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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話34 食品に触れる紙
「お疲れ様です。シート先輩。今日のお昼ご飯はテイクアウトですか?」
「お疲れ様、コマキさん。近くにキッチンカーが何台か来てるの、知ってた?」
「総務から回覧メールが来ていましたね。あ、テイクアウト容器は紙容器なのですね。」
「最近はコンビニでも、一部のお弁当の容器をプラスチックから紙にしましたっていうのがあるよね。」
「プラスチック使用量の削減のためですね。」
「そう。でも、コマキさん。例えばこの紙容器、紙だとはみなされない場合があるって知ってる?」
「え?」
「岐阜市では2022年4月からプラスチック包装容器の分別回収が始まったけど、コマキさんはその容器がプラスチック製か紙製かって、何で判断してる?」
「無地なら見た目や質感ですけど、分かりやすいのは識別マークです。プラマークがついていればプラスチック、紙マークがついていれば紙として分別していますね。」
「その識別マークだけど、根拠になっている法律は?」
「容器包装リサイクル法です。」
「そうだね。で、食の安全を守る法律が食品衛生法。食品衛生法の目的は人間の体内に有毒・有害なものを入れないことだから、『直接食品に触れる部分が何でできているか』が重要になる。例えば食品のテイクアウト容器で、本体重量の大部分が紙製だけど、耐油性を高めるために食品に触れる部分に合成樹脂が使われているとすると、
容器包装リサイクル法 | 重量の51%以上が紙であれば『紙容器』と規定。 |
食品衛生法 | 食品に直接触れる部分が合成樹脂であれば、合成樹脂製の容器と同等の扱い。使用を認めると定められた物質のみ、使用できる。 |
「2018年に食品衛生法が改正されて、食品用器具・容器包装に使う合成樹脂について、それまでのネガティブリスト制度からポジティブリスト制度に変更されたんだ。簡単に言うと、
ネガティブリスト制度 | 使用は原則許可。リストに載っている物質は使用できない。 |
ポジティブリスト制度 | 使用は原則禁止。リストに載っている物質のみ使用できる。 |
合成樹脂の量や加工法によって規定対象にしませんよっていう例外もあるけど、食品に触れる部分が合成樹脂の紙製包材で、食品の一次包装用に使えますよってうたうためには、この食品衛生法に則っている必要があるんだよ。」
「食品に触れる部分に合成樹脂が使われている場合の規定は分かりましたけど、合成樹脂が使われていない紙が食品に触れる場合も規制があるのですか?」
「今のところ、食品衛生法では紙に関する規制はない。でも、もちろん何でも使っていいってわけじゃないから、2007年に日本製紙連合会が自主基準を決めているんだ。」
自主基準 | 2007年に制定。 ・食品に直接接する紙・板紙(複数層でできている場合はその全て)が対象 ・自主規格として重金属の溶出限度を定めた試験に適合していること ・ネガティブリストに記載された物質を紙・板紙の製造に使わない ・食品に接する紙・板紙の全ての製造工程が対象(原材料の選定・受け入れから顧客に渡すまでの全ての工程の管理が必要) ・古紙を原料にする場合も厳密な管理・製造が必要 等を定めている。 (古紙に関しては2012年に厚生労働省が指針を公表。古紙原料や再生工程に関する留意点、水分・油分が多い食品と接する場合や高温で加熱する場合は再生紙の使用を避けることなどが示された。) |
JPA‐ケミネット | 薬品納入業者と日本製紙連合会員で共有する化学物質検索システム。使用禁止の化学物質ネガティブリストが検索でき、適宜更新できるようになっている。 |
暫定ポジティブリスト | 2007年の自主基準制定時より、将来的にはネガティブリスト制からポジティブリスト制への移行が目指されていた。 2011年には使用実績のある物質を基にした暫定ポジティブリストを登録、2015~16年には使用用途と使用方法に着目した区分見直し作業なども完了。将来的な情報共有やポジティブリスト制度化などを踏まえ、課題などを検討中。 |
今のところ紙自体が食品衛生法の対象になっているわけじゃないけど、その分しっかり自主基準を設けて、それに沿って製造・管理されているんだよ。」
「脱プラの動きで包装が紙容器に代わるのも、ただそれだけのことではなくて、色々考えなくてはいけないことがあるのですね。」
「人の健康に関わることだからね。法律があるから、じゃなくて、ちゃんと考える必要があることだと思うよ。」
「ちゃんと考えるというなら、シート先輩はお昼ご飯の量を考えた方が良いと思います。ひとりで3人前はさすがに食べ過ぎでは・・・」
「これは紙容器の勉強!僕は自分を犠牲にして紙容器を収集してるの!」
「絶対選べなかっただけですよね・・・」