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紙の市況(2022.8)詳細 8月10日更新分

【紙に関する市況/状況】

1.王子・日本など 2023年3月期第1四半期決算発表

 8月2日に王子ホールディングス、8月5日に日本製紙、三菱製紙、中越パルプ工業が2023年3月期第1四半期(2022年4月1日~2022年6月30日)の連結業績を発表しました。各社の公式サイトに掲載された決算短信によると、

 影響を与えた要因として各社共通に挙げているのは

プラス要因 ・価格修正の実施効果
・経済活動再開による需要の回復
マイナス要因 ・原燃料価格、物流経費の上昇、高止まり
・急激な円安の進行

等ですが、その他の要因として

王子HD +パルプ市況上昇
+外貨建て債権債務の評価替えによる為替差益の発生
+段ボール原紙・段ボールで東南アジア・インドなどの好調な販売、値上げの浸透、マレーシアで新マシン稼働
+電動車向けコンデンサフィルム、一般工業用フィルム、食品・雑貨等の包装用フィルムが堅調
日本製紙 +新聞用紙で、前第1四半期の地震による岩沼工場の一部抄紙機停止の反動
+板紙で飲料関係向けの需要が堅調
+家庭紙で家庭用・業務用ともに需要回復傾向
+給食牛乳向けSchool POPの採用拡大、充填機の販売台数増加
-印刷・情報用紙の国内需要低迷
-板紙で自動車関連・工業製品向けが低調
三菱製紙 +為替差益
+輸出・欧州子会社で販売数量・金額増加
-特別退職金等の計上
中越パルプ +セルロースナノファイバーを活用した鶏舎環境改善資材の販売開始、農業資材の法人向け試験販売開始
-新聞用紙、印刷用紙、包装用紙の販売数量減

等を決算短信で挙げており、プラス要因はあるものの原燃料価格の高騰を補うには至っていない状況が指摘されています。
 日本製紙は同日、2023年3月期通期で営業利益・経常利益・純利益が赤字になる見通しと無配予想を発表しており、原燃料価格・物流経費の高止まりに円安が拍車をかける状況が当期末まで継続するものと見込んでいると説明しています。


【板紙・パッケージに関する市況/状況】

1.レンゴー 段ボール原紙などの再値上げを発表

 レンゴーは7月28日、段ボール原紙などの価格改定を発表しました。先に発表のあった大王製紙、日本東海インダストリアルペーパーサプライ(NTI)の発表と合わせて確認すると、

メーカー 対象 改定幅 改定時期
大王製紙 段ボール原紙、包装用紙、機能材 段ボール原紙 現行価格+15円/kg以上
包装用紙・機能材 現行価格+15%以上
2022年9月1日納入分より
NTI 段ボール原紙全般
特殊板紙(チップ・色板紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、シクラ原紙)
段ボール原紙全般 現行価格+15円/kg
特殊板紙 現行価格+15%以上
2022年9月1日出荷分より
レンゴー 段ボール原紙
その他原紙(白板紙、紙管原紙、チップボール)
段ボール製品
段ボール原紙 現行価格+15円/kg以上
その他原紙 現行価格+15円/kg以上
段ボール製品は個別打ち合わせ
2022年9月1日納入分より
段ボール製品は個別打ち合わせ

 段ボール製品に関しては原紙価格改定分に加え工場のエネルギーコスト、補助材料、物流経費等の上昇分を加味して個別に打ち合わせたいとレンゴーは意向を表明しています。


2.液体用紙容器も値上げ

 北越パッケージは7月15日、日本製紙は7月27日に、液体用紙容器の価格改定を発表しました。公式サイトの発表によると、

メーカー 対象 改定幅 改定時期
日本製紙 エヌピーパック全般
フジパック全般
エヌピーパック 現行価格+12%以上
フジパック 現行価格+10%以上
2022年10月1日納入分より
北越パッケージ 液体紙容器全品 現行価格+10%以上 2022年10月1日より

 昨秋~今春にかけての価格改定では、その後の世界的規模でのエネルギー・原燃料・物流経費の上昇分を補えないとして、各社は再度の価格改定に理解を求めています。


【その他の市況/状況】

1.ENEOS C重油値上げ

 7月29日付の日本経済新聞紙上にて、ENEOSがC重油の7~9月期の価格を引き上げると報じられています。ボイラー燃料として使われる高硫黄C重油価格は4~6月期比9%上昇で提示されているとのことで、値上げ提示は9四半期連続になると記事では伝えられています。


2.古紙在庫が減少

 8月4日付の日本経済新聞紙上にて、古紙の在庫が減少していると報じられています。関東製紙原料直納商工組合の6月末在庫を集計したもので、

・段ボール・新聞・雑誌古紙合計では前年同月末比16.2%減、3か月連続で前月比マイナス
・段ボール古紙、雑誌古紙は7か月連続で前年同月比マイナス
・新聞古紙は13か月連続で前年同月比マイナス

となったとのこと。
 6月は経済活動の規制緩和で物流が増加し段ボール原紙の需要が堅調だったこと、円安を背景に古紙の輸出が増えていることなどが背景にあると記事では分析しています。


【印刷・製品関連】

1.CNF 取り組みが活発

 製紙各社がセルロースナノファイバー(CNF)の用途開発などに一層注力しています。7月末以降報じられた動きでは

中越パルプ 東京農工大学に寄付講座を開設し、CNFを用いたプラスチック再生技術の開発と社会実装に向けた研究を開始。
北越コーポレーション CNFと塗工技術の融合で、薄くて軽く、ノイズの抑制効果に優れた、新しい電磁波ノイズ抑制シートを開発。
5GやBeyond5Gにも対応可能。
大王製紙 ドアミラー、ドア、ルーフ、フロント・リアボディなどにCNF素材を実装した電気自動車が米国のレースを完走。

 木質由来で、幅広い用途での活用が期待されるセルロースナノファイバーの開発に、今後も注目が集まりそうです。


※文中敬称略
※文章は2022年8月8日現在、新聞記事などを基に華陽紙業にて編集しております。実際の動向についてはお客様にて総合的にご判断頂きますよう、お願い申し上げます。