・経常利益は増加
当期純利益は減少
2021年から取り組んできた製品価格の改定と連結子会社の増加が寄与するが、原燃料価格の高騰によりコストは増加すると見込まれる。
大王製紙 増収減益 コロナ下の生活スタイル、ウクライナ危機による国際情勢の不安定化、国際物流の滞留、資源価格高騰の長期化による物価上昇など、国内外の景気は極めて不透明。紙パルプ業界では、洋紙市場のさらなる縮小、原燃料費、物流費などの急激なコストアップが影響し、過去にないほどの厳しい経営環境が続くものと予想。
北越コーポ 増収減益 紙パルプ産業を取り巻く環境は、国内需要動向の急激な変化、グローバルな市況価格動向、原燃料価格の上昇など、不透明な状態が継続。2022年3月期に実施した価格改定の効果が寄与との見込み。
三菱製紙 増収
営業利益黒字転換
現時点で入手可能な情報に基づき判断。
中越パルプ 増収減益 収束のめどが立たないコロナ禍、円安の進行、国際紛争による原燃料価格の急騰、資源調達問題の発生など、様々なリスクが事業環境に影響を及ぼすと予測。予断を許さない状況下で、適正価格の確保、製造効率向上、安定操業実現による製造コスト圧縮への取り組みなど、収益基盤の強化を図り、中期経営計画の達成に向け前進していく。
特種東海 増収減益 コロナ禍による行動制限が徐々に緩和され、経済活動の緩やかな回復基調は期待できるが、変異株やウクライナ危機の長期化など不透明な状況が続き、原燃料価格の高騰はしばらく続く可能性。

と、原燃料価格や国際情勢など不透明な状況を鑑み、9社中6社が2022年3月期比増収減益との予想を提示しています。


【板紙 国内の紙の市況/状況】

1.段ボールシート 値上げ浸透の報道

 5月18日付の日本経済新聞紙上にて、段ボールシートの取引価格が3年ぶりに上昇し、データを遡れる1986年4月以降で最高値となったと報じられています。段ボール原紙の値上げが3月に概ね決着したのに伴い、段ボール原紙でつくる段ボールシートでも値上げが浸透したとのこと。堅調な需要を背景に、今後は段ボールシートでつくる段ボール箱でも値上げ交渉が本格化するとみられていますが、中小企業が多数存在し、競争が激しい段ボール箱メーカーの交渉には困難が伴うとの見方もあり、段ボール箱メーカーの採算悪化を懸念する声もあると記事では伝えています。


2.レンゴー 抗ウイルス段ボールの販売を開始

 レンゴーは5月17日、抗ウイルス段ボールの販売を開始したと発表しました。公式サイトの発表によると、

製品名 「ウイルスレンガード」
特徴 抗ウイルス銅化合物をライナ原紙にコーティングした段ボール箱。
一般社団法人抗菌製品技術協議会による抗ウイルス加工の認証「SIAAマーク」を取得。
・表面に付着したウイルスが24時間で99%以上減少することを確認
・抗ウイルス剤をコーティングしたライナへの印刷適性は良好で、印刷部分でも抗ウイルスの効果あり

 同社は利用場面として、多くの人が直接手に取る通信販売、引っ越し、医療現場、紙おむつの段ボール箱などを想定するほか、様々な場面で幅広くご使用いただけるとしています。


【その他の市況/状況】

1.パルプ製トイレ紙価格上昇の報道

 5月14日付の日本経済新聞紙上にて、パルプ製のトイレットペーパーの4月の店頭価格が上昇したと報じられています。製紙各社の値上げが浸透してきたもので、東京紙商家庭紙同業会のまとめでは下値が前月より30円上昇、値上がりは2019年5月以来になるとしています。
 今後、再生紙製のトイレットペーパーにも値上げが波及するとの声も紹介されており、横ばいのティッシュペーパーでも、値上げ表明後、安値販売がなくなってきていると指摘する声もあることが伝えられています。


【印刷・製品関連】

1.北越 紙の人工衛星プロジェクトに参画

 北越コーポレーションは5月13日、紙で人工衛星を製作するプロジェクトへの参加を決定したと発表しました。公式サイトの発表によると、

プロジェクト 京都大学発のベンチャー企業「テラスペース株式会社」が進める、紙で人工衛星を制作するプロジェクト。一般的にはアルミニウムを使う人工衛星の構造体にセルロースナノファイバー(CNF)を使用する。第一歩として、来年打ち上げ予定のテラスペース製超小型人工衛星初号機の「TATARA‐1」の衛星外壁の一部に「ReCell🄬」を試用し、耐久性などの実証実験を行う。
ReCell🄬 北越コーポレーションが開発したCNFで強化された紙。アルミニウムの代わりに人工衛星の構造体に使うことで
・強度を維持したまま軽量化を実現
・アルミニウムと比較して電波を透過しやすいことから、通信用アンテナを衛星内部に搭載することが可能で、衛生設計の自由度を広げられる
・人工衛星の廃棄時、大気圏に突入した際に、アルミニウムであれば大気汚染の原因となる可能性があるとの研究も報告されているが、紙であれば大気との摩擦で水蒸気と二酸化炭素になるだけなので地球環境汚染は発生しないと言われている
などの優位性が期待されている。

 環境に優しい素材である「ReCell🄬」を用いて紙の可能性を広げることで、宇宙開発をよりサステイナブルなものにすることができると考えていると、テラスペースはプレスリリースで表明しています。


※文中敬称略
※文章は2022年5月18日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。