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当社経営計画発表会ご来賓のお話 日本紙パルプ商事様(2023年)

弊社では2023年1月14日、3年ぶりにお客様をお迎えしての新年経営計画発表会を開催することができました。ご臨席賜りましたご来賓の皆様の貴重なお話を掲載させて頂きます。

当社経営計画発表会ご来賓のお話
日本紙パルプ商事株式会社 中部支社支社次長兼仕入部長 甲斐 俊哉様

1.はじめに

 日本紙パルプ商事の甲斐でございます。皆様、新年明けましておめでとうございます。本日は、華陽紙業様の経営計画発表会にお招きいただきまして誠にありがとうございます。また、日頃から華陽紙業様には紙の商売で大変お世話になっており、この場をお借り致しまして厚く御礼申し上げます。
 私は1990年に入社致しまして、最初の13年間九州支店にて4年間段ボール、9年間は卸商部門の営業に携わり、その後東京で4年間王子製紙を主体に仕入部門で経験を積み、その後再び九州支社に戻り13年間、卸商、直需、仕入などの仕事を行ない、2020年の春に中部支社に転勤してまいりまして中部支社で現在3年目であります。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

2.2022年の概況

 さて昨年、ロシアがウクライナに侵攻したことで勃発した戦争は今なお続いております。世界経済は、コロナ禍からの回復基調をたどっていましたが欧米を中心に高インフレとそれを抑えようとする金融引き締めにより回復の速度は鈍化しています。また、世界経済を牽引する立場であるはずの米国と中国の関係は対立が続いており、出口が見えない状況で中国がゼロコロナ政策を推進するなかで、多くの国が中国に対する依存度を引き下げようとする動きが顕在化しました。このような状況下、原材料や原油・石炭などのエネルギー価格の高騰はコストアップにつながり、ありとあらゆるものの値上がり、物価の上昇要因となりました。当然ながら、エネルギーの輸入依存度が高い日本経済にも影響は大きく現れましたが、コロナワクチン接種が進み、行動制限の解除・経済活動再開に向けた動きがスタートしたことから内需は堅調に推移してました。昨年実施された全国旅行支援やインバウンド増加を狙った訪日個人旅行の再開など経済浮揚策が実施され奏功していることを聞くたび明るい気持ちになります。今後も経済活動の再開・回復が軌道にのることを大いに期待しています。
このような状況のなか、国内の紙・板紙販売に関して申し上げますと、紙は電子媒体へのシフトや各種イベントなどが完全に回復していないことなどから前年割れの状況でした。また、近年好調に推移していた板紙についても前年比マイナスとなりました。ゼロコロナを打ち出していた中国の経済活動停滞があり、個人宅配通販市場の拡大による需要増があったものの全国・名古屋とも前年を下回る販売実績となっております。

代理店会統計による、2022年1月~11月累計の全国国内払出実積は、

5,216,346トン 前年比98.2%
板紙 4,455,548トン 前年比99.1%
紙・板紙合計 9,671,894トン 前年比98.6%

代理店会統計による、名古屋地区の2022年1月~11月累計の国内払出実積は、

407,359トン 前年比97.9%
板紙 664,339トン 前年比96.6%
紙・板紙合計 1,071,698トン 前年比97.1%

と紙は全国・名古屋地区とも同じような傾向を示していますが、板紙については当地区主力商品である輸送用機械・工業部品などの落ち込みが影響していると考えられます。 

3.2023年の動向

 ここで、2023年の動向について考えてみたいと思います。まずは世界経済についてですが、昨年10月に国際通貨基金(以下、IMF)から公表されました地域別実質GDP成長率見通しによりますと、世界の経済成長率は2021年6.0%、2022年予測3.2%、2023年予測が2.7%になる見通しとなっています。個別に見てみますと、米国は2021年5.7%、2022年予測1.6%、2023年予測1.0%と高インフレが続くことによる消費低下が減速の大きな要因となっています。ユーロ圏は、2021年5.2%であったのに対して、2022年予測3.1%、2023年予測0.5%と、こちらも大幅に減速しています。ウクライナ危機に起因するエネルギー価格の高騰や供給制限によって経済活動は大きく抑制されており、まだまだ継続するのではないかと予測されています。また中国に関しては、2021年8.1%、2022年予測3.2%、2023年予測4.4%と発表されています。中国政府のコロナウィルス対策次第の部分が大きいですが、2022年はゼロコロナ政策を展開し、大都市のロックダウンも行っていましたが、ゼロコロナ政策を終了し行動抑制を段階緩和することとなり成長率のUPが大いに期待されています。また、海外旅行も再開されることが決まりインバウンド需要にも大きな期待が出てきています。中国経済の回復は、近時、世界経済の状況を左右する状況であり非常に注目度が高くなっています。
一方、日本経済については先程申し上げましたIMFの実質GDP成長率で見ますと、2021年1.7%、2022年予測1.7%、2023年予測1.6%となっております。他地域と比べますと2023年予測では米国・ユーロ圏を上回る成長率となっています。主要因としては、抑制されていた経済活動の再開、コロナとの共存に舵をきったことで内需が堅調に推移すると想定されています。昨年10月から実施されている全国旅行支援では国内旅行・飲食・ホテルなどの業績が上向き、今後、中国からの旅行者が増加していけばインバウンド効果もさらに増加するものと思いますし、人流増加による経済の活性化が日本各地で発現するものと期待しています。しかし、金融政策面を見ると日銀による大規模な金融緩和が継続されているなか、昨年12月に長期金利の許容変動幅(プラスマイナス0.25⇒0.5)の変更が発表されました。実質的な利上げではないと日銀の見解・説明はありますが、物価の上昇が家計を直撃している状況下で回復傾向であった個人消費にも影響しており、消費に関してこれ以上ネガティブな要素が増えることのないよう希望していますが、若干の不安を感じております。
 さて2023年ですが4月に統一地方選が予定されており、政治面では、5月にG7サミットが広島で開催予定となっています。スポーツ関連では、3月にWBC(ワールドベースボールクラシック)が開催され、6月に2030年冬季オリンピック開催地決定、7月にはサッカー女子ワールドカップが、9月にはラグビーワールドカップが開催の予定となっています。国際的なイベント増加が紙需要に直結するかどうかは判断しにくいところですが、その盛り上がりには注目したいところであります。昨年11月に岐阜市で開催された「信長公騎馬武者行列」には、タレントの木村拓哉さんの集客効果もあり、実に46万人の人出があったことは記憶に新しいところです。岐阜市が全国的に注目を浴び、その経済効果も150億円程度になったという試算・発表もされており、非常に大きな経済効果を生んだものと感じています。愛知県長久手市には昨年秋にジブリパークが開園し、入場予約が困難なほど人気を集めており、周辺のホテル・観光地にも良い影響が出てくるものと思われます。また、今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」は愛知県三河地域~静岡県西部が主な舞台となります。愛知県岡崎市には大河ドラマ館がオープンする予定となっており、近隣県が舞台となることで注目を集め、その恩恵が当地区に観光需要・経済効果として出てくる可能性もあり大いに期待しています。3年後の2026年9月には愛知県・名古屋市共催の第20回アジア競技大会が開催予定となっています。新体育館の建設などが予定されているほか、インフラ整備などの公共事業も活発になってくるものと思われます。地域の活性化につながる大きいイベントがありますので、紙・板紙需要にもつながるように期待しています。
 

