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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話37 紙と水②

「おはよう、コマキさん、寒くなってきたね。」
「おはようございます、シート先輩。12月だなという感じですね。年末年始に向けて忙しくなりましたし。」
「年末年始に休転を予定されてる製紙メーカーさんもあるしね。もう一度お客様にもお知らせしておかないと。」
「休転というと、機械設備が停止されることですよね。メーカーさんは機械を止めて何をされるのですか。」
「動作中の日常点検ではできない点検と修理、清掃などだね。不需要期の夏に多いイメージだけど、秋とか、6月と12月、とか、メーカーさんや工場によってスケジュールに違いがあるよ。」
「スケジュールがあるなら前もって準備ができて良いですね。」
「そうだね。地震とか台風とか、予期できない設備停止だと慌てるからなあ。」
「そういえば秋口の台風の時もありましたね。台風自体による被害はなかったのに、取水する川の濁りが収まらなくて設備停止と聞いて、そういうこともあるのだなあと思いました。」
「製紙には良質な水が不可欠だからね。紙を1トン抄くのに100トンの水が必要っていうけど、その水質について、メーカーさんでは非常に気を使っておられるんだよ。」

「さっきコマキさんが言った『濁り』には『濁度』っていう指標がある。水中の浮遊物質の濃度で表す指標なんだけど、抄く品種によって限界濃度っていうのがあるんだ。例えば、未晒クラフトならここまでOKだけど、晒クラフトはもっと低くて、上質なんかだとさらに低い濁度が限界、とかね。台風なんかで川が増水して濁度が上がる場合はそもそも取水自体も難しくなるんだけど、浮遊物質の濃度が紙を抄くのに適していないっていうのも停機の理由になるんだよ。」
「ほかにはどんな指標があるのですか?」
「色度や硬度、総アルカリ度とか鉄分濃度とかいろいろあるよ。海に近い付近で取水する場合は塩化物の混入とかね。塩化物が混入してしまうと製品トラブルにつながることもあるから要注意なんだ。」
「トラブルですか?」
「もし万が一、混入に気づかず塩化物濃度の濃い段ボールをつくってしまったとする。これを例えば金属製品の仕切りなんかに使ってしまうと、錆が発生してしまう可能性があるよね。ほかにも例えば工業用特殊紙なんかでは塩化物厳禁なんて用途もあるから、原料はもちろん、水の品質にも気を使われるっていう話だよ。」
「製紙メーカーさんが排水に非常に気を使っておられるのは以前にもお聞きしましたが、製造に使う水の方にもいろいろな注意が必要なのですね。」

「錆といえば、昔はにじみ止めのサイズ剤の定着に硫酸バンドを使っていたよね。あの硫酸バンドも金属を腐食させる原因になることがあるんだよ。」
「昔の紙が酸性なのは、硫酸バンドが原因のひとつだとは聞いたことがあります。」
「そう。酸性紙は長期保存が必要な紙には向かないから、今では硫酸バンドが必要ないサイズ剤が主流なんだけど、硫酸バンドが普通だった頃にはトラブルもあったらしいよ。」
「本がボロボロになってしまう、ということ以外に、ですか?」
「僕が聞いたのは板紙で・・・」
「うわあ・・・・・・」

「製紙するときの水の話に戻ると、昔と違って今は原料に古紙を使うし、一度使った薬品を回収してもう一度使ったりもするしで、水質のコントロールが昔以上に難しくなっているという話だよ。」
「でも、メーカーさんが水処理技術を外販されているように、課題を乗り越える過程で蓄えた知見が新しい需要創出につながるかもしれませんよね。」
「課題を乗り越えた後のご褒美ってことか。僕たちにも、年末年始のバタバタを乗り越えた後のご褒美があると良いね。」
「私は久しぶりに遠方の友達と会う約束をしているのでそれをご褒美だと思って頑張ります。」
「僕も今年こそ帰省するつもりだし、久しぶりに姪にも会えるし・・・って、そうだ!3年分のクリスマスプレゼント、期待してるって言われてたんだ!・・・何にしよう・・・・・・」
「・・・課題が増えましたね・・・・・・」

※文中、敬称略