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華陽ニュース

不定期配信 源氏物語の紙5

光源氏が後見人としてお世話をしている、六条御息所の娘の前斎宮。朱雀院(前天皇、源氏の異母兄)から自分の妻にとの話もありましたが、現天皇である冷泉帝の妻として入内することになります。帝には既に弘徽殿の女御が入内していて、二人は帝をめぐるライバルに。絵が好きな帝の歓心を得ようと双方が絵を収集するので、どちらが素晴らしい絵を持っているか帝の前で決着を付けよう、という話になるのですが・・・

第17帖「絵合」①

 新しく絵を揃えるのもおかしいし今あるもので勝負、という源氏方に対し、弘徽殿女御の父はこっそり新しい絵を描かせています。それを聞いて何とかしてあげたいと思ったのが朱雀院。前斎宮のもとに自分の秘蔵の絵をいろいろ届けるのですが、そのなかに、前斎宮が斎宮になった当時の様子を描かせたものを紛れ込ませます。実はその際の前斎宮の美しさに心を奪われていた朱雀院、「私はあのころの気持ちを忘れていませんよ」という歌も絵に付けています。お返事しないわけにもいかないし・・・と前斎宮は、昔使っていた髪飾りの端を少し折って、「私も神にお仕えしていたころが恋しい気がします」という歌と一緒に「縹色の唐の紙」に包んでお届けになり、その歌をご覧になった朱雀院は「ありし世をとり返さまほしく」、あのころに戻れたらなあ、とお思いになるのでした・・・

 あれ、両想い?ともとれるやり取りですが、前斎宮が使う紙は「縹色」。「露草色」とも称される薄い藍色で、この露草、『枕草子』でも「うつろひやすなるこそうたてあれ」、色が落ちやすいのが困ったもの、と表現されています。『源氏物語』の他の場面でも、あるいは『枕草子』にも「縹の紙」「花(色の紙)」が登場しますので、ごく一般的な高級料紙だったのだろうとも思われますが、昔が忘れられない朱雀院に送られた、この場合の「縹の紙」の意図は・・・と深読みしたくなってしまう、そんな紙の登場場面です。

※華陽紙業にて紙に関する記述がある部分を抽出し、崩して訳した文章となっております。興味がおありの方は、是非、原文でお楽しみ下さい。

「源氏物語の紙6」を読む方はこちらから

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