4.2023年紙業界の動向

 さて、ここで紙業界の動向について考えてみたいと思います。皆様も常日頃からお感じになっていることとは思いますが、国内で使用される紙の主用途は「情報を伝達するもの」から「包む・拭うもの」へとシフトしており、日本製紙連合会が発表しております紙・板紙品種別の国内需要実績を見ますと、グラフィック用紙(新聞用紙と印刷・情報用紙の合計)は減少になかなか歯止めがかからない状況となっています。2008年9月にリーマンショックが発生し、翌年の2009年にグラフィック用紙が前年比9.2%の落ち込みとなった時でさえ国内需要は13,537千トンの実績となっていました。その後、人口減少や少子高齢化、急速なデジタル化が進み、漸減していた国内需要ですが、新型コロナウィルスが2019年12月に発生・まん延したことにより、2020年には8,489千トンとなっています。11年間でグラフィック用紙の国内需要はおよそ3分の2程度に減少したことになります。
 一方、印刷産業に関して見てみますと、経済産業省の工業統計調査による2019年の印刷・同関連業の出荷額は約4兆9,981億円であり、前年同期比では2007年以来12年振りに0.3%の増加となりました。リーマンショック以降、国内景気の減退や急速な電子化が進んだことでペーパーレス化の波が押し寄せていたなか、コロナ禍で人流抑制、各種イベントの中止・延期など様々な経済活動が停滞したことに加え、在宅勤務が導入されるなど働き方の変化が定着し、ビジネスシーンでも紙を使用しない状況が作り上げられた結果、その出荷額は1991年のピ-ク時と比較して約44%減少することとなりましたが、この傾向は大なり小なり今後も続くものと予測されております。
 さて、昨年はロシア・ウクライナ情勢が悪化するなか原燃料価格の高騰を招き、さらに長期化したこともあり紙・板紙に限らず、ありとあらゆるものの価格が上昇しました。華陽紙業様にも紙・板紙の価格修正をお願いしご尽力いただきましたこと、この場をお借りして御礼申し上げます。原燃料価格の高止まりや為替変動については予測が難しい状況ではありますが、紙業界全体として安定した生産・供給を継続できる体制構築が最優先事項であると考えておりますので、ご協力お願い致します。 

5.今後取り組むべきこと

 昨今、世界的な気候変動・海洋汚染などが大きく取りざたされています。温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル宣言」に象徴される環境問題への取組みが大変重要視され、環境負荷の低減が世界的に共通課題となっています。私たちが主力商品として取り扱う紙・板紙は、その製造工程から考えても持続可能な環境配慮型商品であります。最近の傾向として、情報伝達を目的とする紙の使用量は漸減傾向であることはお伝えしました。しかし環境面を考えた場合、紙・板紙ほど環境問題に対応している商材はないことを自負し、その優位性を積極的に社会にアピールする必要があると考えています。「脱プラ・減プラ」の動きが急速に加速しています。大手外食産業のストローや包装紙などは既に紙素材への代替が定着しており、まったく違和感なく使用されています。企業としても、個人的にも環境負荷低減に対する施策や行動を求められる時代になってきていますので、社会へのアピール・情報の発信を続けていきたいと考えています。
 現在のコロナ禍による紙・板紙の使用量減少はとても強いアゲインストの風となり、簡単にはコロナ前の水準には戻らないと考えています。、しかし、環境配慮型商品である紙・板紙の商売は脱プラスチックの観点からフォローの風も吹いていると感じています。アゲインストの風が少し強く、経済環境など予測が難しい状況・難局ではありますが、製紙メーカー様、卸商様、代理店が今一度一体感を持ち、新たな商材・用途を開発できるような体制構築を目指したいと考えております。

今後も、OVOL日本紙パルプ商事グループを何卒よろしくお願い致します。

以上、ご清聴ありがとうございました。